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第26話 残滓の探索
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『では、手筈通りに。みな心してかかれ』
遠話の法術で司教の言葉が飛ぶ。
聖女や騎士団員がいっせいに街を動いている。
ラキアがマッピングしたエンリケの反応の位置は手元の地図に記されていた。
俺たちは街の中心部。繁華街の中だった。
今、シュレイグの街すべてに教会から勧告が出ていて通りに人はいなかった。
「こんな繁華街に潜伏してるのかな」
「普通なら人混みに身を隠しやすいとも考えれそうですけど、今は人がいませんしね」
人のいない大通り。ファンタジーな光景なのに殺風景だ。まるでテスト版のRPGのマップだ。
「とにかく、確認しないことには始まりません」
「ああ」
俺たちは印の示された場所。繁華街の一軒の家屋に向かう。
どうやら最初と同じで空き家のようだ。
俺たちはドアの前で一旦止まる。
「気配とかわかるか?」
「すいません、マコト様。私そういう感覚的なのはからきしなんです」
「そうだったな」
訓練でエリスが感覚派より理屈派なのは分かっていた。
守護者としての俺の勘もこれといって働かない。
やはり、入って確かめるしかないのか。
「入ります」
「それしかないよな」
エリスは意を決してドアを押した。
キィ、と軋んだ音を立ててドアは開く。
中は薄暗かった。ランプはないし、明かり取りの窓もない。
長く放置されているのか家具やゴミが散らかり荒れ放題だ。
「影だらけだな」
「.....はい」
部屋の中は物陰だらけだった。
すなわち、エンリケの能力なら潜み放題だということだ。
俺たちは物音や動くものがないか、薄闇の中に目を凝らしながら家の中を進んでいく。
「なにも居ないのか?」
「どうでしょうか」
空き家は二階建てだった。
俺たちは一階を回り終えると2階へ向かった。
エンリケもいないが、守護者の残滓とやらもない。
まだ探索を終えるわけにはいかない。
緊張がずっと続くのは守護者の俺でもなかなかにしんどかった。
人間のエリスはなおのことだろう。
エリスの額にはじっとりと汗が滲んでいた。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。このくらいはなんともありません」
エリスは微笑んだが強がりなのは明らかだ。だが、その強がりは大事なものだろう。俺はそれについては何も言わない。
軋む階段を登ると2階は一間だった。どうやら2階は丸々物置のようだった。
板が貼られた窓から光が漏れて、部屋の中がぼんやり照らされている。
そこに、
「あれは....」
黒いもやのようなものがユラユラ揺れていた。
それは倒れた化粧台の影から立ち上っている。
俺たちはそこに歩み寄る。
「これが残滓ってやつか」
「そのようです。ここはハズレですね」
影から立ち上るモヤ。これがエンリケの守護者の残滓というやつのようだった。
「ウラァッ!」
俺はその影に拳を叩きつける。すると残滓は消えて、地図からマーキングも消えた。これでひとつハズレを潰せたわけだ。
どうでも良いが、この程度のアクションでも「ウラァ」と言うようになってきている。女神の設定というよりもはや口グセになっている気がする。正直治したい。
と、その時だった。
『リバイス、西側でエンリケに遭遇しました! 援護をお願いします! 繰り返します!』
遠話の法術から声が鳴り響く。他を探索していた騎士団員がエンリケに遭遇したのだ。
「マコト様!」
「ああ、行こう」
俺たちは急いで外に出る。
間に合うかは分からないが現場に向かわなくてはならない。
「なんだありゃあ!?」
しかし、俺はそれより先に驚愕した。
空に大きな光の輪が浮いているのだ。さながら天使の輪のような。
そして、その輪は光り輝き、そこから一筋の光の矢が放たれた。一筋と言ってもかなり巨大だが。
「あれが、アルメア様の『槍』です。アルトリウス様の遠距離攻撃ですね」
「なんでもありかよ」
そして、光の槍は遠話の元である西側の方へ着弾した。西側が光り輝いている。
なるほど、いざエンリケに会っても1人で本当に大丈夫なのかという心配があったがこれなら問題ないのだろう。
これに加えて、イザベラたちの遠距離の援護もあるのだ。
『すいません! アルメア様の槍の着弾とともにエンリケが逃走! 見失いました!』
再び遠話が聞こえる。
どうやらエンリケは逃げ出したらしい。
あの逃走速度だと1人では難しいのだろう。
これといった報告もなかったところを見ると人質も無事のようだ。
アルトリウスは攻撃対象のみに攻撃できるちかいうチートなので問題なかったのだろう。
「逃げたのか」
「捕まった方は無事でしょうか」
「報告になかったから大丈夫だろう。いざとなったら交渉しようとするだろうし、簡単に殺したりはしないと思うぞ」
「それならよかった」
エリスの心配は人質に注がれているらしかった。
エリスは優しいやつである。
「しかし、これでまた探し直しか」
「悔しいですが、こうやって地道に追い詰めるしかないんでしょうね」
「そうなんだろうな」
残滓はおそらくエンリケが事前に用意していたものだという。増やせてもそう多くはない。こっちが残滓を潰す速度の方が速いはずだった。だから、地道にひとつずつ潰していけばいつかは必ず追い詰められる。
「我慢比べだな」
「はい、本当にそのようですね」
