異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第14章 侵略する帝国篇

第167話 人工知能

　サレナに後ろを任せたリュート達は城内に突入した。城内はまるで敵の姿がなく、かえって不気味だ。

　「リュート。この静けさは、明らかに罠の匂いがする」

　「確かにそうね」

　「慎重に進もう」

　なんの妨害もなくあっさり進めるかと思われたが、道が思った以上に複雑だった。

　しばらく進むと大広間へ出た。

　「みんな止まれ！敵のお出ましだ」

　リュート達の目前に一体のロボが居た。

　「なにこれ？ゴーレム？」

　「それにしてはかなり複雑なような…」

　明らかにこの世界の技術に馴染んでいないそのロボは、俺達が部屋に入ったと同時に起動した。

　「標的を確認。対象の排除を開始します」

　そのロボは電子的な音声を発しながら、こちらに銃を向けてくる。どうやら人工知能のようなものが搭載されているようだ。

　「ふん！こっちにはクリアが居るんだからそんな兵器なんて無駄無駄」

　「ちょっとローザ？あまり煽らないの！でも、遠距離攻撃が私に通じると思わないで！」

　「対象を確定、弾丸を変更します」

　何？こいつそんなことが出来るのか。

　「思考の結果、魔力無効弾へ切り替えました」

　「えっ？魔力無効？」

　「銃撃開始」

　ズガガガガガ！ロボの両腕のガトリング砲のようなものから無数の弾丸が放たれる。

　「重力操作！」

　しかし、弾丸は重力をものともせずに、こちらに飛んでくる。

　「嘘！ほんとにクリアの魔法が効かないの？」

　「創成クリエーション･シールド」

　ガキキキキキキン！突然現れた盾が弾丸を防ぐ。

　「油断するな二人とも」

　「リュート！」

　「ごめん、リュート。私じゃあまり力になれないみたい」

　「いや、そんなことは無い。アイツは攻撃することばかり考えていて、防御することをまるで考えていない。つまり、隙だらけという事だ。しかも、まだ隙ができる」

　「対象の消滅を確認できず。次の手を算出。次の手、対象の消滅不可。次の手、不可。不可。不可」

　「こういうAIの弱点は予想外のことが起こると、すぐにエラーを吐くことだ！二人とも一気に決めるぞ！」

　「神刀･夢幻白夜！」

　「タスラム！」

　「形なき魔器ノーデモンズ！」

　最初にクリアのタスラムが分裂し、ロボの銃を切り落とす。次に、ローザが、魔器を槍に変換し、串刺しにする。最後に俺が一気に踏み込み、一刀両断にする。

　「「「竜と淫魔の連奏ドラゴンアンドサキュバス！」」」

　俺達の息のあった連携によりロボは爆散した。無駄な時間を使ってしまった。先に進まなくては。

　さらに奥に進み、遂に皇帝の間へとたどり着いた。扉を吹き飛ばし中に踏み込む。そこには堂々と玉座に座る皇帝ナバルの姿があった。

　「ようこそ。我が城、ナバル城へ」

　「皇帝ナバル！お前を倒せば、全てが丸く収まる。命乞いはあるか？」

　「命乞い？何を言っている。消えるのは貴様らだ！」

　「どうやら話すだけ無駄なようだな！」　

　俺が魔法を放とうとすると、後ろから誰かがやってくるのを感じた。

　「リュートさん！皆さん！ご無事でしたか！」

　何故か一人のルージュが俺達の前に現れたのだった。