その結末は俺が許さない!!

ツバサ

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1章 運命改変の力

8.神樹の森の神獣と少女の願い

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 「神獣様お願いです。姉を助けてください!平気そうな振りをしていますが、もう限界が近いんです。」
 
 まだ大人にもなりきっていない、15.16歳程度だろうか?小さな人族が叫んでいる。
 少女の前には3メートルを超えるであろう、巨大な白銀の獅子が、鋭い眼光を向けて佇んでいる。
 日の光が十分に届かない深い森の中、薄暗がりの中で、金色の眼光に射抜かれながらも、少女は誰にも縋る事無く、己の体一つで相対し、堂々と自分の願いを叫んでいる。

 「この森は不可侵の神域である、表層故に貴様等人族がうろつくのを許していたが、深部にまで入り込み、我にそのような事を嘆願するか」

 「知らなかったから許してくださいなんて、虫の良い事は申しません、持てる全てを差し出します!どうか、どうか願いをお聞き届けください!どうか!・・・どうか慈悲をお与えください!」

 ふむ、ここ数百年程見なかった程に純粋な優しき娘よ・・・更に言うならばその魂の色、純白にして、気高く輝きを放ち、幾千幾万の齢を重ねても、遂に一度も見る事が叶わなかった大きな大きな器よ。
 数多を救い、導く宿命を秘めた気高き乙女で在るが故に不問に致そう。
 だが、それ故にここで試練を課すもまた一興であるか・・・なれば。

 「我は神樹の森を守護する神獣・・・名を獅子吼(ししく)という、気高き娘よ!汝に試練を与える。心して聞くが良い、現在、この森に世界創生時に邪神が使わした、五獣の内一体・・・独覚(どっかく)の大蛇アスクレピオスの欠片が蛇に取り付き、本体の復活を目論んでおる」

 「未だ目覚めぬ大いなる魂の持ち主よ、その願い叶えたくば、手段は問わぬ、見事に欠片を打ち滅ぼして見せよ。試練に見事打ち勝った暁には、姉を救うだけでなく、姉妹の寿命尽きるその日まで、我が守護する事を約束しようではないか!時間については安心せよ。試練が成った時、間に合わずとも、今この時に時間を戻し、瞬時に姉を救うと、我が誇り高き名、獅子吼に誓おう。

 少女は少しも怯える事無く、無理難題を課されている事を理解しながらも高らかに言い放つ、その宣誓は正に獅子吼、神獣を前にすれば例外無く、畏怖や畏敬をその身に抱くか、或いは恐怖に駆られるであろうに、少女には一片の躊躇は無かった。即断即決して戦いの詩を謳い上げた。

 「私も、マリア・シンフォニーの名に誓って、試練を必ず成し遂げると、獅子吼様に宣誓いたします。」
 
 その宣誓を聞いただけでも、願いを叶えたくなる程に輝きを増した少女を見て、獅子吼は満足した。
 心配するな、運命はすぐそばに来ておる、絶望を希望に、敗北を勝利に、たとえ世界に破滅が満ちようと、一片残らず駆逐して、世界に祝福を齎す者が汝を迎えに来ておるのだ。

 今ここに、我が存在し続けた理由を自覚せり
 二人の行く末にある障害を我がアギトで噛み砕き、我が爪で切り裂かん
 我が天命ここにあり 主の降臨した世界を余さず救い 後の世に語られる誉とする
 ああ、世界創生の三女神よ 私は今ここでもう一度誓います 今度こそ使命を達成すると
 
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