異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第12章 反撃の狼煙篇

第140話 勝利、そして…

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 リュートの一撃によって、魔王は消えた。それにより澱んでいた空は晴れ、陽の光が大地に降り注ぐ。

 「勝ったぞ…みんな…」

 世界中は歓喜の渦に包まれた。誰もが人類の勝利を喜びあった。だが、犠牲は大きいものだった。人口は三国合わせて1/4に減少した。そして何より太陽が百年近く塞がれていたため、大地が荒れた。草木が枯れ、いくつもの生物が死に絶えた。
 
 みんなの元へ帰宅する。

 「ありがとうリュート。魔王を倒してくれて」

 「流石はリュートだ」

 「リュートさんは世界を救った英雄ですよ!」

 「これからが人類の頑張りどころね」

 いつもなら聞えてくるはずの声が1人足りない。時間というものは残酷だ。益々自分の無力さが恨めしい。

 「くそ!俺がもっとしっかりしてればこんなことには…」

 その時、体内から熱いエネルギーを感じた。

 「竜玉か?」

 体内から竜玉を取り出す。竜玉は眩い光を放ち点滅していた。

 「この力は…」

 竜玉に触れる。その瞬間、頭に情報が流れ込んでくる。

 竜玉には過去の記録と大量の魔力が詰まっていた。百年の眠りの間に竜玉が蓄えたものだろう。この力を使えば、過去に戻って歴史をやり直せるかもしれない。

 しかし、発動するにはまだ魔力が足りないようだ。

 「リュート!」

 気がつくとみんなが竜玉を囲むように集まっていた。

 「私にも伝わったよ。その玉の力が!」

 「あぁ。私にもだ」

 「リュートさん。サレナさんの為にもその力を使って下さい!」

 「足りない魔力は私たちでカバーするわ!」

 全員が竜玉に触れる。

 「うぅぅぅぅぅぅ!」

 竜玉がみんなの魔力を、吸収していく。みんなは苦しそうにしている。

 「みんな!無理をしないでくれ!」

 「いいの!私たちの力でこの歴史が変わるなら!」

 「そうだ!私たちの犠牲なんて小さいものだ!」

 「リュートさんは今以上の人たちを救ってください!」

 「魔力ならたっぷりあるよ!」

 みんなの体が白い光に包まれる。しばらくすると、みんなの体が薄くなっていくのがわかった。

 「やめてくれ!みんな消えるぞ!」

 「リュート!私たちの分まで生きて、世界を救って!」

 光が濃くなると、四人は竜玉の中に溶けるように消えた。

 急な別れに涙が止まらなかった。こんなに悲しみが溢れたのは生まれて初めての体験だった。

 「みんな…俺はやって見せるよ…」

 竜玉から魔力が溢れ出し、白い渦のようになる。恐らくこれに入れば過去へ飛べるのだろう。本当に戻れる保証はない。再び時空の狭間に取り込まれるかもしれない。だが、俺は成し遂げる。みんなの想いを背負っているんだ。

 リュートは光の渦に足を踏み入れ、この世界から姿を消した。
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