1 / 18
1
しおりを挟む今の私の気持ちを簡潔に答えるとしたらもう「どうしてこうなった!」の一言だ。
その理由は簡単。
いつものように食事を終えて階段を上り自身の部屋に戻ろうとした時、私は階段を踏み外して後ろ向きに階段から落ちた際に前世の記憶を思い出したのだ。
本当の本当に意味が分からない。
もう一気に頭には前世の記憶が押し寄せてくるわ、階段から落ちた際に地面にぶつけた頭は痛いわ、階段の下で頭から血を流しながら痛みに眉を顰める私を見たメイドの叫び声はうるさいわ、何から何までたまったもんじゃない。
それに加えて何、今の私は自身が前世で自分で書いてた小説の悪役令嬢の幼少期?
本気の本気でなんてこった。
詳しく小説の内容は頭の中に入っているからそんな悪役令嬢になった私の運命のシナリオは何となく理解している。
この世界は魔法が平然と使える世界。
そして私の書いていた小説は最近流行りの乙女ゲームみたいな内容の主人公が、王子や宰相の息子や王国騎士の息子などに片想いされて最後は王子と結ばれるという内容の小説だ。
で、小説を書いた張本人である私の現在の立ち位置はヒロインのセリシア・アプリーレとヒーロー達の間に入っては彼女の恋の邪魔をする傲慢で勝気で悪役令嬢のオリヴィア・ローズマリー。
私はそっとベットから体を起こすと、ズキズキと痛む頭を押さえる。
この際、もうオリヴィア・ローズマリーになってしまったことに関しては横に置いておこう。
それよりも問題なのが、私ことオリヴィア・ローズマリーは少し前にアルバート・スウェール王子と無理矢理婚約関係を結んだ。
だけど、アルバートは幼少期からオリヴィアのことを大変嫌っており、最終的に彼はヒロイン含む登場人物達のデビュタントの日にオリヴィアとの婚約破棄を発表。
後に、オリヴィアは修道院への道中に何者かに殺害されて死亡となる。
と、こまで思い出して私が思ったのは『どうして私は最後に不幸せになるオリヴィアにならなければならなかったんだろうか』ということ。
この際に思わず大きな溜息を吐いた私は悪く無い。
だって、記憶がなかった際は確かに私は最低最悪な子だったかもしれない。
でも今の私は精神年齢を考えれば大人だし、そもそも今までのオリヴィアのような行動を起こす人間ではない。
もう、もうこの際原作崩壊をさせてもいいんではないだろうか?
王子であるアルバートとの婚約を今すぐ破棄し、セリシアやその他のキャラ達とは関わることなく大人しくアルバートとセリシアがくっ付くのはどうだろう?
私は顎に手を添えながら、自身の側に漂う羽の生えた小さな何かに目を向ける。
「……え?」
パチリ、小さな何かと目が合った。
私は再び目を見開きながら目の前でニコニコと笑う何人もの羽の生えた妖精のような見た目の生き物にを前に、目をゴシゴシと服の袖で擦ってみる。
しかし、目の前の小人は消えずに私は何となく彼らに対してこう声を掛けた。
「……こ、こんにちは?」
途端に嬉しそうに口々に『こんにちわ~!』なんて返事をして来た小さな妖精達。
待て、待つんだオリヴィア・ローズマリー。
自身の書いていた小説の中では確か精霊というものがいるという設定があった。
けど、それは所詮は設定であって小説内にその存在のことは書いていなかった筈だ。
私は意味の分からない現状に片手で顔を覆いながら、目の前でケラケラと笑いながら浮く彼らに対してこう問うた。
「あ、貴方達は精霊……?」
すると、間も開けずに嬉しそうに頷く何十匹もいる精霊達。
私は自信ありげに胸を張りながら口々に『そうだよ~』やら『凄い?凄い?』と尋ねてくる彼らに口元を引き攣らせながらこう叫んだ。
「もう訳分かんない!!」
この時、思わずベッドの上で思い切りそう叫びながら包帯の巻かれた頭を掻き回した私は本気で悪くないと思う。
取り敢えず前世の私、今書いてる小説の悪役令嬢を普通のモブキャラなりなんなりに変更してくれ……。
私はケラケラと笑う妖精たちの声をBGMに大きく肩を落とした。
5
あなたにおすすめの小説
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
猫なので、もう働きません。
具なっしー
恋愛
不老不死が実現した日本。600歳まで社畜として働き続けた私、佐々木ひまり。
やっと安楽死できると思ったら――普通に苦しいし、目が覚めたら猫になっていた!?
