上 下
238 / 529
第16章 手に入れた平和篇

第187話 魔族との共生

しおりを挟む
 カーブと別れた後、クリアとローザ、コットンと街を見て回る。
 大きな戦いがあった後だが、街はすっかり元の活気を取り戻していた。
 しばらくの時間歩いていたのでお腹がすいた。

 「お腹すいたし、何か食べていこうか?」

 「いいね。私もお腹が減ってきたところだよ」

 「私は魔力はまだまだあるし、何か飲み物でも飲もうかな」

 ローザは魔族なので食事は必要としない。魔力が主食だからだ。しかし、食物を食べられない訳では無い。魔族にとって食事はただの娯楽みたいなものだ。

 「あそこの店にしようか」

 目の前にいい感じのお店があったのでそこに入る。正午の時間帯は過ぎていたので、この時間の飲食店は閑散としている。

 「いらっしゃいませー!」

 元気な女性の声が聞こえてきた。

 「あー…ペットいるけど、店の前に待機させた方がいいか?」

 「いえ、そのままでも大丈夫ですよ。空いてるお席にどうぞ」

 空いていた角の席に座る。こういう所に来ると、何故だか角の席に座りたくなってしまうのは俺だけなのだろうか。

 「色々あるね」

 「そうね」

 クリアとローザが俺の向かいの席に隣同士で座り、メニューをシェアしている。何だか、ほっこりする光景だ。

 「ご注文はおきまりですか?」

 店員がこちらの席に来る。店員をよく見ると、角や翼が生えており、人とは違った魔力を感じた。そう、この店員は魔族だった。

 「ん?あなたも魔族?」

 「はい?そうですが?お客様も?」

 ローザがいち早く店員の魔力を感じ取った。やはり魔族同士だと通じるものがあるようだ。

 「お客様も魔族の方でしたか」

 「ちょっと聞きたいのだけど、いいかしら?」

 「はい。なんでしょう?」

 「あなた、人間界に来て良かった?」

 恐らくローザは店員の彼女より、一足先に人間界に来ていたので、人間界の怖さを知っている。魔族が本当に人間界に馴染んでいるのかはローザが1番知りたいことだろう。

 「もちろんですよ!魔族界には魔力も少なく、ろくな娯楽も無く、ただただ不自由な生活でした。しかし、ここには自由があります。この国の魔族は働きたいように働き、遊びたいように遊べます。それもこれも、私たち魔族を受け入れるように言ってくださった、英雄リュート様と最初に人間に馴染んだ魔族、ローザ様のおかげです。その御二方には感謝してもしきれません。ぜひお会いしてみたいものですね」

 うーん。目の前に居るのがその二人なのだが…。まぁ、こういうのは言わぬが花だろう。

 「そ、そうね。あなたが幸せそうで良かったわ」

 ローザは自分のことを尊敬する人物に出会い、照れくさかったようだ。

 「あ、俺はこれを頼むよ」

 「私はこれを」

 「あ、私はこっちで」

 「あとすまないが、このペットにも何かおすすめのメニューを頼む」

 「ガウゥゥゥ!ガブ!」

 俺はテメェのペットじゃねー!と言わんばかりに、足を噛まれたが気にしない。

 「かしこまりました。少々お待ちください」

 こうして、俺達は魔族が働く店で食事を楽しんだのだった。
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

駄菓子屋継いだらロリハーレム

恋愛 / 完結 24h.ポイント:127pt お気に入り:75

【R-18】男の生きられない世界で~逆転世界で僕に出来る事~

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:63pt お気に入り:1,782

屋台で売っていた少女はカラーひよこと呼ばれていた

恋愛 / 完結 24h.ポイント:28pt お気に入り:0

冒険がしたい創造スキル持ちの転生者

Gai
ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:4,744pt お気に入り:9,017

チートな嫁たちに囲まれて異世界で暮らしています

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:85pt お気に入り:1,453

処理中です...