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高等部 一年目 皐月→水無月 体育祭
085 駄犬と玉子焼きサンド 3
しおりを挟む**すばる視点**
俺ってば、料理の才能あったみたいで、動画見ながら見よう見まねで包丁とかも器用に使えるようになったんだ。
でも、山野さんとかヨシヒコたちの前ではさ、初心者のぶきっちょを装った。
何でもそつなくできる器用な天才よりはさ、根性入れて努力しました~っていう方が好まれるじゃん。
不動の人気の某週刊少年雑誌のテーマもさ、努力根性友情だって言うしな。
俺のスゲェ頑張ったアピールに颯っちがうまい具合に絆されてくれたから、翌日の放課後、俺は健太用に作った特製玉子焼きサンドを持って剣道部の道場に向かった。
健太は最近リモートばっかりで生徒会室に来ない。
健太不足でだらけてたら、大会が近いから部活動優先で道場にいると真琴が教えてくれた。
だから差し入れの特製玉子焼きサンドを愛情込めて作ったんだ。
クラブ棟の前の校庭の遊歩道を歩いていると剣道着着た人と、ジャージにデカいリュック背負った人が走っているのが遠目に見えた。
「裸足だ・・・」
どちらも裸足で走ってる。
剣道部って、スゲェな・・・
あれ、もしかして、健太もここ裸足で走ってんのかな?
ぐるりと校庭の遊歩道全体を見回すと、植木を切ったり、掃き掃除をしてるジャージ姿の生徒がチラホラ・・・
その中に颯っちの姿もあった。
剣道場の出入り口に着くと、たらいに水を入れたり、洗いものをしてるジャージ姿の人が何人かいた。
マネージャーさんかな?
「練習中は危ないから、部外者、立ち入り禁止。」
入り口に入ろうとしたらマネージャーらしき人に通せんぼされた。
「あの、生徒会補佐の天野です。健太に差し入れを・・・」
「剣道部では差し入れは受け付けてません。」
「へ、何で?」
「異物混入が多いから。」
「異物、混入・・・?」
「唾液とか、髪の毛とか、白い体液とか、媚薬系もあったな。」
「・・・なにそれ」
「そういうのが去年、わんさかあって、禁止になったから。」
「マジ?」
「マジ。」
「でも、何で分かったんですか?」
「匂いで。」
「匂い・・・?」
「αって、犬並みに鼻が利く人がいるじゃん。で、ヘンな匂いがするのが多いって高位αの部員が気付いてさ、科学捜査研究会に分析して貰ったら、異物混入が分かったんだ。」
「・・・へえ~」
そんな話しをしていたら出入口の自動ドアが開いて亮輔と健太が出て来た。
「健太!」
抱き付こうと飛び出したら亮輔が健太と俺の間に割り込んだ。
「天野、危ないからそういうのヤメロ。」
亮輔の小言を無視して俺は健太に特製玉子焼きサンドを渡した。
「俺、健太に食べて欲しくて、がんばって作ったんだ。」
「・・・・・・」
健太は包ごとスンスンと匂いを嗅ぐと、難しい顔をしながら玉子焼きサンドの包みをマネージャーの人に渡した。
「佐々木、科捜研に回して。」
「了解です。」
「健太?」
「君はこっち。」
いつの間にか、俺はマネージャーの一人に羽交い締めにされていた。
「君が持ち込んだこの差し入れに異物混入が認められたら、」
「認められたら?」
「黒峯の半径三メートル以内に接近禁止ね。」
「はぁあ? 俺は健太の彼氏で未来の旦那さんだぞ!」
「ストーカーはみんなそう言うよね。」
「俺はストーカーじゃない! な、健太、」
と、健太の方を見たら、健太は
「俺はお前の彼氏になった覚えも伴侶になる予定もない。で、何入れた?」
「ふぇっ?」
「俺の鼻は誤魔化されんぞ?」
「えと、・・・出来上がったサンドイッチにキスしただけだよ?」
「嘘つきめ。廃棄で。」
健太の無情な言葉にマネージャーが頷く。
「衛生上、良くないから、キスだけだとしても駄目だよ。」
「せっかく、頑張って作ったのに!」
俺は包帯だらけの両手を健太に見せた。
すると健太は俺の手を取って、
「だから、俺の鼻は誤魔化されないって言ってる。」
と、言って包帯をパパっと外した。
傷一つない綺麗な俺の手が白日の下にさらされる・・・
「すばる、」
「健太ぁ・・・」
「家庭科の食品衛生とか保健体育、ついでに公衆衛生、きちんと勉強しとけ。次は無い。」
健太がそう言うと、俺を羽交い絞めにしてたマネージャーが俺を解放した。
「黒峯の温情があって良かったね。でも、次、やったらアウトだからね。」
「天野、お前、今言われた座学、明日の放課後から補習な。」
「亮輔ぇ・・・」
「じゃあ、お先に、お疲れ。」
「「「お疲れ様っす!」」」
マネージャーたちに見送られて、健太は亮輔と一緒に去って行った。
その二人の後姿にモヤモヤする。
亮輔は健太の専属カメラマンでマネージャーみたいな存在だから一緒に行動することが多いのは仕方ないんだけどさ、最近、距離近すぎじゃないかな?
「さてと・・・」
佐々木と呼ばれていたマネージャーが俺の作った玉子焼きサンドを俺の手に戻した。
「天野君さぁ、黒峯のこと嫌いなの?」
「嫌いなわけない。」
「じゃあ、何で異物混入したものを差し入れするかな?」
「異物じゃない、俺の愛だ!」
「じゃあ、食べて。」
「ふぇっ?」
「今、ここでそれ食べて君の愛とやらを証明してくれる?」
俺はサンドイッチの包みに視線を落とした。
「・・・・・・」
「あれれ、食べられないのかな?」
「いや・・・」
「自分で作ったもの、だよね?」
「・・・・・・」
「自分で食べられないものを、黒峯に食べさせるつもりだったんだ?」
「・・・いや・・・」
「何入れたか、科学捜査研究会が調べたら確実に分かるんだよ? そして検査結果は教職員と風紀委員会に周知されるんだよ?」
「ううっ・・・」
俺はサンドイッチの包みを持って剣道場から走って逃げた。
調べられたら、不味いものが入ってるから仕方ない。
「くそっ!」
俺は遊歩道に設置されているゴミ箱に俺の〇液がたっぷり入ったサンドイッチを包みごと投げ捨てた。
健太の〇液入りなら喜んで食べるけど、自分のはな・・・
その後、俺が捨てたサンドイッチを食べた黒いタキシード柄の野良猫が腹を壊して瀕死になってたのを、俺は知らない。
─────────
科学捜査研究会は、化学好きと鑑識とか科捜研系のドラマが大好きな一般生徒数人と教職員で構成されている同好会です
顧問は玲子先生とOBな生物化学教師数名
同好会なのに顧問が多い(笑)
すばるの〇液の正体はご想像にお任せします
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