断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常 R版

藍生らぱん

文字の大きさ
7 / 22
第一部

第5話 攻略対象者その三 騎士団長子息との接近遭遇

しおりを挟む
 
フルール王国の騎士団長は王弟殿下で、強面で背が高く、屈強な体躯に恵まれた槍の使い手なんだ。
グングニルという神器の槍の使い手でもあるんだよ。

聖具は光か闇の属性の精霊が宿っていて教会の所属なんだけれど、神器にはそれ以外の精霊が宿っているんだ。
グングニルには雷の精霊が宿っているんだよ。
基本的に聖具も神器も自分の使い手に相応しい主を選んで、他の人には見向きもしないのは同じ。
絶対に触らせないし、寄り付きもしないんだ。

グングニルは雷槍なので、雷系の魔法を使える人間を好むらしいよ。
土と水属性持ちが多いフルール王国で、騎士団長は水と光、風の三属性持ちで強力な雷魔法の使い手なんだ。
魔力量も多くて神器の持ち主に相応しい清廉な人格者なんだよ。
そのフルール王国の騎士団長が部下数人と見習い騎士を連れて教皇国の聖騎士団にやって来たんだ。

今日、各国の代表の騎士たちを集めたトーナメント方式の御前試合があるからなんだ。
御前試合の優勝者は「聖剣の勇者」か「聖騎士団の団長」と手合わせができるんだ。
「聖剣の勇者」は僕の父上、「聖騎士団の団長」は母さまの従兄弟で、僕の祖父の姉の息子さんなんだ。

聖騎士団長―ベルナール・ユーグ・ド・レイモンは聖なる盾、イージスの持ち主で、「勇者」の称号持ちなんだ。

「ルル、久しぶり! 会いたかった!!」
御前試合の会場に着くと、イージスの精霊が僕のそばに飛んで来ちゃった。
「精霊王の愛し子」という称号があるおかげで、僕は主以外に見向きもしない聖具や神器に宿る精霊たちに好かれているんだ。
そのせいで、聖騎士団では僕が「次期教皇」なことはバレバレで、公然の秘密になっているんだよね。

「教皇」の称号持ちは必ず女神様と精霊王の愛し子か加護持ちなんだ。
主がいない休眠状態の聖具を管理する関係もあるのかな。
とにかく、「教皇」は全ての聖具、神器に宿る精霊たちと意思疎通ができるし、触れることもできるんだ。
だから、聖具と神器のメンテナンスは教皇か、精霊王に認められた妖精族のドワーフの職人にしかできないんだ。

ちなみに、聖具と神器に宿る精霊は精霊の愛し子か加護持ちか、高レベルの鑑定系のスキルが無いと視認できない。
そして意思の疎通ができるのは愛し子か、加護持ちか、選ばれた主だけ。
だから一般の人たちには見えないし、聞こえない。

好かれて懐かれるのは嬉しいんだけれど、身の安全の為に成人するまで称号を隠さなきゃいけない僕は困ってしまう。
父上の聖剣の精霊クサナギは大人でクールな性格なので他人がいる所では寄ってこないんだけど、イージスは無邪気っていうか、好奇心旺盛な仔犬のようだから、我慢ができないらしい。
他の聖騎士の聖具たちも僕の事を気にしてチラ見してるけれど、職務中だから我慢しているのに。
ほんと、イージスだけだよ、我慢しないの・・・
まあ、見える人は限られるし、見て見ぬ振りをしてくれるからいいんだけどね。

「イージス、今日は人がたくさんいるから、お話は後でね。」
「え~、つまんない~、じゃあ、勝手に遊ぶもん。」
そう言ってイージスは僕の髪の毛の中にもぐって、僕の髪を編んだり解いたりを繰り返す。
優勝者が決まるまではイージスの出番も無いし、まあ、いいか、と好きにさせていると、どこからか、視線を感じたんだ。

神器グングニルの刃先に小さな精霊──虎縞模様のパンツを履いた小さな雷様が立っていて、背伸びをしてこっちを見ている。
その雷様と目が合った。
「え?」
目が合った瞬間、遠くにいた筈の雷様グングニルが目の前に!

