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出来れば早めに結婚したい
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それにしても。告白されてから一週間しか経っていないのに、こんなに簡単に従兄さんのことを好きになっちゃうなんて、私って押しに弱い。単純。
なんだか、まるで結婚詐欺にあっさり引っかかってる被害者みたい。従兄さんも内心、「ちょろいな」って思ってるかもしれない。
でも、昔から優しくしてくれてた年上の男の人から積極的に好意を寄せられたら、女の子ならくらっと来ちゃう……はず。無理矢理にでもそう考えないと、自分のことを頭が空っぽなバカだと感じてしまい、嫌悪感が湧いてきそうだった。
「椿」
従兄さんの声で思考が途切れる。
はっとして従兄さんの顔をよく見ると、従兄さんの頬が少しだけ赤くなっていた。
「それは、将来俺と結婚しても構わない。そういう意味だと解釈していいのか?」
「えっ!?」
言われた言葉にびっくりしながら、さっき自分が発した言葉を反芻する。
『従兄さんみたいな人、きっと私の前にはもう現れない。だから、不安にならないで』
やだ。たしかに、結婚の承諾とも受け取れる発言だ。従兄さん以外の人とは付き合わないって言ってるようなものだし。私ってば、なんて恥ずかしいことを言っちゃったんだろう。
私は慌てて従兄さんの右手を放してから、自分の顔を両手で覆った。
「恥ずかしいこと言っちゃった……ああもう」
「俺は嬉しかったぞ」
「出来れば、私が言ったことは忘れてほしいんだけど」
「忘れるもんか。それで結局、俺と結婚しても構わないのだと解釈していいのか?」
忘れてほしいことは忘れてくれないし、同じ質問をまたしてくるし。従兄さんは意地悪だ。
「そんな先のこと……わからないよ。意地悪しないで」
私がむくれながら言うと、従兄さんは「先のこととは言うが、あと二年もしたらお前は十六だ。女は十六歳から結婚出来るんだぞ」と、とんでもないことを言ってきた。びっくりして、思わず叫んでしまう。
「私が十六歳になったら、結婚する気なの!?」
「俺はしても構わないと思っているが」
「気が早いよ!」
私、せめて高校くらいは出ておきたいんだけど……。
「そうか? 俺は出来るだけ早くお前と夫婦になりたいんだが」
「でも、そんなに急がなくても……」
私が戸惑いを露わにすると、従兄さんは真顔になった。
「時間は有限だ。お祖母様が既にこの世にいないように、秋雄叔父さんが昨年亡くなったように、いずれ死によって夫婦は別たれる。だから早くお前と夫婦になって、出来るだけ長く一緒にいたいんだ」
私はそれを聞いて、お父さんを亡くして間もない頃のお母さんを思い出した。肩を落として、病人みたいに顔色の優れないお母さんの姿が鮮明に頭の中に浮かぶ。
今でこそ元気なお母さんだけど、お父さんが亡くなったばかりの頃のお母さんは、本当に落ち込んでいた。私よりもずっとずっと、ショックを受けていた。
その姿は、長年一緒にいた旦那さんを亡くすのはきっとすごく悲しいことなんだって、私に思わせた。
「……従兄さんの言いたいこと、わかるよ。私と出来る限り一緒にいたいって思ってくれてるんだよね」
「ああ」
「でも、夫婦にならなくても一緒にいられるでしょ? それに私、高校くらいは卒業しておきたいの」
私の主張を聞いた従兄さんが、難しい顔をした。
「俺と結婚するのが嫌なのか?」
「違うよ。嫌とか嫌じゃないとかじゃなくて……夫婦にこだわらなくても、しばらくは恋人同士でもいいんじゃないかなって」
「しかしだな、夫婦にならないと、毎日お前に触れられないだろう」
……もしかして、それが本音? この人、本当にスケベ。私は途端に腹が立って、そっぽを向いた。
「従兄さんのエッチ。真面目に考えて損した!」
「好きな女に毎日触りたいのは、男なら普通だろう」
「男の人の普通なんて知らないよ。それより私、さっきも言った通り高校は出ておきたいの。だから、十六歳で結婚はしないから!」
一方的に告げてから、私は早足で歩き出した。
従兄さんってば、全然ロマンチックじゃない。それどころか、エッチなことしか考えてない。
私には私の人生があるのに、自分のことばっかり。
寂しい気持ちになりながら、私は再び薔薇園に向かって歩みを進めた。胸が痛い。
「椿」
後ろから従兄さんに呼ばれたけど、無視をした。そうしたら、私に追いついてきた従兄さんに、左肩を掴まれた。
「待ってくれ」
「いや。待たない」
「お前が好きだから毎日触れたい。それは、お前にとってそんなにおかしなことなのか?」
「女の子はね、エッチなことがしたいなんて理由で結婚したいって言われたらがっかりするの!」
もう。従兄さんは女心が全然わかってないんだから。
毎日エッチなことがしたいから結婚してくれなんて言われて、了承する人なんかいるわけないじゃない。
私が後ろを振り返って従兄さんを睨み付けると、従兄さんは少し困ったように眉を下げた。
「別に俺が言ってる触れたいというのは、やらしい意味じゃない」
「……なら、どういう意味?」
従兄さんの答えが気になって、私は足を止めた。従兄さんの手が左肩から離れる。
「抱き締めたり、キスをしたり……つまり、欧米的な触れ合いだ」
私を初めて抱き締めてきた時みたいに、欧米人の習慣とか言って誤魔化そうとしてない?
