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第8話 それでも勇者は魔族を探す!
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あれから三年の月日が流れた。
誰に聞いても魔王の城が何処にあるのか分からず、また魔族も城の場所を教える訳もなく、俺に切り伏せられていた。仕方なく俺はソウルブレイカーに引きずられるまま、魔族と悪意を持つ人間を葬りながら旅を続けていた。
金を稼ぐ術を知らない俺は、山で果物を取ったり、魔族に襲われた人間を助けて、彼らから食物を分けてもらったりを繰り返しながら何とか旅を続けていた。
そしてこの三年で分かった事もある。
一つ、この世界にいる魔族の数は、そう多くないと言う事。
二つ、彼らは人間に対し、強い殺意を持っていると言う事。
三つ、そして何より強い悪意を持つのは魔族よりも人間の方であると言う事だ。
ここに来るまで倒した敵は盗賊に殺人鬼、町の為政者などほとんどが人間であった。
大神官ナカムラを殺したあの日、白蛇になったナカムラを一瞥した後、一瞬だけ夢を見た。どういう原理かは分からないが仕込んだのは既に殺されていた預言者ポーだ。
ポーは自らの未来予知の能力で、俺がナカムラを倒し、世界を救う予知夢を得ていた。そしてその予知から母さん……シスターリリスを巻き込んだのだ。
「まったく、好き勝手に巻き込みやがって!」
他に選択肢が無かったのかも知れないが、それでも文句の一つも言いたくなるというものだ。
夢の中でポーは言った。
『人を救い、魔族を救え。お前の選択が世界を救い、お前自身も救うのだ』
それだけ言うとポーは消え、俺は目が覚めた。
まったく意味が分からん。預言者というのは物事を小難しく伝えるのが決まりなのか!
俺の選択が世界を救うというなら、好きにやらせてもらうだけだ。どの道俺はこの剣に行動を縛られるしかないのだから。
この三年、各地を回ってようやく魔族の拠点がある場所がざっくり分かった。南に行くほど教会の勢力が強く、北に行けば行くほど魔族による被害を受けた村が多かったからだ。
本当は教会の人間を脅して魔族の事を聞き出せば良かったのだが、派手に悪人を殺し過ぎたせいで、教会の人間や権力者からは【笑顔の殺人鬼】と呼ばれ警戒される指名手配人物となってしまった。
つまらん殺意で魂を消し飛ばすのはナカムラだけで十分だ。余分な殺意を向けられ次々殺していては世界を救う前に俺が人類を絶滅させかねない。そうして俺は身を隠しながら行動するしか無かったので、悪魔族が何処にいるのか情報を中々掴む事が出来なかったのだ。
だが、ようやくだ。漸くここまで来た。
北の大地の最北端にそびえ立つアスモデウス山脈、そのすそ野の森に広がる魔の森……そのまんまじゃねぇか、こんちくしょう! 何故誰も気付かないんだ!!
