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第13章 天竜の試練篇
第155話 姫の帰還
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クリアが修行に出かけてから数日が経過した。今日も仕事をこなし、家に帰宅した。
「ただいま」
返事は帰ってこない。みんな別の仕事で出かけているのだ。
サレナは相変わらずの兵士の訓練だ。魔族の襲来があって兵士の志願者も増えた。懸命に戦う兵士たちの姿に感じるものが会ったのだろう。まぁ新人兵士の殆どはサレナ目当てで入った訳だが。
ミラはギルド関連の仕事だ。教官を辞めた後も特別講師的な扱いでギルドに呼ばれることが多い。まぁミラの美貌に釣られて冒険者が増えたと聞いた事があるのでギルド本来の目的は客引きだろうな。
ルージュは城で魔法の研究を手伝うことが多い。先の戦いでムガ王国の一員に加わったヌードやその部下の魔族と共にマギの研究を進めている。
ローザは普段、あまり仕事は入らないが、今日はたまたま厄介なモンスターが出現したらしいのでそれを狩りに行っている。
ちなみにだが、クリアが修行に出かけた後、アイティオ達は仕事があると言って帰って行った。
普段は帰ったらクリアが出迎えてくれることが多い。俺とクリアに入る仕事はあまり多くない。俺は英雄だからという理由でみんなが遠慮して依頼をしてこない。クリアは実のところこれと言って得意な仕事が無い。サレナのような剣の技術はないし、ミラのように指導する力もなく、ルージュ程の莫大な魔力も無い。それにより仕事はあまり入らない。その代わりにクリアはいつも家事や俺の補佐をしてくれている。
俺にとってクリアは無くてはならない存在だ。そのクリアが不在なのだ、何だか寂しい。
誰もいない家のソファに座る。静かだ。何時もならクリアの家事を手伝ったりしているが、そのクリアも今は居ない。
「リュート」
ん?今、クリアの声がしたか?辺りを見渡しても誰も居ない。クリアロスし過ぎて幻聴でも聞こえたか?
「違うよリュート。私は目の前にいるよ。リュートを驚かそうと思って透明化をしているの」
どうやら本当にクリアが帰って来たようだ。
「今、透明化を解くね」
目の前のクリアは足から徐々に見え始め、最後に頭が現れた。
「どう…かな?」
クリアの体は昇華前の体型に戻っていた。しかし可愛さは前よりも度を増している。そして何よりも、久しぶりのクリアだ。思わず抱きついてしまう。
「きゃっ!リュートいきなりどうしたの?」
「いや、久しぶりのクリアが可愛すぎてつい」
「ありがとう。私も久しぶりにリュートに会えて嬉しい」
「おかえりクリア」
「ただいまリュート」
何だかいい感じの雰囲気になって来たその時、
「ガルルルルルルル!」
ガブッ!足に何かが噛み付いた。
「痛ってぇぇぇぇ!」
「あっ!こら!コットン!ダメだよ!」
クリアがコットンと呼んだ、どこからどう見ても犬な獣を引き離す。
「クリア?この犬はなんだ?」
「この子はコットン。修行先で私が手懐けたの」
「きゃうん!」
ペロペロ。コットンはクリアには従順なようでクリアの顔を舐めている。
「もう!くすぐたいよコットン!」
ぐっ。羨ましい!こんな犬に嫉妬してしまう自分が憎い。まぁよく見れば可愛い見た目をしている。元々、犬は嫌いじゃない。
「よろしくなコットン」
「グルルルル!」
話しかけたら唸られた。どうやら俺はコットンに嫌われてしまったようだ。
「コットン?リュートと仲良くしなきゃダメだよ?リュートもコットンをよろしくね?」
「あ、あぁ」
この後みんなが帰ってくる訳だが、コットンは俺以外のメンバーに吠えるような仕草はせず、しっぽを振りすぐ懐いた。この犬、さては女好きか?と疑いたくなるが、犬の考えていることなんて分からない。
