断罪される悪役で当て馬な仔ブタ令息に転生した僕の日常 R版

藍生らぱん

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第一部

第2話 攻略対象者その一 王子との接近遭遇

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僕が前世の記憶を取り戻してから数年後、10歳になった年の春に、フルール王国の王妃様主催のお茶会に招かれて出かける事になった。

三人いる王子たちのうち、側妃様が産んだ第二王子殿下と第三王子殿下の側近と婚約者候補になりうる同年代の貴族の子供たちとの交流目的のお茶会なんだって。
王妃様の産んだ第一王子殿下は二年前のお茶会で側近候補も婚約者候補も決まったらしいよ。
それで留学中だから、欠席なんだ。

うちは双子の次兄がこの国の魔法伯を継ぐ予定だから、ついでに兄弟全員招かれたんだ。
あわよくば、友人候補に、ってことらしい。

二つ上の双子の兄たちと母さまと一緒に僕は、お行儀よく王妃様と側妃様、そして王子殿下たちにご挨拶したんだ。
その時、妙な視線を感じたんだけど、兄たちが遮ってくれたので、誰の視線だったのかはわからなかったんだよね。

挨拶した後は兄弟三人で仲良く隅っこのテーブル席に座ってお菓子を食べることにしたんだ。
ちなみに、長兄のランス兄上の膝の上に座り、次兄のメルク兄さまに給餌されているんだよ。
「「ルル、美味しい?」」
家族はシャルルを愛称で「ルル」って呼ぶんだよね。
「うん!」
おやつの時間、双子の兄たちはお菓子よりも甘い目でデレデレと僕を愛でるのが定番なんだ。
顔の作りはそんなに悪くはないんだけれども、ぽっちゃりでソバカスで、美形揃いの家族に比べたらただのモブでしかない、いや、悪役令息で当て馬な仔ブタの僕を家族みんなが溺愛している。
母さまなんかフリフリでヒラヒラで、でっかいリボン付きの可愛い服を毎日僕に着せているし、そんな女の子みたいな恰好の僕に家族全員がデレデレなんだ。
うちの家族はもしかしたら近眼なのかもしれない。
祖父母は確実に老眼だと思うし・・・

こんな超ブラコンの二人が乙女ゲームでは攻略対象者なんだよ?
でも双子のルートは二人の見分けを1回でも失敗すると好感度マイナス、シャルルを断罪した時点で即バッドエンドという鬼畜設定にすると前世の母親が息巻いていたような・・・
そして彼らの弟として過ごして来たからこそ思うんだけれど、末弟にぞっこんラブな兄たちが他の誰かに恋するのは想像できないんだよね。

僕は試作段階のシナリオと裏設定を読んだだけで、最終的なシナリオの決定稿は読んでないし、ゲーム自体はプレイしたことがないので、兄たちのハッピーエンドの内容は知らないんだ。
僕は将来、強制力によって断罪されたとしても修道院で出世するから、兄たちには僕のことは気にせず、幸せになって欲しいと思っているんだ。
でも、まだゲームは始まってないから、僕はゲームのことは気にしないで、二人にうんと甘えるつもり。
前世、一人っ子だったから、兄弟が欲しかったんだよね。
だから、優しい兄が二人もいて、今世の僕は大満足なんだ。

そこに第三王子殿下が側近候補の子供たちを引き連れてやって来た。
「おい、お前たち、勇者の子供なんだろ? 聖剣出して見せてみろ!」
「「・・・・・・」」
僕たちは第三王子殿下の言葉に呆気に取られた。

子供のお茶会に刀剣持ち込む馬鹿な令息がいるわけないじゃん。
それに聖剣とか、聖槍とか、教会に保存されている聖具は精霊が宿っていて、自ら選んだ主にしか扱えないんだよ。

たとえ勇者の血統でも、聖具に選ばれなければ触れる事もできない、という事になっているんだけれど、第三王子殿下はその常識を知らないのかな?

大きな声だったから、離れた位置にいた第三王子殿下の母親である側妃様の顔が蒼白になっているよ。
ちなみに側近候補の子供たちは知っていたらしく、彼らもまた顔面蒼白になって第三王子殿下から一歩二歩と距離を取り始めた。

「勇者の子供なのに聖剣持ってないのか?」
第三王子殿下の小馬鹿にしたようなせりふに兄たちがため息をついた。

「「外交問題になるよ。」」
と、兄たちがハモって言った。
「がいこうもんだい?」
第三王子殿下は兄たちの言葉に首を傾げた。
「僕たちの父親は確かに今代の勇者だよ。S級冒険者で、聖具に選ばれた聖騎士で、教皇国の大公でもある。」
「だから僕たちはこの国の国民じゃない。つまり、君の命令に従う立場には無い。」
「「古の勇者と女神様の直系の子孫である僕たちに命令できるのは、僕たちの父である大公閣下と教皇聖下だけ。そんなことも知らないの?」」
兄たちの言い分に第三王子殿下は顔を真っ赤にして怒鳴りながら地団駄を踏んだ。
「生意気な! 不敬罪で牢屋に入れてやる!」

常識知らないくせに「不敬罪」は知ってるんだね。

僕は騒ぎを聞きつけて第三王子殿下を回収しに来た母親である側妃様と、同母兄である第二王子殿下が平謝りする姿をぼんやり見ていた。
大公家はスタンピードや瘴気の浄化をする聖騎士団の元帥的な立場で、聖女や聖者の巡回とか巡礼のコースや順番に口が出せるんだ。
出せるけど、基本的には口出ししないけどね。

でもさ、いくら母さまがこの国の貴族家出身で、次兄がその実家の後継者になるとしても、今は大公家の人間なんだよね。
王族として教育されているはずの王子が、他国の王族と同等の大公家の子息たちに失礼な言動をしたんだから、目も当てられないよね。
この国、大丈夫なのかな?

