異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

文字の大きさ
129 / 529
外伝 新米転移者の異世界生活1

その5 嫁ができた件

しおりを挟む
 次の日になり、ギルドに向かう。既にエストは、待っていた。

 「ごめん!待たせちゃったみたいだね」

 「いえ!今来たばかりですから、大丈夫ですよ」 

 だいぶ早めに出たつもりだったんだけどな…。待たせてしまったものは仕方ない。その分クエストで挽回しよう。

 クエストの依頼が貼ってある掲示板へ向かう。

 「それで、最初はどのクエストを受けるんだい?」

 「そうですね…これなんてどうでしょう」

 エストが選んだクエストは上薬草の採取というものだ。初心者でも比較的安全にクリア出来るものだろう。

 「了解。じゃあ行こうか」

 「はい」

 薬草が生えているという場所までやってきた。

 「似たような草が沢山生えてますね…」

 確かに、これではどれが雑草か見分けがつかない。だが、俺には鑑定がある。

 「エストさん。ここは俺に任せて」

 鑑定で薬草のみを正確に採取する。

 「わぁ凄いですね。カナトさん」

 「まぁそう言うスキルを持ってるからね」

 あっという間に必要量の薬草が集まった。

 「私だけだったらもっと時間がかかってました。カナトさんが居てくれてほんとに良かったです」

 「まだ時間もあるし、もう1つくらいクエスト受けようか」

 「そうですね」

 街に帰ろうとしたその時、奥の草むらがガサガサと揺れた。そこから、巨大な熊のようなモンスターが現れる。

 「ぶ、ブラッドベアー!なんでこんな所に!カナトさん逃げましょう!」

 血熊(ブラッドベアー)は非常に強力なモンスターだ。激しい攻撃で相手の血が付着することからその名がついた。昨日冒険者になりたての新人ではまず勝てない。だが、俺は逃げない。というか逃げられない。コイツは思った以上に素早い。この距離まで接近されたらまず逃げられない。だから、ここで倒す。

 「もう逃げられないよエストさん。だからこれ付けて離れてて」

 俺は腕輪をエストに装備させる。

 「でもそれじゃあカナトさんが…」

 「大丈夫!俺を信じて。こいつは俺が倒す。そして、俺が絶対君を守るから」

 「カナトさん…わかりました。無茶はしないでくださいね」

 エストが離れていく。もちろん腕輪の効果でクマには気づかれない。

 さて、女の子の前だから大見得切ったが、何も策がない。

 「グオォォォォォォ!」

 血熊が鋭利な爪で切り裂いてくる。避けようとしたが、思った以上に速い。避けなれないと思ったが、攻撃は当たらなかった。草陰から出てきた血熊は、足に蔦が絡みついていて、動けなくなっていた。

 ラッキー。流石強運。今度はこっちの番だ!

 「喰らえ!」

 剣の振り方などもよくわからないので適当に振りかざす。

 ズバッ!なんの抵抗もなく、血熊の頭が飛び、血熊は動かなくなった。えー!想像以上に弱い。


 「カナトさん、凄い…」

 この人は血熊を一撃で仕留めた。しかも私を庇いながら。かっこいい。私が見てきた男の人の中で一番かっこいい。爽やかな笑顔、優しくて温かい心。この人になら私は…


 それにしても不思議な感触だった。この剣からは想像つかないような威力が出たのだ。これがクリティカル攻撃か?だとしたらあの威力も納得出来る。

 「大丈夫?エストさん」

 なんかエストの顔が赤いような気がする。

 「は、はい。カナトさんは?」

 「全然大丈夫さ。それよりこいつの素材とか高く売れるかな?」

 「そうですね。街の素材屋に売れば換金してくれると思います」

 「とりあえず収納袋に入れておこう」

 熊の死体がすっぽりと袋に入る。なのに重さや大きさは変わらない。便利だ。

 「さて、街に戻ろうか」

 エストの方をむくと何か言いたげだ。俺も神妙な面持ちで聞く。

 「どうしたのエストさん?」

 「カナトさん。わ、私と…」

 「私とずっとパーティを組んでいただけませんか?私はあなたのことがもっと知りたいんです。だから、私をあなたの隣に居させて下さい」

 エストが顔を真っ赤にして言う。こんな可愛い女の子に告白されては断れない。

 「それはプロポーズと言うことでいいのかい?」 

 「えっと…まぁそうなりますかね…私ったら勢いでなんてことを…」

 エストが真っ赤になる。

 「ご、ごめんなさい。忘れてくださ…」

 「いいよ」

 「えっ?」

 「俺も可愛いエストのこと知りたいし、このままずっと一緒に暮らそう」 

 「い、いいんですか?」

 「あぁ。大事にするよエスト」

 「う、嬉しいです。よろしくお願いしますカナトさん」

 こうして、エストとの実質的婚約が交わされたのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

処理中です...