しかもここは女性が極端に少ない世界。
イケオジ貴族に拾われ、猫幼女として溺愛される日々が始まる。
「もう頑張らない」って決めたのに、また頑張っちゃう私……。
これは、社畜上がりの猫幼女が“だらだらしながら溺愛される”物語。
※表紙はAI画像です
転生したら悪役令嬢になりかけてました!〜まだ5歳だからやり直せる!〜
具なっしー
恋愛
5歳のベアトリーチェは、苦いピーマンを食べて気絶した拍子に、
前世の記憶を取り戻す。
前世は日本の女子学生。
家でも学校でも「空気を読む」ことばかりで、誰にも本音を言えず、
息苦しい毎日を過ごしていた。
ただ、本を読んでいるときだけは心が自由になれた――。
転生したこの世界は、女性が希少で、男性しか魔法を使えない世界。
女性は「守られるだけの存在」とされ、社会の中で特別に甘やかされている。
だがそのせいで、女性たちはみな我儘で傲慢になり、
横暴さを誇るのが「普通」だった。
けれどベアトリーチェは違う。
前世で身につけた「空気を読む力」と、
本を愛する静かな心を持っていた。
そんな彼女には二人の婚約者がいる。
――父違いの、血を分けた兄たち。
彼らは溺愛どころではなく、
「彼女のためなら国を滅ぼしても構わない」とまで思っている危険な兄たちだった。
ベアトリーチェは戸惑いながらも、
この異世界で「ただ愛されるだけの人生」を歩んでいくことになる。
※表紙はAI画像です
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
完璧(変態)王子は悪役(天然)令嬢を今日も愛でたい
咲桜りおな
恋愛
オルプルート王国第一王子アルスト殿下の婚約者である公爵令嬢のティアナ・ローゼンは、自分の事を何故か初対面から溺愛してくる殿下が苦手。
見た目は完璧な美少年王子様なのに匂いをクンカクンカ嗅がれたり、ティアナの使用済み食器を欲しがったりと何だか変態ちっく!
殿下を好きだというピンク髪の男爵令嬢から恋のキューピッド役を頼まれてしまい、自分も殿下をお慕いしていたと気付くが時既に遅し。不本意ながらも婚約破棄を目指す事となってしまう。
※糖度甘め。イチャコラしております。
第一章は完結しております。只今第二章を更新中。
本作のスピンオフ作品「モブ令嬢はシスコン騎士様にロックオンされたようです~妹が悪役令嬢なんて困ります~」も公開しています。宜しければご一緒にどうぞ。
本作とスピンオフ作品の番外編集も別にUPしてます。
「小説家になろう」でも公開しています。
記憶を失くして転生しました…転生先は悪役令嬢?
ねこママ
恋愛
「いいかげんにしないかっ!」
バシッ!!
わたくしは咄嗟に、フリード様の腕に抱き付くメリンダ様を引き離さなければと手を伸ばしてしまい…頬を叩かれてバランスを崩し倒れこみ、壁に頭を強く打ち付け意識を失いました。
目が覚めると知らない部屋、豪華な寝台に…近付いてくるのはメイド? 何故髪が緑なの?
最後の記憶は私に向かって来る車のライト…交通事故?
ここは何処? 家族? 友人? 誰も思い出せない……
前世を思い出したセレンディアだが、事故の衝撃で記憶を失くしていた……
前世の自分を含む人物の記憶だけが消えているようです。
転生した先の記憶すら全く無く、頭に浮かぶものと違い過ぎる世界観に戸惑っていると……?
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
婚約者に毒を飲まされた私から【毒を分解しました】と聞こえてきました。え?
こん
恋愛
成人パーティーに参加した私は言われのない罪で婚約者に問い詰められ、遂には毒殺をしようとしたと疑われる。
「あくまでシラを切るつもりだな。だが、これもお前がこれを飲めばわかる話だ。これを飲め!」
そう言って婚約者は毒の入ったグラスを渡す。渡された私は躊躇なくグラスを一気に煽る。味は普通だ。しかし、飲んでから30秒経ったあたりで苦しくなり初め、もう無理かも知れないと思った時だった。
【毒を検知しました】
「え?」
私から感情のない声がし、しまいには毒を分解してしまった。私が驚いている所に友達の魔法使いが駆けつける。
※なろう様で掲載した作品を少し変えたものです
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる