異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

文字の大きさ

大中小

16 / 529

第2章竜の暮らし篇

第15話陽の光亭

しおりを挟む

　「ペット？俺が？」

　「は、はい。正確にはテイムしたことにするんです。テイムしたモンスターならば街になんの問題もなく入れます。リュートさんが嫌ならばもちろん辞めますが」

　なるほど。その手があったか。しかしペットか…クリアが飼い主…案外悪くないかもしれないな。逆に美少女に飼われるとかある意味ご褒美じゃないのか。竜生活もまだ数日しか経ってないが、人とふれあいたいのも事実だ。この世界の人たちの生活について俺はあまり知らない。これはいい機会なのではないのだろうか。

　「よし。わかった。それでいこう」

　「えっ？いいんですか？」

　「俺はクリアになら飼われてもいいさ」

　これが人間の姿だったらとんでもない変態発言だが、今はドラゴンだからなんの問題も無いはずだ。

　「わかりました。リュートさんが望むなら」

　こうして俺たちは、遺跡の近くにある国にやってきた。ムガ王国と言うらしい。しかしこのまま行って大丈夫なのだろうか。傍から見たら身元もよくわからない美少女(亜人)が、強そうなドラゴンを引き連れているとか、怪しいにも程がある。

　少し不安に思いながら、街の入口の門までやってきた。

　「君は？」

　門番が聞く。

　「私はこのドラゴンと一緒に旅をしているものです。彼はテイムしているので安心してください」

　と言いつつ明らかに怪しいと思うのだが。

　「なるほどわかりました。街の中でモンスターが暴れると、飼い主が責任を負いますので気をつけてください。ようこそムガ王国へ」

　えー！あっさり入れた。

　「大丈夫でしたね」

　「結構あっさり入れるんだな」

　「まぁ男性がお相手でしたらちょちょいと」

　これは魅了使ったな。クリア、恐ろしい子。まぁたしかに男ならこんな美人を追い返したりはしないか。

　「まずは宿を探しましょう」

　「わかった」

　ここでこの世界のお金について説明しよう。この世界のお金は全て硬貨になっている。価値が低い順に銅貨→銀貨→金貨→大金貨→金板となっている。銅貨は1枚10円くらいの価値で、銀貨は100円くらい、金貨は1000円くらいの価値があり、大金貨は1万円くらい、金板は100万円位の価値がある。

　ダンジョン内を探索していると、宝箱を発見することがある。中にはお金が入っていたり、貴重なものが入っていたり、宝箱自体がトラップだったりする。神眼があるのでトラップを識別できるので、トラップ以外を回収してきた。そして俺の次元操作がアイテムボックス的な役割をはたしてくれるので、モンスターの素材や、お宝などをたくさん所持している。実は今の俺たちはわりとお金持ちだったりする。

　「せっかくだから広いところを頼むよ。俺が入れるくらいの所をさ」

　「探してみますね」

　ムガ王国は割と大きいところだ、中央には王城があり、その周りは貴族達の屋敷、さらにその周りは高級住宅街となっている。中央に行けば行くほど高級になっていく。今、俺達がいるのがいわゆる普通の住宅街だろう。住宅街と言っても店などはある。
　しばらく何も食べていないので、腹が減った。

　「クリア。なんか食べていかないか？」

　「わかりました。あそこなんていいんじゃないですか」

　そこは「陽の光亭」というお店で、いい感じの雰囲気があり良い店だ。外にも席があるのでそこなら俺も食事ができそうだ。今は恐らく14時過ぎくらいなので、空いている。

　「いらっしゃい」

　店の中から優しそうなおばちゃんが出てきた。

　「旅の人かい？こんな東の端の国までよく来たね。あたしの店でよければ食べてってちょうだい」

　「ありがとうございます私はこのおすすめを」

　「俺が食べられそうなものはあるか？」

　ドラゴンの体なので何が食べられるかわからない。耐性があるので恐らくなんでも食べられるが。

　「へぇー。喋るドラゴンかい珍しいね。お姉さんかなり珍しいモンスターを連れているんだね。」
　
　「私の自慢の竜です」

　そう言われると照れるな。

　「じゃあドラゴンさんには別のを用意するよ。ちょっと待ってておくれ」

　しばらくすると、クリアの頼んだパスタが出てきた。クリアは頼んだパスタを食べ始めた。

　「美味しいです！私、人間の料理初めて食べたんですけど、こんなに美味しいなんて」

　クリアは竜なのでまともな料理を食べるのは初めてだろう。

　俺の前には巨大なステーキが出てきた。

　「美味そうだ！いただきます」

　「なんですか？その掛け声」

　クリアは不思議そうにしていた。前の世界のあいさつみたいなもので、こちらの世界にはない文化なのだろう。

　ステーキにかぶりつく。まともな食事をしたのが久しぶりなのでとても美味しく感じた。大満足の食事となった。

　「わぁカッコイイ！ドラゴンがいるよ！」

　「凄い！本物だ」

　何やら子供たちが集まってきた。俺の体をぺたぺた触っている。

　「すまないね。あたしの息子たちだ。喋るドラゴンなんて珍しいから気になって仕方なかったんだろう」

　「いや構わないさ」

　こうして俺たちは、しばらく平和な時間を過ごした。

しおりを挟む