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第9話 それでも勇者は魔城を目指す!
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狼男と液状化女は『殺すアルヨ』とか言ってる割には全く殺意が感じられない。ソウルブレイカーが反応していないのだ。
「もう帰れよ、人間。俺たちはもうお前らには関わりたくないんだ。素直に村に戻って二度とここに来るな」
「魔王さまから城に近づく人間を絶対に殺さず、追い払う様に言われてるんだよねぇ。人間は一人殺すと十人、百人で襲って来るから面倒くさいんだよ」
「魔王……ギドラがそう言ってるのか?」
「ギドラ? 何それ、アッハハハハッー! ライカン、なんかこの子面白い。連れて帰っちゃ駄目かな?」
「駄目だ。人間をさらうとゴブリンやオーク共の様に人間共に皆殺しにされるぞ!」
「ちぇーっ!」
「お前ら、今まで会った魔族とはずいぶん違う感じだな」
ライカンとスラリンは眉根を寄せてこちらを睨むと、警戒心を顕にした。
「今まで会った魔族だと……貴様、そいつらをどうした!」
「全員殺した」
俺は出来るだけこのライカンと呼ばれる男を刺激する様に簡潔に、そして冷酷に答えた。
「奴らはバカだ。人間と闘えばそうなる事は分かっていたのに。人間は殺しても殺しても数を増やしまた襲って来る。もう数を増やす事が出来ない我々はいずれ滅ぼされる運命だ」
「数を増やす事が出来ない?」
俺の疑問にはこちらを警戒したままの液状化女スラリンが答えた。
「私達は魔物と交配を重ねる事で強い体や特殊な能力を得てきた。でもね、種を重ねる毎に生殖能力は落ちて行った。個体としての強さを得た私達は種としての強さを失ったのよ」
「だからゴブリンやオーク共は強引に人間に子供を産ませる事で……弱体化させる事で種を増やし守ろうとした。それが人間どもの反感を買った。奴らが滅ぼされたのは仕方がない事なのかも知れない。だがな人間、仲間を、種族を守ろうとした奴らを俺は責められない。そしてその生き残りを殺したお前を許す事は絶対出来ない!」
「ダメ、ライカン!」
スラリンの静止を振り切ったライカンは自らの右手を巨大化させ、その鋭く伸びた爪を俺に叩き付けた!
ソウルブレイカーとその鞘で攻撃を受けた俺だが、反動で吹き飛ばされ大木に叩き付けられた。口元に血を滲ませながら笑顔で俺は言う。
「憎悪と殺意を感知!」
俺はライカンの攻撃を受けながら、奴の手の平を小さくだが斬りつけていた。ライカンはその傷口から泡を生じさせながら徐々に体を萎しぼませて行く。
「何だ、こりゃ……」
「ライカン! 人間、貴様何をした!!」
泡となって溶けていくライカンを庇うように前に立ち塞がったスラリンは、体から球体状の液体を分離させ射出した。
俺は木立ちの中を全力で駆け抜ける。
スラリンから分離した球体は直線的に動いたかと思うと、急激に角度を変え俺を追って飛んできた。
ギリギリまで引き付けてからかわした球体は、すぐ後ろにあった太い木の幹を溶かしてなぎ倒す。
「クソッ! 当たったらただじゃ済まない!!」
木立ちの中をジグザグに走って球体をかわす勇者だが、球体は彼を追って飛んできた。
スラリンは、完全に泡となって消えたライカンから勇者へと視線を移し、叫びながらもう一つ球体を作り出し勇者へと向かって射出した。
「よくもライカンを殺したな、人間!!」
「殺意を感知!」
後方から飛来した最初の球体を前転しながら躱すと、膝を付いて体を起こそうとする俺に正面から二発目の球体が迫る。
俺はゆっくりとソウルブレイカーを構え、体を半身後方へズラすと真っ直ぐに剣を振り下ろす。真っ二つになった球体が俺の後方でべシャリと大地に落ちた。
「グハッッ!!」
少し離れた場所に立っていたスラリンが膝から崩れ落ち、球体と同じ様にべシャリと大地に崩れ落ちた。
「きさま……っ」
「お前が飛ばしたあの球体……アレお前の分身だな。だからお前の意思通り俺を追尾した。あの狼が死んだ時、俺はあの球体から【殺意】を感じた。魂で繋がっているなら本体でも分身でもどちらでも構わない。すぐに魔王もそちらに送ってやるよ」
俺の言葉と共に、空からは白い雪が舞い降り始めていた。
溶けていく液状化女の前に立つと、彼女は『フフフ……死ぬ時は一緒に言ったアルヨ……メリー、クリスマス、ライ……。』と言って少しだけ微笑むと、そのまま溶けて雪の様に消えた。