そんな疑念を抱いた私は、従兄さんの鋭い両目を穴が開きそうなくらいじっと見つめた。
「本当?」
「本当だ。毎日セックスしたいという意味じゃない」
直接的な単語を出されて、私はものすごく恥ずかしくなった。
なんだか、まるで結婚詐欺にあっさり引っかかってる被害者みたい。従兄さんも内心、「ちょろいな」って思ってるかもしれない。
でも、昔から優しくしてくれてた年上の男の人から積極的に好意を寄せられたら、女の子ならくらっと来ちゃう……はず。無理矢理にでもそう考えないと、自分のことを頭が空っぽなバカだと感じてしまい、嫌悪感が湧いてきそうだった。
「椿」
従兄さんの声で思考が途切れる。
はっとして従兄さんの顔をよく見ると、従兄さんの頬が少しだけ赤くなっていた。
「それは、将来俺と結婚しても構わない。そういう意味だと解釈していいのか?」
「えっ!?」
言われた言葉にびっくりしながら、さっき自分が発した言葉を反芻する。
『従兄さんみたいな人、きっと私の前にはもう現れない。だから、不安にならないで』
やだ。たしかに、結婚の承諾とも受け取れる発言だ。従兄さん以外の人とは付き合わないって言ってるようなものだし。私ってば、なんて恥ずかしいことを言っちゃったんだろう。
私は慌てて従兄さんの右手を放してから、自分の顔を両手で覆った。
「恥ずかしいこと言っちゃった……ああもう」
「俺は嬉しかったぞ」
「出来れば、私が言ったことは忘れてほしいんだけど」
「忘れるもんか。それで結局、俺と結婚しても構わないのだと解釈していいのか?」
忘れてほしいことは忘れてくれないし、同じ質問をまたしてくるし。従兄さんは意地悪だ。
「そんな先のこと……わからないよ。意地悪しないで」
私がむくれながら言うと、従兄さんは「先のこととは言うが、あと二年もしたらお前は十六だ。女は十六歳から結婚出来るんだぞ」と、とんでもないことを言ってきた。びっくりして、思わず叫んでしまう。
「私が十六歳になったら、結婚する気なの!?」
「俺はしても構わないと思っているが」
「気が早いよ!」
私、せめて高校くらいは出ておきたいんだけど……。
「そうか? 俺は出来るだけ早くお前と夫婦になりたいんだが」
「でも、そんなに急がなくても……」
私が戸惑いを露わにすると、従兄さんは真顔になった。
「時間は有限だ。お祖母様が既にこの世にいないように、秋雄叔父さんが昨年亡くなったように、いずれ死によって夫婦は別たれる。だから早くお前と夫婦になって、出来るだけ長く一緒にいたいんだ」
私はそれを聞いて、お父さんを亡くして間もない頃のお母さんを思い出した。肩を落として、病人みたいに顔色の優れないお母さんの姿が鮮明に頭の中に浮かぶ。
今でこそ元気なお母さんだけど、お父さんが亡くなったばかりの頃のお母さんは、本当に落ち込んでいた。私よりもずっとずっと、ショックを受けていた。
その姿は、長年一緒にいた旦那さんを亡くすのはきっとすごく悲しいことなんだって、私に思わせた。
「……従兄さんの言いたいこと、わかるよ。私と出来る限り一緒にいたいって思ってくれてるんだよね」
「ああ」
「でも、夫婦にならなくても一緒にいられるでしょ? それに私、高校くらいは卒業しておきたいの」
私の主張を聞いた従兄さんが、難しい顔をした。
「俺と結婚するのが嫌なのか?」
「違うよ。嫌とか嫌じゃないとかじゃなくて……夫婦にこだわらなくても、しばらくは恋人同士でもいいんじゃないかなって」
「しかしだな、夫婦にならないと、毎日お前に触れられないだろう」
……もしかして、それが本音? この人、本当にスケベ。私は途端に腹が立って、そっぽを向いた。
「従兄さんのエッチ。真面目に考えて損した!」
「好きな女に毎日触りたいのは、男なら普通だろう」
「男の人の普通なんて知らないよ。それより私、さっきも言った通り高校は出ておきたいの。だから、十六歳で結婚はしないから!」
一方的に告げてから、私は早足で歩き出した。
従兄さんってば、全然ロマンチックじゃない。それどころか、エッチなことしか考えてない。
私には私の人生があるのに、自分のことばっかり。
寂しい気持ちになりながら、私は再び薔薇園に向かって歩みを進めた。胸が痛い。
「椿」
後ろから従兄さんに呼ばれたけど、無視をした。そうしたら、私に追いついてきた従兄さんに、左肩を掴まれた。
「待ってくれ」
「いや。待たない」
「お前が好きだから毎日触れたい。それは、お前にとってそんなにおかしなことなのか?」
「女の子はね、エッチなことがしたいなんて理由で結婚したいって言われたらがっかりするの!」
もう。従兄さんは女心が全然わかってないんだから。
毎日エッチなことがしたいから結婚してくれなんて言われて、了承する人なんかいるわけないじゃない。
私が後ろを振り返って従兄さんを睨み付けると、従兄さんは少し困ったように眉を下げた。
「別に俺が言ってる触れたいというのは、やらしい意味じゃない」
「……なら、どういう意味?」
従兄さんの答えが気になって、私は足を止めた。従兄さんの手が左肩から離れる。
「抱き締めたり、キスをしたり……つまり、欧米的な触れ合いだ」
私を初めて抱き締めてきた時みたいに、欧米人の習慣とか言って誤魔化そうとしてない?
そんな疑念を抱いた私は、従兄さんの鋭い両目を穴が開きそうなくらいじっと見つめた。
「本当?」
「本当だ。毎日セックスしたいという意味じゃない」
直接的な単語を出されて、私はものすごく恥ずかしくなった。
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