転生したら聖女の守護霊だった〜俺を精霊としか思ってない聖女の行動が危なっかしくて困る〜

かもめ

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第16話 休日の大都市『アイズ』

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 そして、翌朝。


「マコト様! 今日はよく晴れてますよ!」

「ああ、確かに日本晴れだ」


 大都市アイズの街は気持ちのいい晴れ空の下にあった。

 石造りの白い都市。

 休日の街は多くの人で賑わっている。

 行き交う人は肌の色も体の形も様々だ。

 ザ・ファンタジーといった感じの景色。RPGゲームを彷彿とさせる。


「ニホンバレ?」

「ん? ああ!? あ....せ、精霊の言葉だよ。こういう天気をニホンバレって言うんだ」

「す、すごい! 私、精霊の言葉って初めて聞きました!」

「ははは」


 エリスは目を輝かせているが真っ赤な嘘だった。心が痛む。

 気をつけなくては。俺とエリスは言葉は十分に通じているが、やはりこの世界にない表現というのはあるのだ。あんまり言って妙に思われても困る。


「それじゃあ、行きますよ! マコト様」

「ああ、よろしく頼む」


 そして、俺たちは街の雑踏に入っていった。

 昨日言った通りに、俺たちは休日を楽しむべく街に繰り出したのだ。

 たまの休日、こうして街で遊ぶ聖女も少なくないという。

 かくいうエリスも見習いのころから街ではよく遊んでいるのだそうだ。

 それはそうだ。ここはまさしくエリスが生まれ育った街。故郷と言って差し支えない。

 そして、エリスは自分が好きなそんな故郷をこうして俺に紹介してくれるのだ。


「すごい、いろんな人がいるな」

「はい! 本当にいろんな人が暮らしてるんです」


 俺の横を見たことのない大きなトカゲが通り過ぎていった。背中には小人らしき人が乗っていた。

 耳の生えた人や、ツノの生えた人。まさしく戦士といった人やまさしく魔法使いといった人。いろんな人が溢れかえっている。


「すごい人だ」


 地方都市で暮らしていた俺からすればこの量は半端じゃなかった。通りには地元の1番でかい祭りぐらい人が歩いている。

 文明的にはファンタジーだが、人の量だけで見れば東京とかと変わりないような気がした。


「大丈夫ですか? マコト様は人混みが苦手でしたか?」

「いや、慣れてないだけだ。問題ない」

「そうですか? 無理はなさらないでくださいね。そうだ、一本奥の通りに美味しい串焼き屋さんがあるんですよ! そっちに行ってみましょう」

「それは良さそうだな」


 そう言ってエリスは横道に入り、一本奥の通りに入った。表の大通りよりいくぶん人が少ない。やや落ち着いた雰囲気だった。

 エリスはその通りの一軒の店へ駆け寄る。

 俺でも分かるほど香ばしい肉の匂いが漂っていた。そして、ジュウジュウと肉の焼ける音。

 店先では漫画で見るようなでかい肉の塊が太い串に刺されて網の上で焼かれていた。


「いらっしゃい! お、なんだエリスちゃんか!」

「おじさんこんにちは。今日も元気そうですね!」

「エリスちゃんもね。そういえばおめでとう! 聖女になって大活躍したって言うじゃないか」

「おじさんも知ってるんですか!?」


 どうやら、エリスの活躍は広く知れ渡っているところらしい。そういえばマザー・リースがエリスの活躍が新聞の記事になったと言っていた。国の重要な聖職者である聖女は簡単には取材できないのでエリスがインタビューを受けたということはなかったが、記事は結構大きかったらしい。


