異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第二部 第1章 リスタート篇

第13話 縄張り脱出

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 クリアを背負いながら走るミハエルの背後でとてつもない爆発が起こる。

 「!?なんだ?」

 「あれも、翠怠竜の力なのか?」

 あの爆発を間近で食らったのだ。この子のドラゴンでも流石に…。

 「…あぁ…」

 遠くから声が聞こえる。

 「えっ?」

 「何?」

 「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 あの爆発に巻き込まれて吹き飛ばされたリュートが空から降って来た。

 「ぶへっ!」

 リュートは勢いそのまま地面に墜落した。

 「いってぇ…。威力間違えたな…」

 「リュート!」

 ガバッ!クリアに抱きつかれる。

 「クリア。無事で何よりだよ」

 「ははは…驚いたよ…。本当にあのドラゴンから俺たちを逃がしつつ、自分も脱出するとは」

 「まぁな。もう少しで仕留められそうだったんだが優先順位を考えた結果、今はその時ではないと判断した」

 「さっきは聞きそびれたが、君はなぜ話せるようになったんだい?」

 「いや、俺にもよく分からないが、進化したら話せるようなった」

 「モンスターなのにそんな知能があるのか」

 「リュートはモンスターじゃないよ」

 「えっ?」

 「あぁ。まぁ信じられない話だと思うが、俺はこう見えても元は人の形をしていた」

 「元人間ということかい?」

 「まぁ…そう執ってくれても大丈夫だ」

 「そんなことがあるものなんだな…」

 「いやいや、ミハエル?本当にそいつのこと信じるの?あんなよく分からない未知のモンスターの事なんて」

 「まぁ信じられないのが普通だよな。クリア?」

 「何?リュート?」

 「俺の後ろに下がっててくれ」

 「えっ?」

 「どうやらアグノラは俺が心底気に食わないらしいからな」

 アグノラは杖を構えて臨戦態勢だった。

 ジャキン!俺もファイティングポーズを摂ると、俺の体から棘が生える。どうやら戦闘態勢になると、自動で生えてくるようだ。普段はどうやってかわからないが、棘は体の中に格納されているようだ。

 「そうよ!私はこいつが心底気に食わなかったのよ。モンスターの癖に喋り、仕舞いにはカッコつけて私たちを逃がすとか、腹が立つわ!」

 「どうして!リュートは何も悪いことはしてないよ!」

 クリアがアグノラに尋ねる。

 「はぁ…すまないなリュートさん?でいいのかな?」

 「あぁ。好きに呼んでくれ」

 「アグノラは両親がモンスターに殺されてね。モンスターに対して強い恨みを持っているんだ。だから、君のことが受け入れられないみたいなんだ」

 「ちょっとミハエル!勝手に人の過去をベラベラ話さないでよ!」

 「そうだな…。お互いの事も考えて、俺達は一緒に行かない方がいいな」

 「申し訳ないリュートさん」

 「ちょっと待って。今、『俺達』って言った?あんたみたいなモンスターがその子を連れてってどうする気?その後は私たちで保護するわ」

 プチッ。流石にちょっと頭にきた。アグノラの精神はとことんねじ曲がっているようだ。

 「おい?あまり俺を怒らせるなよ?」

 ビクッ!あまりの迫力にアグノラは一歩退く。

 「クリアは俺の妻だ。それにクリアだってあんたなんかより俺と一緒にいたいはずだ」

 「そうだよ。リュートを悪く言う人の所になんて居たくないよ」

 「だ、そうだ」

 「ぐっ…」

 「はぁ…アグノラ?少し頭冷やしてこい」

 ミハエルがアグノラを遠くにやる。 

 「本当にすまないリュートさん。あいつも悪気がある訳では無いんだ」

 「大丈夫。わかっているさ」

 「俺はこの後、拠点に戻り荷物や調査内容をまとめた後、一人でここに戻ってくる。だから、君たちと情報交換をさせてくれないか?」

 「ありがたい話だ」

 こうして、俺たちは翠怠竜の縄張りから脱出することが出来たのであった。
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