異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第4章 竜人の試練篇

第42話 サレナの試練

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 私はさっきまでリュート様たちと一緒にいたはずだ。なのに、私なぜここに一人でいるのだろうか。

 何があったのかを思い出す。私たちが、ボス部屋に入った所までは確実に覚えている。入った後何かが聞こえて、私はここに飛ばされた。

 脳内アナウンスが私の置かれた状況を説明する。なるほど。私たちは全員バラバラになり、合流する為には20階層にいるボスを倒さなくてはならないようだ。

 私、一人で?私は一人きりになると、あの日のことを思い出す。両親が一つ目の巨人に殺され、私一人が取り残されたあの日を。

 怖い。私は誰かに依存しないと、生きていけないようだ。リュート様やクリア様、ミラ様にルージュ様。私の心の支えとなっていた仲間たちがいないこの状況で、私はまともに戦えるのだろうか。いや、戦うしかない。自分を奮い立たせる。

 「さぁ行きますわ!」

 20階層に向けて歩き出した。モンスターが現れる。普段の私なら難なく倒せるのだろうが、少し苦戦してしまった。このままではダメだ。たとえボスまでたどり着いても、そのボスに負けてしまう。

 少しずつ一人でも戦えるようになってきた。この一人の時間は、自分の弱さを捨てるためにきっと役立つと信じてがむしゃらに進んだ。

 少し時間がかかったが、何とか20階層までたどり着いた。

 息を整え、装備を確認し、ボス部屋に足を踏み入れる。

 そこには自分が現れた。なるほど、そういう敵ですか。腕がなりますわ。

 「行きますわ!」

 剣を抜いて、切りかかる。見事に弾き返される。

 「私の剣を?強さまで同じですの?」

 ガキン!ガキン!と剣がぶつかり合う。

 「はぁはぁ…」 

 数時間お互い一歩も引かずに剣を振るい合う。止まらぬ連撃に息が上がってくる。こっちは息が上がっているのに向こうは何も変化がない。長期戦は不利だ。一気に決めなくては。

 そんなことを考えていると、相手が視界から消えた。

 「どこですの?」

 私はすぐに居場所がわかった。しかし、気づいた頃には遅かった。上空から重力を利用した重い一撃が来る。咄嗟に剣で塞ぐが衝撃で手が痺れ、剣が弾かれる。その一瞬の隙を敵は見逃さなかった。顔を目がけて刺突してくる。

 「つっ!」

 久しぶりの痛み。間一髪で回避したが、右頬にかすった。だが、まだこのくらいで諦らめる訳にはいかない。

 「このくらいなんてことないですわ!」

 再び剣を握り直し、向き直る。相手も剣を構えて、間合いを取る。

 恐らく体力的にも精神的にも、私が放てる技は一回。次の一撃で決めなければならない。

 精神を統一させる。私なら出来るはずだ。そのためにリュート様に鍛えてもらったのだから。あれから更に私も強くなった。私は両親の仇を取るまで。そして、

 「リュート様と一緒にいるために!」

 もう一人の私が一瞬で間合いを詰める。とてつもないスピードが乗った剣は回避不能の剣技といえた。

 ズバッ!もう一人の私の剣が何かを切り裂いた。その目に映ったのは長い金髪だった。

 「貰いましたわ!」

 一瞬の剣技には一瞬の回避。私は咄嗟に下に避けた。空中に残った髪が切り裂かれた。だが、これで決まる。相手の剣を振りかざした手を切り落とす。そして、

 「白き乙女の心ホワイト・ハート!」

 音速を超えた剣が振りかざされる。敵は唖然としている。

 「私はまだ戦い続けますわ」

 剣をしまうと同時に、もう一人の私が真っ二つに切り裂かれた。

 「皆様も頑張ってくださいませ」

 こうして私は戦いに勝利した。
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