異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第9章 魔族襲来篇

第101話 凱旋

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 ムガ王国に戻る途中に兵士たちを発見した。どうやら魔族たちと戦うために配備されていたようだ。

 「リュート殿!ご無事ですか?」

 前線にいたカーブに声をかけられる。一応ローザはフード付きのローブを着ているので、魔族だとバレることは無いだろう。

 「あぁ無事だ。魔族なら俺たちが撃退した」

 「あの魔族をですか!流石はリュート殿だ。勇者になられただけはある」

 「今は進化して大勇者だけどな」

 「なんと!リュート殿は大勇者になられましたか!確かに体が大きくなっていますね。大勇者は勇者の中でも優れたものしかなれない非常に珍しい職業です。この世界の今までの累計でも、一桁代しか存在を確認されていません」

 そんなに珍しい職業だったのか。あっさりなってしまったので、あまり実感はない。

 「それより魔族は撃退されたのです。勇者殿の凱旋です。ぜひそのまま王城にお向い下さい」

 王に言いたいこともあったので、そのままムガ王国に入ると、国民たちが俺たちを出迎える。

 「流石は勇者様だ!」

 「やはり、リュートさんは只者じゃなかった!」

 「私たちを助けてくれてありがとう!勇者様!」

 国中から歓喜や感謝の声が上がる。こういう経験は初めてなので、少し照れくさかった。

 王城に着き、王の間に通される。いつものように、ムガ王が玉座に座って待っていた。

 「久しぶりだなリュート。しばらく見ないうちにまた大きくなったな」

 「まぁ色々あったからな」

 「魔族を撃退してくれたようだね。他の国を代表して、私から礼を言わせてくれ。本当に感謝する」

 「いや、いいさ。俺も征服されるのが癪だっただけさ。それから王にひとつ言いたいことがある」

 「何だ?」

 「魔族にも良い奴はいる。全てが全て悪いやつじゃない。俺は魔族と人間の関係を良くしたいと考えている。魔族とは戦うだけじゃなく、話し合いも出来る可能性もあるんだ。だから、もし、魔族が和平交渉をしてきたら、協力してくれないか」

 王の間にいた兵士たちがざわめく。

 「そんな魔族がほんとに居るのか…」

 「俺たちに魔族を許せと仰るのか」

 まぁこうなることは想定済みだ。だが、魔族に良い奴がいるのは事実だ。

 「ローザ?」

 ローザを呼ぶ。ローザと事前に打ち合わせはしておいた。

 「彼女は魔族だ」

 ローザのフードを脱がすと、角が顕になる。

 「ローザは魔族に蔑まれ、人間界に逃げ込んできた。ローザは何も悪くない。悪いのは弱者を悪と蔑む現魔王の体制だ。だから、魔族も悪いやつだけじゃないことをわかってくれ」

 ムガ王がローザを見る。

 「確かに私たちは過去、魔族に侵略された。だが、彼女のような魔族もいることがわかったのならば、魔族との関係も変えられるかもしれないな…よし、私も協力する。話し合いに応じるという魔族はムガ王国への入国を許可する。時間はかかるかもしれないが、国民もわかってくれるだろう」

 こうしてムガ王国は初めての魔族非差別国家となった。これで、戦う以外にも方法があることを他の国にも知って貰えるだろう。

 そして、それでも征服してくる魔族は徹底的に潰す。そうすればいつかこの世界も平和になるだろう。

 俺たち五人は家に帰るのだった。
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