断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常 R版

藍生らぱん

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第一部

第13話 バザー

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祖父の屋敷に帰ってギルドの支給品の錫杖のことを話したら、今はまだ詳しいことは話せない、って顔面蒼白になった祖父に言われた。
あと、魔力操作の合格点が出るまで付与は禁止になっちゃった。
あ、でも加護の付与だけは大丈夫だって!
来週はバザーの準備のお手伝いがあるから良かった。

兄たちや両親にもね、それとなく称号の事を聞いてみたんだけれど、成人する年に祖父か教皇さまから説明があるから、それまでは余計な事は言えないって言われちゃったんだよね。

一体「教皇」の称号にはどんな秘密があるんだろう?

***

週が明けて、今日は教皇国の聖者見習いとして教会のバザーの準備のお手伝いで教会に来ているんだ。

聖者と聖女のみなさんと一緒にハンカチとかストールにワンポイントの刺繍をして加護を付与しているんだよ。
刺繍はね、無難に花とか、猫とか、仔犬のほかに、縁起のいい梟とか、金魚とか、色々と図案があるんだけれど、図案によって加護の効果が違うんだ。

花は恋愛運
梟は開運
金魚は金運
ブタは幸運と安産
ヤモリと雀は家内安全
狼は武運
黒猫は魔除け
三毛の招き猫は商売繁盛
狐は豊穣

他にも色々。
因みにカドケウス──白蛇の図案は健康とか病気平癒なんだ。

僕はバザー用のハンカチには黒豚とか黒猫の図案を、そして、いつもお世話になっている聖騎士団のみんな用のハンカチにはカドケウスと狼の図案を刺繍しているんだ。

バザー用は一枚につき一つの図案だけど、聖騎士用のハンカチや衣類には数種類の図案を刺繍していいことになってるんだよ。
聖騎士団は聖者や聖女と一緒に浄化の旅に行くことが多いから、ケガとか病気になりませんように、って願いを込めて身に着ける物には刺繍して加護を付与するんだ。 
刺繍が得意な人は刺繍で、苦手な人は防具に魔法陣を描いて付与するんだよ。


****

バザー当日、僕はアンディ君とオスカー君と一緒に教皇国の皇都の広場で救護所のお手伝いをしてるんだ。
バザーとか何かのイベントの時は普段よりたくさん人が集まるから、ケガをしたり具合が悪くなった人の為に簡易テントで臨時の救護所を毎回設置してるんだ。
順番でシフトを組んでるし、僕はまだ見習いってことになってるので、午前中に一時間だけ働いたあとは兄たちと合流して、一緒に他の出店を見て回ることになってるんだ。

バザーは教会の他に魔法学園とか、冒険者ギルドとか、商業ギルドとかも出店してるんだよね。
売り上げは孤児院や職業訓練校に寄付したり、魔法学園の特待生や奨学生の奨学金になるんだよ。

「ルル坊、時間になったから交代ね。」
次のシフトの聖者のお兄さんが来たので僕のお仕事は終了だ。
年上の聖者と聖女のみんなは僕のことを「ルル坊」って呼ぶんだよね。
バーナードさんが僕をそう呼ぶから、そこからその呼び方が広まったみたい。
バーナードさんは、今はギルド長をしているけれど、その前は聖者をしながら冒険者の僧侶(ランクS)をしていたから、現役の聖者や聖女のお友達が多いんだ。
「は~い。お疲れさまです。」
「ご苦労さん。」
救護所の皆さんに挨拶してから、僕はアンディ君とオスカー君と一緒に魔法学園のバザーが行われている区画に向かった。

魔法学園は中等科、高等科、大学院《アカデミー》、それぞれの生徒会が中心になって様々なお店を出店しているんだ。
アカデミーは魔物肉の唐揚げ屋さん、高等科は射的。
そして中等科は毎年ジェラートの実演販売をしてるんだよ。
魔法で果物をカットしたり、すりつぶして凍らせてシャーベットを作ったり、生クリームを混ぜてジェラートにしたりする工程を実演して見せながらの販売だからとても人気があるんだ。

