異世界を統べるのは人ではなく竜だ

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第8章 自国の強化篇

第104話 上を行く魔王

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 リュートは貴賓室のソファでくつろいでいた。

 「リュート様、ご客人ですわ」

 サレナが報告する。

 「通していいぞ」

 「失礼します」

 部屋に入って来たのはかつて、灰喰竜と戦った時に出会った、この国の兵長。ハーパー・リベスだった。

 「どうしたんだ?わざわざ?」

 「いえ、あの時の礼を申し上げたくて参りました」

 「礼?」

 「はい。私はリュート王の助けがなければ、部下諸共生きてはいなかったでしょう」

 「そんな事は気にするなよ。俺はやりたくてやっただけだ?」

 「はい。ですから、命の恩人であるリュート王達をここで死なせたくはないのです。単刀直入に申します。リュート王、あなた方は命を狙われています」

 「あぁ知ってる」

 「ですから、いち早くこの城から…えっ?」

 「この城に招くこと自体がセールイ王達の策略ということくらい簡単に気づく」

 「では、どうして?今頃王妃達の元にはロート王国屈指の精鋭が…」

 「俺の妻たちはそんな奴らには負けない。第一、既に対策済みだ」

 リュート、クリア、ローザ、オリアナは別々の部屋におり、それぞれの部屋の前に、サレナ、コットン、ミラ、ルージュが待機している。そんな中、オリアナは満腹になり、ベッドでぐっすり寝ていた。

 「すぅ…すぅ…」

 寝息を立てるオリアナの部屋の中にはもちろん誰もいない。しかし、突然一人の人影が現れる。

 「ふん。ぐっすり寝ているな。楽な仕事よ」

 侵入者は姿無き者たちの一角だ。腰に備えた、鋭利なナイフを抜き、オリアナのベッドに近づく。

 「貰った!」

 オリアナの心臓めがけてナイフを突き立てる。

 キィン!ナイフが何かに弾かれる。

 「何!」

 オリアナの傍に居たのは、誰も認知していない存在。リュートが引き連れてきたメンバーには居なかったはずの人物。

 「霧隠れミスト・ハイディング。どうやら、あなたにも私のスキルは見破れなかったみたいですね」

 ニナがその場に現れた。ニナは最初から伏兵としてオリアナに同行していた。

 「ちっ!しかし、貴様を殺してからそいつを殺せば何の問題もない!死ぬが良い!」

 それと同時期、ローザの部屋にて、ローザの部屋にも動きがあった。

 「失礼する」

 「あら?どうしたのミラ?」

 ミラがローザの部屋に入って来た。

 「ローザ。あちらを」

 ミラがあらぬ方向を指さす。

 「何かしら?」

 「さようなら。王妃」

 グサッ!ミラに変装していた姿無き者たちの一角が、ローザを背後から貫く。

 「たかが、人間など…取るに足らんな」

 「ふぅん。中々上手な変装ね。でも、私を欺きたいなら、呼び方はは本人に揃えた方がいいわよ?」

 「馬鹿な!」

 先程貫いたローザは見る影もなく、背後にローザが現れていた。

 「乙女の部屋にずかずか踏み込むなんて悪い子ね?」

 ローザの姿がみるみる変わっていく。角と翼、しっぽが生え、その姿は人間では無い。

 「まさか…ま、魔族!」

 姿無き者たちの奇襲は尽く失敗するのだった。
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