異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第6章 隣国との邂逅篇

第68話 解かれる封印

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 「リューコ!」

 クリアとオリアナも騒ぎを聞き付けて、表に出てくる。

 「今、回復するね!」

 クリアの回復魔法でリューコの体の毒が抜ける。

 「助かったクリア!」

 「何があったの?」

 クリアとオリアナに先程まであったことを説明する。

 「ニナ!大丈夫か!」

 先程矢に撃たれて倒れたニナに、ヴォラプと名乗った謎の襲撃者はニナの体内に潜り込んだ。

 すると、先程までピクリとも動かなかったニナが起き上がる。

 「ふぅ…ようやく意識を取り戻すことが出来たよ」

 そこに居たのは先程までのニナでは無く、明らかに変容していた。

 「誰だ?」

 「言わなくてもわかってるんだろ?私は紫色竜・ヴォラプだ!」

 やはりそうか!先程まで居た怪しげな女性はこいつの分体と言ったところか。

 「いやいや、良くもまあ私を封印してくれましたね…。しかし、うむ…中々…この体も悪くないですね」

 先程まであんなに大人しく、悲しげで寡黙なニナの姿はどこにもなく、紫色竜が惜しげも無くベラベラと喋っている。

 「さてと…久しぶりに復活した事だし、好き勝手にやらせてもらいますよ?運がいいことに今私の目の前には美人しかいないみたいですし」

 「おいてめぇ…」

 「どうしたんだい?黒髪が素敵なレディ?」

 「その体で好き勝手させると思うなよ?」

 「ほう?人間風情が私の力を停められるとでも?まぁ物は試しでしょう、私の力をお見せしましょう。紫色の欲望パープル・リビドー

 リューコ達の周りに怪しげな雰囲気の煙のようなものが充満する。

 「くっ…これは…」

 嗅いだだけで体が火照ってくるこの感覚、これが紫色竜の力か。

 「どうだい?私の力は。情欲が呼び起こされてたまらないだろう?」

 「リュ、リュート…私…もう…」

 「わ、私も…」

 二人は煙の影響で立って居られなくなり、ひざをつく。意識が朦朧とするのか、俺の呼び方も元に戻っている。

 「ほう?この濃度の煙を受けて、まだ立っていられるのか?正直驚いたよ」

 実際俺も情欲に流されそうになっている。今、クリアに求められたら拒めない自信がある。しかし、俺の理性を保つのには十分な理由があった。

 「ニナの体で、好き勝手してんじゃねーぞ!」

 「ふん、そこまでこの体の人物に固執があるのか?」

 「ニナはみんなのために心を無にしてきたんだ。お前のせいでな!お前がいなければニナはこんな苦労をしない人生を送ることが出来たんだ。そんなお前がニナの人生を滅茶苦茶にするなんて俺は…俺は許せない!」

 リューコは変化を解きリュートの姿に戻る。

 「ふっ!そう来なくっちゃなぁリュート!」

 そんなリュートの背後にはブレイズが立っていたのだった。
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