実演用のブースは見やすいように簡易ステージがあって、その上に数人の学生が立ってそれぞれが注文を受けたジェラートを魔法を駆使して作っているんだよ。

兄たちはステージの中央で二人で協力し合いながら、ジェラートを何種類か作っているのが見えた。
そしてバザー会場の、魔法学園中等科出店のジェラート屋さんの店先には、魔法学園中等科と高等科の制服を着た生徒たちと一般のお客様が入り混ざって長蛇の列になっていた。

魔法学園中等科のジェラート屋さんは、中等科の生徒会が中心になって運営しているんだ。
ジェラート屋さんは午前中の売り子が女子生徒で実演が男子生徒、午後は男子が売り子で女子が実演と、役割を入れ替えてのシフト制。
兄たちは僕のお仕事に合わせて午前中のシフトにしてもらってたんだけど、こんなに混んでると時間どおりに抜け出せるかが心配だね。

「すごい混んでるなぁ・・・」
アンディ君がそう言いながらランス兄上に向かって手を振った。
一応、婚約者(仮)だから、それらしい行動をお互いしてるんだって。
どこにアンディ君の祖国の王子たちのスパイがいるか分からないから、演技に余念がないんだよね。
実際、上の王子二人が留学してくるとか、そんな話もあるらしいし。
なんか、すごい執念だよね。
でも、原因はアンディ君の伯父さまにあるんだ。

アンディ君の祖国で初めての、「勇者」の称号獲得目前で亡くなってしまった侯爵家の嫡男、アンドラーシュ・クロヴィス・ド・クレメンスさま。
聖剣に選ばれた聖騎士で、強くて、見た目も麗しくて、男女問わずものすごくモテたんだって。
流行り病の特効薬の材料であるSランクの魔獣の角を取るために、単独で討伐に行って、成功したのはいいけれど、彼も流行り病にかかってしまったんだ。
おまけに討伐した魔獣の呪いにかかってしまって、呪いと病のダブルパンチであっけなく亡くなってしまったんだ。
でも、彼が取って来た魔獣の角が通常サイズの数倍の大きさで、そのおかげで特効薬がたくさん作れたんだ。
アゼルスタンだけでなく、周辺国もその特効薬のおかげで重症者がたくさん生還できたんだ。
その献身的な彼の働きに敬意を表して、教皇さまが彼に「勇者」の称号を贈ったんだ。
だから彼の祖国では「救国の英雄」とか、「悲劇の勇者」とか、死後も演劇やら絵本、小説の主人公のモデルになってて、今でも大人気なんだ。

その「悲劇の勇者」の双子の妹の娘であるアンディ君はアンドラーシュさまの生まれ変わりじゃないかって巷では言われている位ソックリなんだ。
そのせいで、「悲劇の勇者」に憧れている王子三人は、アンディ君と絶対結婚すると息巻いていて、かなりうるさかったんだって。

「王子たちの留学、決まったらしいぞ。」
周囲に話している内容が伝わらないようにオスカー君が防音の結界を僕たち三人の周りに展開した。
「え、マジ?」
「アンディ、別の国の中等科に入学するか? するなら秘密裏に手続きするって団長が言ってたぞ。」
「何で本人じゃなくてオスカーに言うかな。」
「団長は今アゼルスタンに行ってるし、俺の親父が手続き任されてるからだな。」
「ったく・・・」
「で、どうする?」
「じゃあ、フルール王国にする。アゼルスタンとは犬猿の国だし、もし王子たちが転校するってごねてもフルールには入国できないよな。」
「えぇ~! アンディ君、フルール王国の学校に行っちゃうの?」
「フルールならシャルルが冒険者活動する時の拠点だし、大叔父様の屋敷にはシャルル達のは当然だけど、俺とオスカーの部屋もあるから丁度いいよな。」
そうだ、僕の祖父とアンディ君のおばあさま、姉弟だった。
アンディ君は転移スキル持ちだから、教皇国の大公家と祖父の家を繋ぐ転移陣ゲートも自由に使えるもんね。
「シャルルと同じ学園に行けないのは残念だけどな。」
うん、僕もアンディ君と同じ学園に行けないのは寂しいなぁ・・・

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