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まつろわぬ番・But still, let's live together A視点
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しおりを挟むサイモンに小言をたくさん言って帰したあと、ヴィクトールの車でルイを自宅まで送った。
叔父さんは研究室、植物画家の叔母さんは個展の準備で出かけていて留守だったから、三人でリビングのソファーに座ってお茶を飲んだ。
俺とルイが隣あって座り、ヴィクトールは俺たちの正面のソファーに座った。
「僕ってアルファ運ないよね。」
ルイがため息をつきつつ愚痴った。
どうやら、ルイに言いよってくるアルファは、サイモンだけではないらしい。
「いや、サイモンはある意味アルファらしいアルファだった。ルイ、アルファの大半はあんな感じだぞ? 自己中で俺様で、人の話を聞かない、サイモンやヴィクトールみたいなやつがアルファのデフォルトだ。」
「酷っ!」
「・・・僕はお父さんとか、アーサーみたいな、紳士的な恋人が欲しいな。」
俺みたいな紳士的な恋人・・・
ルイの言葉を心の奥で嚙みしめた。
恋人の理想が俺とか、かなり嬉しい。
「ルイ・・・」
思わず抱き寄せてルイの頭を撫でた。
「あ、ズルい! アーサー、俺もハグして撫でてよ!」
「無理。」
「ええぇ~、ハグしてよ~」
駄々っ子のようにジタバタするヴィクトールをルイが笑いながら、
「アーサーの代わりに僕がしてあげるよ。」
と言って両手を広げた。
「ううっ・・・」
ヴィクトールはルイの隣に座り、ルイの肩に額を乗せた。
「ヴィクトールって可愛いよね。」
10歳も年上の男にそんなことを言いながら優しく頭を撫でるルイがものすごく大人に見える。
精神年齢が低いヴィクトールは、ルイのオメガとしての母性本能を刺激しているのかもしれない。
大人しくルイに撫でられているヴィクトールに、なんか無性にイライラする。
あと、ムカつく。
「髪もふわふわで手触りいいし。」
「そうなのか?」
「うん、アーサーも撫でてみなよ。」
「どれ・・・」
ルイに言われて撫でてみると、確かにふわふわしていて手触りが良かった。
・・・ヤバい・・・結構、クセになりそうだ。
「なんかさ、この手触り、似てると思わない?」
「・・・あ・・・」
ルイに言われて思い出したのは、昔、叔父が飼っていたキャバリアのナイトだ。
カラーはブレンハイムと呼ばれる白と赤褐色で、耳周りの毛が細かく波打っていて、そこの手触りが抜群だった。
ナイトは俺が大学生の時に老衰で亡くなった。
「懐かしいな・・・」
そういえば、ヴィクトールの髪の色、ナイトと同じ色だ。
「何? 何に似てるの?」
俺とルイに撫でられて、ヴィクトールが気持ち良さそうに、目を細めて、うっとりとしながら聞いてきた。
・・・なんか、顔までにてるような・・・
「昔、うちの家族だった犬だよ。」
「犬?」
「キャバリアで、ナイトって名前で、僕とアーサーのお気に入りの犬だったんだよ。」
「俺、アーサーのお気に入りのわんちゃんに似てるの?」
「うん、そっくりだよ。」
「アーサーもルイも、もっと、撫でていいよ。」
「ふふふ」
ルイはヴィクトールにすっかり慣れてしまったし、オメガが嫌いな筈のヴィクトールもルイには心を許しているようだ。
こうしていると、二人は仲のいい兄弟みたいだ。
ルイが兄で、ヴィクトールが弟っぽいけれど。
その日、俺とルイに撫でまわされたヴィクトールは、かなりご機嫌で帰って行った。
翌週、待ち合わせの公園に行くと、ブレンハイムカラーのキャバリアのぬいぐるみを抱きかかえた満面の笑顔のヴィクトールがいた。
「名前は、ナイトにしたよ! ナイト二世!」
「・・・まさか、それ持って歩く気か?」
「駐車場までね。ドライブがてら、ブライトンの画廊でやってるエイミの個展を見に行こうよ。」
エイミはルイの母親で俺の義叔母の名前だ。
「いいけど。」
「じゃあ、今日の予定はそれで決まり。」
車の助手席に座ると、ヴィクトールからさっきのぬいぐるみを渡された。
「可愛いな。」
「気に入った?」
「ああ。」
「まだ大小何種類かあるからさ、今度うちに見に来ない?」
最近のヴィクトールは、何かにつけて自分のフラットに俺を招こうと小細工が多くなってきた。
自分が作った料理の写真とかを見せて、胃袋を掴もうと躍起になってた時期もあった。
下心が見え見えで、結局、一度も行ったことがない。
「・・・考えとく・・・」
そっけなく言ったけれど、ヴィクトールは気にしていないようだった。
本当はハグもキスも、そろそろしてもいいかもしれない、と思っている。
けれど今の関係が心地良すぎて、もう一歩先の関係へと踏み出す勇気が俺には無かった。
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