「……」
話を戻そう。その魔の森に足を踏み入れてすぐに歓迎する者が現れた。
「どこへ行くつもりだ人間。ここから先は俺たち魔族の領域だ。コレ以上進むなら生きて帰れねぇぞ」
「そうそう、このまま真っ直ぐ来た道を戻るなら、私達は貴方を傷付けないわ」
俺の目の前に現れたのは、全身毛むくじゃらで尻尾のある獣人の大男と、小柄な女の娘の形をした液体人間だった。
「邪魔だどけ犬!」
「い……犬っ! 俺は狼、人狼ワーウルフだ!」
顔を赤くして怒り狂うワーウルフだが、液体人間の少女腹を抱えて爆笑している。
「あははは……犬ぅぅ、笑ろける!」
「お前も黙れブヨブヨ」
「ぶっ、ブヨブヨ……こんな侮辱初めてアルヨ。ライカンこいつ殺せアルヨ」
「ワハッハッハー、アルヨってさぁ。スラリン、何だよその喋り方は? アッハッハッハッハー!!」
口は災いの元……だが、今までの殺気に溢れた魔族とはちょっと印象が違う。どうしたものかと迷ってしまう【勇者】20歳の冬だった。
誰に聞いても魔王の城が何処にあるのか分からず、また魔族も城の場所を教える訳もなく、俺に切り伏せられていた。仕方なく俺はソウルブレイカーに引きずられるまま、魔族と悪意を持つ人間を葬りながら旅を続けていた。
金を稼ぐ術を知らない俺は、山で果物を取ったり、魔族に襲われた人間を助けて、彼らから食物を分けてもらったりを繰り返しながら何とか旅を続けていた。
そしてこの三年で分かった事もある。
一つ、この世界にいる魔族の数は、そう多くないと言う事。
二つ、彼らは人間に対し、強い殺意を持っていると言う事。
三つ、そして何より強い悪意を持つのは魔族よりも人間の方であると言う事だ。
ここに来るまで倒した敵は盗賊に殺人鬼、町の為政者などほとんどが人間であった。
大神官ナカムラを殺したあの日、白蛇になったナカムラを一瞥した後、一瞬だけ夢を見た。どういう原理かは分からないが仕込んだのは既に殺されていた預言者ポーだ。
ポーは自らの未来予知の能力で、俺がナカムラを倒し、世界を救う予知夢を得ていた。そしてその予知から母さん……シスターリリスを巻き込んだのだ。
「まったく、好き勝手に巻き込みやがって!」
他に選択肢が無かったのかも知れないが、それでも文句の一つも言いたくなるというものだ。
夢の中でポーは言った。
『人を救い、魔族を救え。お前の選択が世界を救い、お前自身も救うのだ』
それだけ言うとポーは消え、俺は目が覚めた。
まったく意味が分からん。預言者というのは物事を小難しく伝えるのが決まりなのか!
俺の選択が世界を救うというなら、好きにやらせてもらうだけだ。どの道俺はこの剣に行動を縛られるしかないのだから。
この三年、各地を回ってようやく魔族の拠点がある場所がざっくり分かった。南に行くほど教会の勢力が強く、北に行けば行くほど魔族による被害を受けた村が多かったからだ。
本当は教会の人間を脅して魔族の事を聞き出せば良かったのだが、派手に悪人を殺し過ぎたせいで、教会の人間や権力者からは【笑顔の殺人鬼】と呼ばれ警戒される指名手配人物となってしまった。
つまらん殺意で魂を消し飛ばすのはナカムラだけで十分だ。余分な殺意を向けられ次々殺していては世界を救う前に俺が人類を絶滅させかねない。そうして俺は身を隠しながら行動するしか無かったので、悪魔族が何処にいるのか情報を中々掴む事が出来なかったのだ。
だが、ようやくだ。漸くここまで来た。
北の大地の最北端にそびえ立つアスモデウス山脈、そのすそ野の森に広がる魔の森……そのまんまじゃねぇか、こんちくしょう! 何故誰も気付かないんだ!!
「……」
話を戻そう。その魔の森に足を踏み入れてすぐに歓迎する者が現れた。
「どこへ行くつもりだ人間。ここから先は俺たち魔族の領域だ。コレ以上進むなら生きて帰れねぇぞ」
「そうそう、このまま真っ直ぐ来た道を戻るなら、私達は貴方を傷付けないわ」
俺の目の前に現れたのは、全身毛むくじゃらで尻尾のある獣人の大男と、小柄な女の娘の形をした液体人間だった。
「邪魔だどけ犬!」
「い……犬っ! 俺は狼、人狼ワーウルフだ!」
顔を赤くして怒り狂うワーウルフだが、液体人間の少女腹を抱えて爆笑している。
「あははは……犬ぅぅ、笑ろける!」
「お前も黙れブヨブヨ」
「ぶっ、ブヨブヨ……こんな侮辱初めてアルヨ。ライカンこいつ殺せアルヨ」
「ワハッハッハー、アルヨってさぁ。スラリン、何だよその喋り方は? アッハッハッハッハー!!」
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