彼女が何故最後に微笑んだのかは、全く意味が分からない。だが……。
「この胸糞悪い想いもてめぇの予言の内かよ、ポー!!」
不愉快な想いとは裏腹に、笑顔で叫ぶ【勇者】20歳、一人ぼっちのクリスマス・イブだった。
「もう帰れよ、人間。俺たちはもうお前らには関わりたくないんだ。素直に村に戻って二度とここに来るな」
「魔王さまから城に近づく人間を絶対に殺さず、追い払う様に言われてるんだよねぇ。人間は一人殺すと十人、百人で襲って来るから面倒くさいんだよ」
「魔王……ギドラがそう言ってるのか?」
「ギドラ? 何それ、アッハハハハッー! ライカン、なんかこの子面白い。連れて帰っちゃ駄目かな?」
「駄目だ。人間をさらうとゴブリンやオーク共の様に人間共に皆殺しにされるぞ!」
「ちぇーっ!」
「お前ら、今まで会った魔族とはずいぶん違う感じだな」
ライカンとスラリンは眉根を寄せてこちらを睨むと、警戒心を顕にした。
「今まで会った魔族だと……貴様、そいつらをどうした!」
「全員殺した」
俺は出来るだけこのライカンと呼ばれる男を刺激する様に簡潔に、そして冷酷に答えた。
「奴らはバカだ。人間と闘えばそうなる事は分かっていたのに。人間は殺しても殺しても数を増やしまた襲って来る。もう数を増やす事が出来ない我々はいずれ滅ぼされる運命だ」
「数を増やす事が出来ない?」
俺の疑問にはこちらを警戒したままの液状化女スラリンが答えた。
「私達は魔物と交配を重ねる事で強い体や特殊な能力を得てきた。でもね、種を重ねる毎に生殖能力は落ちて行った。個体としての強さを得た私達は種としての強さを失ったのよ」
「だからゴブリンやオーク共は強引に人間に子供を産ませる事で……弱体化させる事で種を増やし守ろうとした。それが人間どもの反感を買った。奴らが滅ぼされたのは仕方がない事なのかも知れない。だがな人間、仲間を、種族を守ろうとした奴らを俺は責められない。そしてその生き残りを殺したお前を許す事は絶対出来ない!」
「ダメ、ライカン!」
スラリンの静止を振り切ったライカンは自らの右手を巨大化させ、その鋭く伸びた爪を俺に叩き付けた!
ソウルブレイカーとその鞘で攻撃を受けた俺だが、反動で吹き飛ばされ大木に叩き付けられた。口元に血を滲ませながら笑顔で俺は言う。
「憎悪と殺意を感知!」
俺はライカンの攻撃を受けながら、奴の手の平を小さくだが斬りつけていた。ライカンはその傷口から泡を生じさせながら徐々に体を萎しぼませて行く。
「何だ、こりゃ……」
「ライカン! 人間、貴様何をした!!」
泡となって溶けていくライカンを庇うように前に立ち塞がったスラリンは、体から球体状の液体を分離させ射出した。
俺は木立ちの中を全力で駆け抜ける。
スラリンから分離した球体は直線的に動いたかと思うと、急激に角度を変え俺を追って飛んできた。
ギリギリまで引き付けてからかわした球体は、すぐ後ろにあった太い木の幹を溶かしてなぎ倒す。
「クソッ! 当たったらただじゃ済まない!!」
木立ちの中をジグザグに走って球体をかわす勇者だが、球体は彼を追って飛んできた。
スラリンは、完全に泡となって消えたライカンから勇者へと視線を移し、叫びながらもう一つ球体を作り出し勇者へと向かって射出した。
「よくもライカンを殺したな、人間!!」
「殺意を感知!」
後方から飛来した最初の球体を前転しながら躱すと、膝を付いて体を起こそうとする俺に正面から二発目の球体が迫る。
俺はゆっくりとソウルブレイカーを構え、体を半身後方へズラすと真っ直ぐに剣を振り下ろす。真っ二つになった球体が俺の後方でべシャリと大地に落ちた。
「グハッッ!!」
少し離れた場所に立っていたスラリンが膝から崩れ落ち、球体と同じ様にべシャリと大地に崩れ落ちた。
「きさま……っ」
「お前が飛ばしたあの球体……アレお前の分身だな。だからお前の意思通り俺を追尾した。あの狼が死んだ時、俺はあの球体から【殺意】を感じた。魂で繋がっているなら本体でも分身でもどちらでも構わない。すぐに魔王もそちらに送ってやるよ」
俺の言葉と共に、空からは白い雪が舞い降り始めていた。
溶けていく液状化女の前に立つと、彼女は『フフフ……死ぬ時は一緒に言ったアルヨ……メリー、クリスマス、ライ……。』と言って少しだけ微笑むと、そのまま溶けて雪の様に消えた。
彼女が何故最後に微笑んだのかは、全く意味が分からない。だが……。
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