こうして、クリアが新たな仲間を引き連れ帰還したのだった。
「ただいま」
返事は帰ってこない。みんな別の仕事で出かけているのだ。
サレナは相変わらずの兵士の訓練だ。魔族の襲来があって兵士の志願者も増えた。懸命に戦う兵士たちの姿に感じるものが会ったのだろう。まぁ新人兵士の殆どはサレナ目当てで入った訳だが。
ミラはギルド関連の仕事だ。教官を辞めた後も特別講師的な扱いでギルドに呼ばれることが多い。まぁミラの美貌に釣られて冒険者が増えたと聞いた事があるのでギルド本来の目的は客引きだろうな。
ルージュは城で魔法の研究を手伝うことが多い。先の戦いでムガ王国の一員に加わったヌードやその部下の魔族と共にマギの研究を進めている。
ローザは普段、あまり仕事は入らないが、今日はたまたま厄介なモンスターが出現したらしいのでそれを狩りに行っている。
ちなみにだが、クリアが修行に出かけた後、アイティオ達は仕事があると言って帰って行った。
普段は帰ったらクリアが出迎えてくれることが多い。俺とクリアに入る仕事はあまり多くない。俺は英雄だからという理由でみんなが遠慮して依頼をしてこない。クリアは実のところこれと言って得意な仕事が無い。サレナのような剣の技術はないし、ミラのように指導する力もなく、ルージュ程の莫大な魔力も無い。それにより仕事はあまり入らない。その代わりにクリアはいつも家事や俺の補佐をしてくれている。
俺にとってクリアは無くてはならない存在だ。そのクリアが不在なのだ、何だか寂しい。
誰もいない家のソファに座る。静かだ。何時もならクリアの家事を手伝ったりしているが、そのクリアも今は居ない。
「リュート」
ん?今、クリアの声がしたか?辺りを見渡しても誰も居ない。クリアロスし過ぎて幻聴でも聞こえたか?
「違うよリュート。私は目の前にいるよ。リュートを驚かそうと思って透明化をしているの」
どうやら本当にクリアが帰って来たようだ。
「今、透明化を解くね」
目の前のクリアは足から徐々に見え始め、最後に頭が現れた。
「どう…かな?」
クリアの体は昇華前の体型に戻っていた。しかし可愛さは前よりも度を増している。そして何よりも、久しぶりのクリアだ。思わず抱きついてしまう。
「きゃっ!リュートいきなりどうしたの?」
「いや、久しぶりのクリアが可愛すぎてつい」
「ありがとう。私も久しぶりにリュートに会えて嬉しい」
「おかえりクリア」
「ただいまリュート」
何だかいい感じの雰囲気になって来たその時、
「ガルルルルルルル!」
ガブッ!足に何かが噛み付いた。
「痛ってぇぇぇぇ!」
「あっ!こら!コットン!ダメだよ!」
クリアがコットンと呼んだ、どこからどう見ても犬な獣を引き離す。
「クリア?この犬はなんだ?」
「この子はコットン。修行先で私が手懐けたの」
「きゃうん!」
ペロペロ。コットンはクリアには従順なようでクリアの顔を舐めている。
「もう!くすぐたいよコットン!」
ぐっ。羨ましい!こんな犬に嫉妬してしまう自分が憎い。まぁよく見れば可愛い見た目をしている。元々、犬は嫌いじゃない。
「よろしくなコットン」
「グルルルル!」
話しかけたら唸られた。どうやら俺はコットンに嫌われてしまったようだ。
「コットン?リュートと仲良くしなきゃダメだよ?リュートもコットンをよろしくね?」
「あ、あぁ」
この後みんなが帰ってくる訳だが、コットンは俺以外のメンバーに吠えるような仕草はせず、しっぽを振りすぐ懐いた。この犬、さては女好きか?と疑いたくなるが、犬の考えていることなんて分からない。
こうして、クリアが新たな仲間を引き連れ帰還したのだった。
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