異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第二部 第1章 リスタート篇

第6話 緑の竜

　(こ、こいつは…！)

　そこに居たのは紛れもなく巨大なドラゴンだった。

　(何なんだこいつ？)

　そのドラゴンの体は緑色で、立派な翼と角、尻尾が生えていた。そして、草原の真ん中で悠々と眠っていた。実力はわからないが、その姿は明らかに強者の風格を漂わせていた。

　触らぬ神に祟りなし。近づかないことにこしたことは無い。

　「ぴぃ…」

　「うん。そうだね。起こさない方がいいよね…」

　俺とクリアはその場から離れることにした。しかし、そこにあの獣が現れた。

　(あいつは！さっきの虎っぽいモンスターか！)

　そこに居たのは先程、リュートが爆裂する木の実で撃退した、虎に似たモンスターだった。

　「グルルゥ！」

　(不味い！アイツ…まさか！)

　「ガオォォォォォォ！」

　虎型モンスターは耳を劈く程の激しい咆哮を放つ。

　(馬鹿野郎！やりやがったな！)

　パチッ。眠っていたドラゴンの瞼が開く。

　「ぴぃ！(走れ！)」

　クリアを守るためにも、すぐ様この場から離れなければならない。

　「ガルル…」

　虎型モンスターは逃げようとする俺たちしか視界に入って居ない。その隣に何が居るのかも理解出来ていない。

　「グオォォォォォォォォォ！」

　起きた緑ドラゴンの咆哮が辺りに響き渡る。その衝撃は凄まじく、虎型モンスターも驚きで動きが固まる。

　(今のうちだ！)

　運がいいことに緑ドラゴンの視界に俺たちは入っていなかった。虎型モンスターの視界からも外れた今のうちにこの場を離脱する。　

　ズシン！ズシン！ドラゴンは眠っていた所を起こされ不機嫌なのか、その巨体を揺らしながら、虎型モンスターの元へ近づいて行く。

　「ガルル…」

　虎型モンスターは知能が低いのか相手が如何に格上なのかを理解出来ていない。果敢にも緑ドラゴンに飛びかかる。

　「ガブッ！ガフ！」

　緑ドラゴンの長い首に虎型モンスターがが噛み付く。しかし、緑ドラゴンの鱗は鋼鉄のように固く、虎型モンスターの歯が逆に砕ける。

　「ガルル…」

　諦めが悪い虎型モンスターはまだ緑ドラゴンを威嚇し続ける。

　すると、緑ドラゴンが何かをし始める。翼を広げ、天を仰ぎ始める。俺たちは逃げながらその様子を見ていた。

　(あれは…光を集めているのか？)

　緑ドラゴンの体色の緑は苔で出来ていた。緑ドラゴンは体が苔むしているのだ。その体に光を沢山浴びせている。

　緑ドラゴンは一度飛び上がり、もう一度着地する。すると、緑ドラゴンの足元の草がグングンと成長を始める。草木は虎型モンスターを拘束し、動けなくする。

　「グルルゥ！」

　虎型モンスターは草木に縛られて暴れ出す。しかし、草木は頑丈で切れない。緑ドラゴンは息を吸い込み、思いっきり吐き出す。虎型モンスターに緑ドラゴンのブレスが当たると、虎型モンスターは苔の塊になっていた。