異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第10章 それぞれの修行篇

第118話 神芝居

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 「何故お前がここにいる?先程私が殺したはずだが?」

 「この程度の幻術も破れないとは…聞いて呆れる」

 「幻術だと?」

 そう。俺は戦闘が始まった時、既に夢幻を発動させていた。夢の中で、グリットは好き放題やり、気持ちよくなったところで解除した訳だ。

 「ば、馬鹿な!神に幻術が効くだと?ありえない!」

 大量の砂で、俺の体を掴もうとしてくる。

 「その攻撃はもう超越感覚トランセンデンスセンスで見た。喰らえ!海神ポセイドン!」

 大量の砂には大量の水だ。砂の弱点は水だろう。水で砂はあっさり固まり動かなくなる。

 「なんだと…そんな馬鹿な!私は神だぞ!こんな人間風情に!」

 「俺をただの人間と思ったのがお前の敗因だ」

 「認めない!人間が神を越えるなど!」

 新たに砂を放出し、竜巻のように俺を包む。

 「どうだ!これが、私の最大の魔法砂神巻サンドスクロールだ!これをくらって生きたものはいない!砂の弾丸の雨にその身を晒すがいい!」

 体の周りの竜巻から、1センチ程の砂の塊が射出される。それは次第に数を増やしていき、竜巻の中は無数の弾丸が飛び交っている。だが、俺には効かない。

 「変身トランスフォーム・オリジン」

 いつぞやの黒装甲で全身を覆う。こんな砂玉じゃ傷一つつかない。前より俺がパワーアップして鎧の性能も上がったからだ。
 激しい弾丸の雨は次第に止み、竜巻も消えた。

 「はぁはぁ…どうだ!私の最大の魔法は!」

 グリットは砂煙の中に佇む一人の影を見つけてしまった。砂煙が晴れ、そこには全身に鎧を纏った男が無傷で立っていた。

 「この程度とは、神も大したことないな」

 「貴様!どんなトリックを…私の砂弾丸の雨をしのげるわけが無い!」

 「まだ俺の実力を認めないのか?」

 「断じて認めるものか!」

 もう余興は十分だろう。そろそろ、本気を出そう。

 「じゃあ絶望をくれてやる。お前かみにできて俺にできないわけがないからな!」

 先程グリットがやったように、自分の世界をこの世界に写しだす。そう、神域だ。

 「竜次元ディメンションオブドラン

 世界が一瞬で変わる。周りには高層ビルが立ち並び、道路が引いてある。その姿は紛れもなく日本の大都市だ。だが、人は一人もおらず、無人だ。車も走っていない。俺とグリットが、道路の真ん中にぽつんと立っている。

 「な、なんだこの世界は!」

 「神すら知らない世界があるという事だ。しっかり覚えとけ!」

 砂がないこの世界ではグリットは分身を作れない。トドメと行こう。

 「次元操作・凍結バン

 世界の時が止まる。

 「付与エンチャント・次元」

 神刀・夢幻白夜の刀身が黒く染まる。そのまま、グリットの腹に刀を突き刺し、引き抜く。刺された傷口は黒い穴になっている。

 「次元操作・解凍メルト

 時が動き出す。それと同時にこの空間が、全て、グリットの腹の穴に吸い寄せられていく。

 「何をした!やめろ!神を殺すと言うのか!」

 「喧嘩ふっかけて来たのはそっちだ。四の五の言われる筋合いはない。じゃあな神」

 「クソぉぉぉ人間風情がぁぁぁぁぁぁ!」

 グリットは空間ごと次元の狭間に消えた。

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