「お前、イーサンの嫁にしてやってもいいぞ!」
「「ふざけたこと言ってんじゃねぇよ!」」

大公家の後継であるランス兄上と賢者の後継であるメルク兄さまには、女神様と精霊王の加護があるから精霊を見る事ができるし、意思の疎通もできるんだ。
グングニルの事は兄たちに任せて、僕は見えない聞こえない振りを貫く。

グングニルと兄たちが揉めていると、そこにフルール王国騎士団長の息子で公爵家次男のイーサン君がやってきた。
イーサン君は乙女ゲームの攻略対象者なんだよ。
将来、父親である騎士団長の恵まれた体躯を受け継いだ美丈夫になるんだよね。
今は兄たちと同じ年の12歳の子供なんだけど、頭一つ分、兄たちより大きい。
「イーサン、こいつをお前の嫁にしよう!」
グングニルが僕を指さして言った。
「大きなお世話だ。それに、こいつは女子じゃないぞ。」
「は~、男とか女とか、人間って不自由だよね。」
精霊に性別はないから、人間とは感性とか感覚が違うんだろうね。
・・・ん?
イーサン君、精霊と意思疎通できてる・・・?
「うちのグングニルがすまない。俺はフルール王国の騎士見習い、イーサンだ。」
「俺はランスロット。聖騎士見習いだ。」
「俺はメルクリウス。賢者の弟子だ。」
「僕はシャルル。二人の弟です。」
とりあえず、お互いに簡単な自己紹介をして挨拶を交わした。
「君たちはグングニルと話せるんだな?」
「ああ、加護持ちだからね。そういう君も話せるんだね?」
「俺は雷の精霊の加護持ちで、父上からグングニルを受け継ぐ資格を満たしている。まだグングニル本人には認められていないけどな。」
「この子を嫁にしたら認めるよ!」

グングニル、しつこいなぁ・・・

「「却下!」」
兄たちがグングニルを睨みつけている。
「だから、女子じゃないから無理だ。」
「イーサンは見る目が無いね。仕方ないから、諦めるけどさ。後で後悔しても知らないよ?」
「男相手に後悔も何も無い。」
「ほんと、見る目無い。頭でっかち。むっつりスケベ!」
グングニルはそう言って、神器の雷槍の方に戻って行ってしまった。

いや、見る目無いのはグングニルの方じゃない?
僕は男なんだから、嫁にはなれないもん!

「あいつ、見る目あるな・・・」
「諦めてくれて良かった・・・」

兄たちがグングニル寄りの呟きを漏らしてるし・・・

いや、僕、男だからね!

その後、少しイーサン君と兄たちが話をしたところ、見習い騎士の槍術部門にエントリーしていたらしく、お互い順当に勝ち上がれば決勝で対戦することがわかったんだ。
「決勝で会おう。」
「ああ、楽しみにしてる。」
イーサン君とランス兄上は握手をして一旦、別れた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

義兄の愛が重すぎて、悪役令息できないのですが…!

ずー子
BL
戦争に負けた貴族の子息であるレイナードは、人質として異国のアドラー家に送り込まれる。彼の使命は内情を探り、敗戦国として奪われたものを取り返すこと。アドラー家が更なる力を付けないように監視を託されたレイナード。まずは好かれようと努力した結果は実を結び、新しい家族から絶大な信頼を得て、特に気難しいと言われている長男ヴィルヘルムからは「右腕」と言われるように。だけど、内心罪悪感が募る日々。正直「もう楽になりたい」と思っているのに。 「安心しろ。結婚なんかしない。僕が一番大切なのはお前だよ」 なんだか義兄の様子がおかしいのですが…? このままじゃ、スパイも悪役令息も出来そうにないよ! ファンタジーラブコメBLです。 平日毎日更新を目標に頑張ってます。応援や感想頂けると励みになります。   ※(2025/4/20)第一章終わりました。少しお休みして、プロットが出来上がりましたらまた再開しますね。お付き合い頂き、本当にありがとうございました! えちち話(セルフ二次創作)も反応ありがとうございます。少しお休みするのもあるので、このまま読めるようにしておきますね。   ※♡、ブクマ、エールありがとうございます!すごく嬉しいです! ※表紙作りました!絵は描いた。ロゴをスコシプラス様に作って頂きました。可愛すぎてにこにこです♡ 【登場人物】 攻→ヴィルヘルム 完璧超人。真面目で自信家。良き跡継ぎ、良き兄、良き息子であろうとし続ける、実直な男だが、興味関心がない相手にはどこまでも無関心で辛辣。当初は異国の使者だと思っていたレイナードを警戒していたが… 受→レイナード 和平交渉の一環で異国のアドラー家に人質として出された。主人公。立ち位置をよく理解しており、計算せずとも人から好かれる。常に兄を立てて陰で支える立場にいる。課せられた使命と現状に悩みつつある上に、義兄の様子もおかしくて、いろんな意味で気苦労の絶えない。

