異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第二部 第1章 リスタート篇

第1話 上陸

　心地よい波の音が聞こえる。

　「！？」

　そうだ！俺は海から脱出出来たのか？

　辺りを見渡すとどうやらここは砂浜だ。俺は運良くどこかに打ち上げられたようだ。

　「う、うーん…」

　隣から女の子の声？まさか！

　右を向くと、白髪の少女が倒れていた。

　「クリア！よかった…」

　新たに復活したからか、姿が子供になっているが、俺が見間違うわけがない。クリアは完全に生き返ったのだ。

　ん？このクリアは子どもの姿のはずだ。なぜ俺の方が体が小さく感じるんだ？そう言えば、右手以外消し飛ばされた四肢はどうなっている？

　咄嗟に手を確認する。

　小さい獣みたいな手がそこにはあった。そして、海の水面には小さくて白いドラゴンが映り込んでいる。

　「えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ！」

　戻っている！転移したての頃の姿に！どうなっているんだ？

　「次元操作！」

　何も起こらない。

　「創成！複製！付与！」

　しかし何も起こらない。

　「ま、魔法も使えなくなっている…」

　本当に転移したての状態に戻ってしまったのだろうか。

　「おい！クリア？大丈夫か？」

　とりあえず、クリアを起こすことにした。小さい手でクリアを揺する。

　「あれ？ここは…？」

　「目覚めたかクリア。無事でよかっ…」

　「ここは…そして、あなたは誰？」

　「えっ？」

　「あれ？私も誰だろう…」

　まさか記憶喪失か？しかし、俺はしっかりと覚えているので、今の状況を一から説明を…

　「ぴーっ！ぴー！」

　「うーん？あなたなんて喋ってるの？」

　なん…だと…？声が発せていない。何を話しても、ぴーという鳴き声になってしまう。明らかに以前より退化している。

　「とりあえず。襲って来ないって事は味方という訳でいいんだよね？」

　「ぴー！」

　必死に首を縦に降る。

　「よかったぁ…」

　クリアは安心した素振りを見せる。何とか話が通じた。

　しかし大変なことになってしまった。方や記憶喪失の少女。方や話すことすら出来ないクソ雑魚ドラゴン。幸先が不安である。

　「ぴー！ぴーっ！」

　ここにいても埒が明かない。必死に身振り手振りでここから移動しようって伝える。

　「移動しようって？確かにここにいてもいいことは無さそうだね」

　クリアは俺に着いてきてくれるみたいだ。

　改めて周囲を確認する。背後はもちろん海。前方には巨大なジャングルのような地帯が広がっている。俺が知るアル大陸の地理にこのような場所は無い。つまりここは俺が知らない未知の新大陸ということになる。先程からジャングルの奥地から何か鳴き声のような音が聞こえているので、生物は存在しているようだ。人がいるのかはまだ判断出来ない。最悪の場合も考えられる。しっかりと考えて行動しなくては。

　「ぴーっ！」

　「そっちに行くんだね？」

　「ぴー！」

　とりあえずジャングルは危険そうなので砂浜を歩き、迂回することにした。

　こうして、一人と一匹の新たな冒険が幕を開けるのだった。