異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第2章 爆棘竜の探索篇

第24話 ギリギリの攻防

　「吹き飛べ！ゴブリンキング！」

　予め戦闘前に、棘をばら撒いておいた。ゴブリンキングはぬけぬけと棘まみれの地帯に踏み込んだのだ。

　「やったぁ！」

　オリアナが飛んで喜ぶ。しかし、

　「マダダ！」

　爆風の中からボロボロになったキングゴブリンが現れる。

　「はやり、致命傷にはならないか！」

　ゴブリンキングの耐久は凄まじく、あの程度の爆発は耐えられてしまうようだ。

　「キサマ！ユルサンゾ！」　

　ゴブリンキングがこちらに近づいてくる。あちらもボロボロだがこちらの方がボロボロだ。まだ動ける向こうに対して、こちらは既に動ける力も残っていない。

　「くっ！棘飛ばしホーンミサイル･乱射スパイラル！」

　バシュシュシュ！ゴブリンキングに向けて飛ばせるだけの棘を飛ばす。

　「フン！」

　ズガガガ！ゴブリンキングは持っていた棍棒で、飛んできた棘を全て撃ち落とす。そして、そのまま真っ直ぐ俺の方に直進してくる。

　「ツカマエタゾ！」

　遂に、俺はゴブリンキングに掴まれてしまった。

　「あぁ！リュートさん！」

　オリアナが叫ぶが、オリアナは何も出来ない。

　「キサマヲコロシテ、アソコニイルオンナハオレガモラウ！」

　「逃げろオリアナ！」

　「で、でも…」

　「ハッハッハ！オレガニガストオモウカ？」

　リュートを掴みながら、オリアナの方を向く。

　「ふぅ…どうやら間に合ったようだな」

　「ナニ？」

　ゴブリンキングが気がつくと、背後に何者が接近していた。

　「リュートを離して！」

　「命の恩竜をこんな所で死なせる訳にはいかないわ！そうよね、シャロン？」

　「そうだよ！私も戦う！行くよサマンサ、ニナ！」

　「はい」

　そこに居たのは先程出会った冒険者パーティだった。

　「火の玉フレイム･ボール！」

　魔法使いのシャロンは、ゴブリンキング目掛けて火の玉を放つ。　

　「フン！ソンナモノ、キカナイ！」

　ゴブリンキングは火の玉を軽く片手であしらう。

　「隙だらけよ！」 

　バスン！ゴブリンキングの腹部に武闘家のサマンサの正拳突きが決まる。

　「ナカナカイイコウゲキダガ、オレニハキカナイ！」

　棍棒がサマンサ目掛けて振り下ろされようとしている。

　「貰いましたよ」

　ザシュッ！

　「ナニ！」

　ニナが背後からナイフで心臓を突き刺した。

　「バカナ！オレガマケルノカ！クソォォォ！」

　バターン！ゴブリンキングは倒れた。それと同時に、リュートが拘束から解放され、落ちる。

　「リュート！」

　バスッ！クリアがリュートをキャッチした。

　「危ない所だったよ…。みんなありがとな」

　「間に合ってよかったです」

　ニナがリュートに話しかける。すると、サマンサとシャロンが不思議そうな顔でその光景を見ていた。

　「ニナが自分から話しかけるなんて珍しいわね」

　「どうやら、あの竜が気に入ったみたいだね」

　「リュートさん！やりましたね！」

　オリアナが、草陰から出てきた。オリアナも無事でよかった。

　「オリアナ、村の仇はとれたぞ」

　こうして、この辺りに蔓延っていたゴブリン達の巣は破壊され、統率していたキングも死んだのだった。