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第5話 ライカンスロープ
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何はともあれ、スライムを倒した俺たちは再び街道を歩き始めた。
「ケガはないか?」
「はい! マコト様が守ってくださったので大丈夫です!」
エリスは笑顔で答えた。
さっきスライムに溶かされた法衣ももう元通りだった。
さっきは気が気でなくなって考えなかったがこの法衣はかなりの防御アイテムな気がする。
魔法も物理攻撃も防げて、破損したら自動修復。この上ない防具だろう。さすがは聖女といったところなのか。生半可な装備をしてはいないのだ。
「あと丘ひとつで目的地か」
「そうですね。やはりモンスターは全然いません。さっきのスライムが唯一のモンスターだったようです」
あのスライム以降モンスターの気配は影も形もなかった。
「よほど強敵なのか」
「その可能性は高いと思います。ただ少しだけ強いモンスターがここまで周囲に影響を与えるとは思えませんから」
目的のモンスターはかなりの強敵なのか。
ずぶの素人の俺が果たして本当に戦えるのか。
急に怖くなってきた。戦えなくてエリスにもしものことがあったら。マザー・リースに顔向けできない。
スライムとの戦いを思い出せば俺の戦闘力はかなりのはずだが。
「マコト様は相当戦闘力の高い守護者様なんですね」
「そうなのか?」
「はい。守護者様にもいろいろな種別があるんです。直接戦闘が得意な守護者様、遠距離戦闘が得意な守護者様、戦闘はせずにサポートが得意な守護者様」
「そんなに色々あるのか」
「そうなんです。他にも近接型、秘蹟型、遠隔操作型、憑依型という区別。守護者様そのものの能力もパワー、防御力、動作、顕現範囲などがそれぞれランクで表されます」
ほぼス○ンドの説明みたいになってきたが俺は何も言わない。
「マコト様は近接型でその中でもパワーと動作性が抜きん出ているそうです。今の戦闘を見て私にもそれが感じられました。マコト様は本当にお強いです」
そして最後にエリスはそう言って嬉しそうに誇らしそうに笑った。
なんだ、照れる。
そんなにはっきり人に褒められるのなんていつ以来か。大人は誰にも褒めてもらえないのだから。
そして、エリスの言葉を聞くと俺の不安がじんわり和らいだのが分かった。
なるほど、聖女という名は伊達ではないのだろう。
こんなに人を元気付けれるのだから。
「エリスはいいやつだな」
「え? そそそ、そんな。マコト様に褒めていただけるような大した人間じゃないですよ! いつも失敗ばっかりだし、なんかマヌケだし」
「でも今は立派に聖女の役目を果たそうとしてるじゃないか」
「そ、それはそうなんですけど」
エリスは顔を真っ赤にしていた。
どうやらエリスの方も褒められるのに慣れていないらしい。
俺はほっこりしてつい微笑んでしまった。
「あ、あの! もうそろそろ砦の下ですよ」
「ん? いよいよか」
会話しながら歩いているといつの間にか目的の地点に辿り着いていたようだ。
俺は気を引き締める。自分の守護者としての力を信じろ。なにがなんでもエリスだけは守り抜く。
丘の上に朽ちた石造の砦が見える。あそこがライカンスロープの住処なのか。
「あの砦に潜んでいるならすぐにでも出てきそうなものですが」
「そうだな」
俺は目を細める。守護者の俺は異常に視力も良くなっていた。砦の壁に張り付いたツタの葉っぱを数えることさえできるほどだ。
軽く500mは離れていそうだが。
もはやコンタクトに頼る必要もない。毎月高い金を払う必要もない。もうそういう世界ではないから当たり前だが。
その視力を凝らして砦を見るがライカンスロープらしきものは確認できなかった。
動くものさえない。
「今はいないんでしょうか。狩りにでも出かけているとか?」
「ふぅむ」
そういうことなのか? モンスターの生態なんて分かるわけもない俺には判断出来かねた。
狩りに出ているということもあるのだろうか。モンスターも食うことは必要なのか。
しかし、なんだろうか。これも守護者の力なのか。なにかそうではない気がした。前の人生ではまったく感じたことのない『勘』としか言いようのない感覚がそう告げていた。
砦は静まり返っている。
俺とエリスはそれを警戒しながら伺っている。
その時だった。
「!!! エリス伏せろ!!!!」
俺は叫んでエリスの体を手で押さえて屈めさせた。
その瞬間、なにかが今エリスの頭があったところを、俺の霊体の中を通り過ぎていった。
「ひゃあっ!! マコト様なにが? っ! これは!」
すぐさまエリスは祈り、俺を顕現させる。
目の前にいたのは両足で立ち、刃物のような爪を地面に下げ刃物のような牙をむき出しにした二足歩行のオオカミ。ライカンスロープ。
白銀の毛並み。その目は血のように真っ赤に染まり、その胸には大きな剣でつけられたであろう傷がついていた。