「二つ名持ちモンスター討伐か! 歴戦の戦士みたいだね。常連さんが大活躍なんておじさん嬉しいよ」

「あ、ありがとうございます!」


 立派なツノが生えたおじさんはエリスに実に好意的だった。

 エリスがそれだけの人物で、それだけこの店を良く利用しているということなのだろう。


「今日もいつものだね。はい、どうぞ」

「わぁ! マダラジカのお肉。なんか大きくないですか?」

「サービスで大きいのだよ。お代も要らないから。おじさんからのお祝いだ」

「そ、そんな。良いんですか? ありがとうございます!」


 厚意は素直に受け取るエリスだった。

 肉に楽しそうにかぶりつくエリス。

 なんだか、教会の関係者以外とこんなに普通に関わっているエリスは新鮮だった。

 エリスにも当然今までの日常があったんだなぁ、などとしみじみ思う俺だ。


「あ!!」


 そんな風にしみじみしている俺を見てエリスが叫んだ。なにごとか。そんな変な顔をしていたか。


「これじゃあ、マコト様はなにも楽しくないですね」


 エリスは申し訳なさそうに言った。

 確かに、守護者の俺は人間の食事が取れない。

 食べる飲むの楽しみが失われたのは残念だったが、体が精霊になったからなのか喪失感のようなものはない。初めからそういうものだと体が受け入れている。

 だから、エリスが困ることはないのだが、


「おう、エリス。大活躍だっていうじゃねぇか」


 そんな俺たちに話しかけてくるものがあった。


「あ! ジョージ。お久しぶりです」


 そこに居たのは立派なトサカを頭に乗せたニワトリだった。

 二足歩行のニワトリ。しかし、きっちりとしたスーツを着込んでいる。

 獣人というやつだろうか。


「お前もこの店が好きだねぇ」


 そう言いながらジョージという獣人はキノコの串焼きを注文していた。まもなくマ○オに出てくるような大きなキノコが丸々串に刺さってジョージに手渡された。


「ジョージは教会騎士団の第6師団の副師団長なんです。昔からなにかと世話を焼いてくれて」

「ほほぉ」


 つまり昔馴染みというやつか。

 副師団長ということはよく分からないがそれなりの地位なのだろう。


「おっちょこちょいのお前が無事に一人前の聖女になったようで俺も嬉しいぞ」


 ジョージはキノコを食べながら言う。豪快にくちばしでむしり取っていた。


「もう、ジョージはすぐ茶化します」

「いや、これで本当に喜んでんだよ。シュレイグの任務にも参加するっていうじゃねぇか。大出世だな」

「ジョージも知ってるんですか!?」

「一応これでそれなりの立場だからな。騎士団からも人員が割かれるって聞いてる。俺は選ばれちゃいないがでかい任務みてぇだな」

「そうなんです! すごく名誉なことで。もう緊張してて」

「ははは、エリスらしいぜ。まぁ、最初から最前線に出るわけじゃねぇんだろうが。気楽にいけよ」

「はい...そう思うように頑張ります..」


 不安そうにしながらもエリスはジョージに心を開いているのが分かる。そもそも頑張り屋のエリスが不安を見せるというのがなにより打ち解けている証だろう。


「今日は休日ってわけか」

「そうなんです! マコト様、私の守護者様に街を見ていただきたくて! でも、マコト様はよく考えたら串焼きは食べれないんです」

「はははは! お前守護者様に串焼きおごろうとしたのか! ははは!」

「笑わないでください!」


 笑うな。エリスが必死に考えた休日プランなんだぞ。


「ははは、ひぃ...。悪い悪い。そうか、お前の守護者様はジゼル様以来の意思のある守護者様なんだったっか。今もそこにいるんだな」


 そういえば、ジョージに俺は見えていないのか。教会の人間は全員見えていたから馴染みのない感覚だ。


「なら、あそこ行けば良いんじゃないのか? 聖女が良く行くあそこ」

「あそこ?」

「なんだ知らねぇのか。仕方ない。案内してやるよ」


 なんだかよく分からないし信用出来ないし俺はエリスを笑うこのジョージに良い印象は今のところない。

 だが、エリスはまったくそんなことはないようだ。やはり昔からの仲なのだろう。

 『あそこ』へ案内するというジョージにエリスは黙って着いて行き、俺はそれに従うしかないのだった。
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