喚く第三王子殿下は王妃様の命で近衛に回収され、衆人環視の中、強制的にお茶会の会場から退場して行った。
野次馬たち(主に付き添いの御婦人方)はその様子をクスクスと嘲笑しながら面白おかしく話をしていて、その様子はとても嫌な感じだった。

お茶会という名の側近と婚約者候補探しだったのに、第三王子殿下の婚約者候補とか側近候補は辞退者が多そう。
でも、見た目はいいから今後の教育次第と様子見する候補者もいそうだよね。
ホント、黙っていればね、カッコいい系の美少年だったんだよ。

・・・そういえば第三王子殿下、攻略対象者だったよね・・・
あんな脳内お花畑なキャラだったかな?
ん~、シャルルに関する事は結構覚えてるんだけど、他のキャラクターの詳細は試作段階の適当な基本設定しか思い出せないなぁ。

確か、デフォルトの攻略対象者たちは全部で五人。

フルール王国第三王子 ギルバート 
宰相の息子の侯爵家嫡男 スチュアート
騎士団長の息子の公爵家次男 イーサン

ん~、三人の家名とか、フルネームは覚えてないなぁ・・・
残りの二人は、

教皇国の大公の後継者で未来の勇者である僕の長兄
 ランスロット・ルーク・ド・フォーティス
未来の賢者で全属性持ちの魔法の天才である僕の次兄
 メリクリウス・ルミエール・ド・ブランシュール

そして隠し攻略対象者シークレットが一人いたかな?

隠し攻略対象者シークレットは横顔のビジュアルだけ見たことがあるんだよね。
名前とか詳しい設定は教えてもらえなかったんだよね。
黒髪に金色の星屑を散りばめたような紫がかった宵闇色の瞳で、月に一度、新月の夜にしか会えないウルトラレアなキャラなんだ。

真っ白い髪に東雲色の瞳のシャルルとは真逆の色と容姿だったなぁ。

***

僕ら兄弟は定期的にフルール王国の王都にある母方の祖父の屋敷に滞在している。
魔法伯とも呼ばれている僕らの祖父のアウルム・オウル・ド・ブランシュールは、高名な賢者で錬金術師でもあるんだ。
跡継ぎなはずの母さまの弟が冒険者になってしまって、なかなか家に帰ってこないので、生まれながら賢者の称号持ちのメルク兄さまに祖父の魔法伯位を継がせることになったんだよね。

因みに、母さまの実家の魔法伯家は領地を持ってない。
魔法伯家は古の大賢者の血筋で、賢者の称号持ちが生まれやすい血統なんだ。
だから王国が国に囲い込みたくて魔法伯の地位と恩給を与えてくれたから、代々それを受け継いでいるんだ。
祖父は恩給のおかげで錬金術の実験に困らないし、愛国心もあるので、理不尽なことさえなければ王国の為に働き、有事の際にはその身を捧げる覚悟はしているみたい。

でも教皇国で生まれ育ったメルク兄さまはフルール王国に愛国心のかけらも無いから、気に入らなければ、すぐにでも魔法伯を返上して出奔しそう。
祖父は継いだら好きにしていいと言ってたし、メルク兄さまも好きにしていいなら、と継ぐことを了承して祖父の知識を受け継ぐための勉強とか修業をしているんだ。

サロンでメルク兄さまの膝の上に座って、ランス兄上におやつの焼き菓子を給餌されていると、ドタバタと騒がしい音と共にサロンのドアが開いた。

「遊びに来てやったぞ!」

あの王宮のお茶会以来、第三王子のギルバート君が祖父の家に時々突撃して来るようになった。
騒がしくて、超迷惑・・・
「今日も、勇者はいないのか?」
「・・・・・・」
ギルバート君の狙いは僕らの父上、今代の勇者の称号持ち三人の中の一人であるテオドール・アーク・ド・フォーティス大公閣下なんだよね。

そうそう、メルク兄さまだけ家名が違うのはね、メルク兄さまが魔法伯家の後継に決定しているからなんだ。
僕は称号のこともあって本名を隠さなきゃいけなくて、メルク兄さまと同じ魔法伯家の家名を名乗ってるんだ。

勇者で大公でもある父上は超多忙。
僕たちだって毎日会えるわけじゃないんだ。
それが、ぽっと出のミーハーな第三王子のギルバート君に会うために時間を割くわけがないよね。

「会えるまで泊ってもいいか?」
ギルバート君がまた思い付きで馬鹿な事を言い出したよ!
「「却下」」
兄たちが口を揃えてお断りの言葉を言った。
流石、双子!
ハモり具合が最高!!
「ケチ!」
「「王子は王子らしく城で勉強でもしていろ。」」
せりふのシンクロ具合も素晴らしい!!
「おい、仔ブタ! お前、俺が好きだよな? 婚約者になってやるから、泊めろ!!」
王子ぃ~!!
こっちに矛先向けないで!
殺されるよ?
兄たちから、殺気のオーラが出てるってば!!
それに、ギルバート君と婚約だなんて、天地がひっくり返っても絶対にないし、ありえないよ!!

「絶対ヤダ・・・無理!!」
僕がメルク兄さまにしがみついてそう言うと、ランス兄上はメルク兄さまごと僕を護るように抱きしめてくれた。

「「大丈夫、ルルは誰とも婚約なんかさせないよ? ずっと僕たちが護るから、三人で幸せになろうね。」」

兄たちの過保護に拍車がかかってる!!
三人で幸せに、って何?
僕は「教皇」になるから誰とも結婚はできないけれど、兄たちはちゃんと素敵な人見つけて幸せな結婚をして跡取り作ってよね?
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