俺たちがエンリケを見つけるのが先か、エンリケが痺れを切らして飛び出すのが先か。
長い1日になりそうだった。
遠話の法術で司教の言葉が飛ぶ。
聖女や騎士団員がいっせいに街を動いている。
ラキアがマッピングしたエンリケの反応の位置は手元の地図に記されていた。
俺たちは街の中心部。繁華街の中だった。
今、シュレイグの街すべてに教会から勧告が出ていて通りに人はいなかった。
「こんな繁華街に潜伏してるのかな」
「普通なら人混みに身を隠しやすいとも考えれそうですけど、今は人がいませんしね」
人のいない大通り。ファンタジーな光景なのに殺風景だ。まるでテスト版のRPGのマップだ。
「とにかく、確認しないことには始まりません」
「ああ」
俺たちは印の示された場所。繁華街の一軒の家屋に向かう。
どうやら最初と同じで空き家のようだ。
俺たちはドアの前で一旦止まる。
「気配とかわかるか?」
「すいません、マコト様。私そういう感覚的なのはからきしなんです」
「そうだったな」
訓練でエリスが感覚派より理屈派なのは分かっていた。
守護者としての俺の勘もこれといって働かない。
やはり、入って確かめるしかないのか。
「入ります」
「それしかないよな」
エリスは意を決してドアを押した。
キィ、と軋んだ音を立ててドアは開く。
中は薄暗かった。ランプはないし、明かり取りの窓もない。
長く放置されているのか家具やゴミが散らかり荒れ放題だ。
「影だらけだな」
「.....はい」
部屋の中は物陰だらけだった。
すなわち、エンリケの能力なら潜み放題だということだ。
俺たちは物音や動くものがないか、薄闇の中に目を凝らしながら家の中を進んでいく。
「なにも居ないのか?」
「どうでしょうか」
空き家は二階建てだった。
俺たちは一階を回り終えると2階へ向かった。
エンリケもいないが、守護者の残滓とやらもない。
まだ探索を終えるわけにはいかない。
緊張がずっと続くのは守護者の俺でもなかなかにしんどかった。
人間のエリスはなおのことだろう。
エリスの額にはじっとりと汗が滲んでいた。
「大丈夫か?」
「大丈夫です。このくらいはなんともありません」
エリスは微笑んだが強がりなのは明らかだ。だが、その強がりは大事なものだろう。俺はそれについては何も言わない。
軋む階段を登ると2階は一間だった。どうやら2階は丸々物置のようだった。
板が貼られた窓から光が漏れて、部屋の中がぼんやり照らされている。
そこに、
「あれは....」
黒いもやのようなものがユラユラ揺れていた。
それは倒れた化粧台の影から立ち上っている。
俺たちはそこに歩み寄る。
「これが残滓ってやつか」
「そのようです。ここはハズレですね」
影から立ち上るモヤ。これがエンリケの守護者の残滓というやつのようだった。
「ウラァッ!」
俺はその影に拳を叩きつける。すると残滓は消えて、地図からマーキングも消えた。これでひとつハズレを潰せたわけだ。
どうでも良いが、この程度のアクションでも「ウラァ」と言うようになってきている。女神の設定というよりもはや口グセになっている気がする。正直治したい。
と、その時だった。
『リバイス、西側でエンリケに遭遇しました! 援護をお願いします! 繰り返します!』
遠話の法術から声が鳴り響く。他を探索していた騎士団員がエンリケに遭遇したのだ。
「マコト様!」
「ああ、行こう」
俺たちは急いで外に出る。
間に合うかは分からないが現場に向かわなくてはならない。
「なんだありゃあ!?」
しかし、俺はそれより先に驚愕した。
空に大きな光の輪が浮いているのだ。さながら天使の輪のような。
そして、その輪は光り輝き、そこから一筋の光の矢が放たれた。一筋と言ってもかなり巨大だが。
「あれが、アルメア様の『槍』です。アルトリウス様の遠距離攻撃ですね」
「なんでもありかよ」
そして、光の槍は遠話の元である西側の方へ着弾した。西側が光り輝いている。
なるほど、いざエンリケに会っても1人で本当に大丈夫なのかという心配があったがこれなら問題ないのだろう。
これに加えて、イザベラたちの遠距離の援護もあるのだ。
『すいません! アルメア様の槍の着弾とともにエンリケが逃走! 見失いました!』
再び遠話が聞こえる。
どうやらエンリケは逃げ出したらしい。
あの逃走速度だと1人では難しいのだろう。
これといった報告もなかったところを見ると人質も無事のようだ。
アルトリウスは攻撃対象のみに攻撃できるちかいうチートなので問題なかったのだろう。
「逃げたのか」
「捕まった方は無事でしょうか」
「報告になかったから大丈夫だろう。いざとなったら交渉しようとするだろうし、簡単に殺したりはしないと思うぞ」
「それならよかった」
エリスの心配は人質に注がれているらしかった。
エリスは優しいやつである。
「しかし、これでまた探し直しか」
「悔しいですが、こうやって地道に追い詰めるしかないんでしょうね」
「そうなんだろうな」
残滓はおそらくエンリケが事前に用意していたものだという。増やせてもそう多くはない。こっちが残滓を潰す速度の方が速いはずだった。だから、地道にひとつずつ潰していけばいつかは必ず追い詰められる。
「我慢比べだな」
「はい、本当にそのようですね」
俺たちがエンリケを見つけるのが先か、エンリケが痺れを切らして飛び出すのが先か。
長い1日になりそうだった。
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