「血染めの咆哮!!」
エリスは畏怖をこめて言った。
ライカンスロープは大きく遠吠えをした。地獄から響いているかのような濁った遠吠えだった。
「ケガはないか?」
「はい! マコト様が守ってくださったので大丈夫です!」
エリスは笑顔で答えた。
さっきスライムに溶かされた法衣ももう元通りだった。
さっきは気が気でなくなって考えなかったがこの法衣はかなりの防御アイテムな気がする。
魔法も物理攻撃も防げて、破損したら自動修復。この上ない防具だろう。さすがは聖女といったところなのか。生半可な装備をしてはいないのだ。
「あと丘ひとつで目的地か」
「そうですね。やはりモンスターは全然いません。さっきのスライムが唯一のモンスターだったようです」
あのスライム以降モンスターの気配は影も形もなかった。
「よほど強敵なのか」
「その可能性は高いと思います。ただ少しだけ強いモンスターがここまで周囲に影響を与えるとは思えませんから」
目的のモンスターはかなりの強敵なのか。
ずぶの素人の俺が果たして本当に戦えるのか。
急に怖くなってきた。戦えなくてエリスにもしものことがあったら。マザー・リースに顔向けできない。
スライムとの戦いを思い出せば俺の戦闘力はかなりのはずだが。
「マコト様は相当戦闘力の高い守護者様なんですね」
「そうなのか?」
「はい。守護者様にもいろいろな種別があるんです。直接戦闘が得意な守護者様、遠距離戦闘が得意な守護者様、戦闘はせずにサポートが得意な守護者様」
「そんなに色々あるのか」
「そうなんです。他にも近接型、秘蹟型、遠隔操作型、憑依型という区別。守護者様そのものの能力もパワー、防御力、動作、顕現範囲などがそれぞれランクで表されます」
ほぼス○ンドの説明みたいになってきたが俺は何も言わない。
「マコト様は近接型でその中でもパワーと動作性が抜きん出ているそうです。今の戦闘を見て私にもそれが感じられました。マコト様は本当にお強いです」
そして最後にエリスはそう言って嬉しそうに誇らしそうに笑った。
なんだ、照れる。
そんなにはっきり人に褒められるのなんていつ以来か。大人は誰にも褒めてもらえないのだから。
そして、エリスの言葉を聞くと俺の不安がじんわり和らいだのが分かった。
なるほど、聖女という名は伊達ではないのだろう。
こんなに人を元気付けれるのだから。
「エリスはいいやつだな」
「え? そそそ、そんな。マコト様に褒めていただけるような大した人間じゃないですよ! いつも失敗ばっかりだし、なんかマヌケだし」
「でも今は立派に聖女の役目を果たそうとしてるじゃないか」
「そ、それはそうなんですけど」
エリスは顔を真っ赤にしていた。
どうやらエリスの方も褒められるのに慣れていないらしい。
俺はほっこりしてつい微笑んでしまった。
「あ、あの! もうそろそろ砦の下ですよ」
「ん? いよいよか」
会話しながら歩いているといつの間にか目的の地点に辿り着いていたようだ。
俺は気を引き締める。自分の守護者としての力を信じろ。なにがなんでもエリスだけは守り抜く。
丘の上に朽ちた石造の砦が見える。あそこがライカンスロープの住処なのか。
「あの砦に潜んでいるならすぐにでも出てきそうなものですが」
「そうだな」
俺は目を細める。守護者の俺は異常に視力も良くなっていた。砦の壁に張り付いたツタの葉っぱを数えることさえできるほどだ。
軽く500mは離れていそうだが。
もはやコンタクトに頼る必要もない。毎月高い金を払う必要もない。もうそういう世界ではないから当たり前だが。
その視力を凝らして砦を見るがライカンスロープらしきものは確認できなかった。
動くものさえない。
「今はいないんでしょうか。狩りにでも出かけているとか?」
「ふぅむ」
そういうことなのか? モンスターの生態なんて分かるわけもない俺には判断出来かねた。
狩りに出ているということもあるのだろうか。モンスターも食うことは必要なのか。
しかし、なんだろうか。これも守護者の力なのか。なにかそうではない気がした。前の人生ではまったく感じたことのない『勘』としか言いようのない感覚がそう告げていた。
砦は静まり返っている。
俺とエリスはそれを警戒しながら伺っている。
その時だった。
「!!! エリス伏せろ!!!!」
俺は叫んでエリスの体を手で押さえて屈めさせた。
その瞬間、なにかが今エリスの頭があったところを、俺の霊体の中を通り過ぎていった。
「ひゃあっ!! マコト様なにが? っ! これは!」
すぐさまエリスは祈り、俺を顕現させる。
目の前にいたのは両足で立ち、刃物のような爪を地面に下げ刃物のような牙をむき出しにした二足歩行のオオカミ。ライカンスロープ。
白銀の毛並み。その目は血のように真っ赤に染まり、その胸には大きな剣でつけられたであろう傷がついていた。
「血染めの咆哮!!」
エリスは畏怖をこめて言った。
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