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

俺の妹は転生者〜勇者になりたくない俺が世界最強勇者になっていた。逆ハーレム(男×男)も出来ていた〜

陽七 葵
BL
 主人公オリヴァーの妹ノエルは五歳の時に前世の記憶を思い出す。  この世界はノエルの知り得る世界ではなかったが、ピンク髪で光魔法が使えるオリヴァーのことを、きっとこの世界の『主人公』だ。『勇者』になるべきだと主張した。  そして一番の問題はノエルがBL好きだということ。ノエルはオリヴァーと幼馴染(男)の関係を恋愛関係だと勘違い。勘違いは勘違いを生みノエルの頭の中はどんどんバラの世界に……。ノエルの餌食になった幼馴染や訳あり王子達をも巻き込みながらいざ、冒険の旅へと出発!     ノエルの絵は周囲に誤解を生むし、転生者ならではの知識……はあまり活かされないが、何故かノエルの言うことは全て現実に……。  友情から始まった恋。終始BLの危機が待ち受けているオリヴァー。はたしてその貞操は守られるのか!?  オリヴァーの冒険、そして逆ハーレムの行く末はいかに……異世界転生に巻き込まれた、コメディ&BL満載成り上がりファンタジーどうぞ宜しくお願いします。 ※初めの方は冒険メインなところが多いですが、第5章辺りからBL一気にきます。最後はBLてんこ盛りです※

【完結】僕の異世界転生先は卵で生まれて捨てられた竜でした

エウラ
BL
どうしてこうなったのか。 僕は今、卵の中。ここに生まれる前の記憶がある。 なんとなく異世界転生したんだと思うけど、捨てられたっぽい? 孵る前に死んじゃうよ!と思ったら誰かに助けられたみたい。 僕、頑張って大きくなって恩返しするからね! 天然記念物的な竜に転生した僕が、助けて育ててくれたエルフなお兄さんと旅をしながらのんびり過ごす話になる予定。 突発的に書き出したので先は分かりませんが短い予定です。 不定期投稿です。 本編完結で、番外編を更新予定です。不定期です。

BLゲームの世界でモブになったが、主人公とキャラのイベントがおきないバグに見舞われている

青緑三月
BL
主人公は、BLが好きな腐男子 ただ自分は、関わらずに見ているのが好きなだけ そんな主人公が、BLゲームの世界で モブになり主人公とキャラのイベントが起こるのを 楽しみにしていた。 だが攻略キャラはいるのに、かんじんの主人公があらわれない…… そんな中、主人公があらわれるのを、まちながら日々を送っているはなし BL要素は、軽めです。

悲報、転生したらギャルゲーの主人公だったのに、悪友も一緒に転生してきたせいで開幕即終了のお知らせ

椿谷あずる
BL
平凡な高校生だった俺は、ある日事故で命を落としギャルゲーの世界に主人公としてに転生した――はずだった。薔薇色のハーレムライフを望んだ俺の前に、なぜか一緒に事故に巻き込まれた悪友・野里レンまで転生してきて!?「お前だけハーレムなんて、絶対ズルいだろ?」っておい、俺のハーレム計画はどうなるんだ?ヒロインじゃなく、男とばかりフラグが立ってしまうギャルゲー世界。俺のハーレム計画、開幕十分で即終了のお知らせ……!

イケメンチート王子に転生した俺に待ち受けていたのは予想もしない試練でした

和泉臨音
BL
文武両道、容姿端麗な大国の第二皇子に転生したヴェルダードには黒髪黒目の婚約者エルレがいる。黒髪黒目は魔王になりやすいためこの世界では要注意人物として国家で保護する存在だが、元日本人のヴェルダードからすれば黒色など気にならない。努力家で真面目なエルレを幼い頃から純粋に愛しているのだが、最近ではなぜか二人の関係に壁を感じるようになった。 そんなある日、エルレの弟レイリーからエルレの不貞を告げられる。不安を感じたヴェルダードがエルレの屋敷に赴くと、屋敷から火の手があがっており……。 * 金髪青目イケメンチート転生者皇子 × 黒髪黒目平凡の魔力チート伯爵 * 一部流血シーンがあるので苦手な方はご注意ください

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

処理中です...