異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第8章 自国の強化篇

第105話 魔王の策略

　姿無き者たちのもう一人はクリアの部屋に侵入できずにいた。

　「な、何者だ？あの人物は…」

　クリアの部屋の前に立ち塞がるローブの人物。その人物が放つ殺気は凄まじく、何人の侵入も許さない。

　「私の能力との相性は悪いか…仕方ないターゲットを変える」

　姿無き者はクリアの部屋から立ち去った。

　「全く…下郎は一体何を考えているんだ？ここでただひたすら殺気を出してろとは…」

　コットンは侵入者の接近に気づくことも無く、襲撃者を撃退した。

　「ほら？どうだ？悲鳴なんか聞こえないだろ？」

　「確かに…流石ですリュートお…」

　グサッ！ハーパーは背後から何者かに刺される。

　「うぅ！どうして…」

　「どうやら貴様は魔王と接点があるようだからな…貴様のような兵は我が国には不要だろう」

　ドサッ…。ハーパーは倒れた。

　「ふん…作戦などもはや不要！我々、姿無き者たちの力を結集させ、魔王を打つのだ！」

　しーん…。姿無き者たちの残りの二人が現れることは無かった。

　「馬鹿な…我が同士達が？」

　オリアナの部屋にて、行われた奇襲はニナの潜伏により失敗した。

　「まぁ良い、我が刃のサビにしてくれる！」

　高速で殺人に特化した攻撃がニナを襲う。

　「貰った！」

　グサッ！襲撃者の攻撃がニナの心臓を貫く。

　「手応えがない！」

　ニナの貫いた部分が霧に変化し、攻撃を受け流していた。

　「霧流しミスト･シェッド。これで逃げられませんね。さようなら」

　ニナのナイフが襲撃者を捉えた。

　ローザの部屋にて襲撃者がまた一人、返り討ちにあっていた。

　「ま、魔族！なぜこんな所に！」

　魔族とは、恐怖の象徴であり、誰もが畏怖する存在だった。

　「あら？見ただけで驚くなんて可愛い所もあるじゃない…でも私、リュート以外に興味ないからごめんね」

　ローザは淫魔の力で襲撃者を動けなくする。

　「か、体が動か…」

　ローザの手が襲撃者の腹部に触れる。

　「リュート曰く、遠慮はいらないみたいだから手加減はしないわ。魔力吸収マナ･ドレイン」

　襲撃者はあっという間に干からび果てた。

　「お前、俺を怒らせるのが上手いな？」

　ゾクッ！最後の襲撃者は本能的に感じ取った。こいつには勝てないと。

　「だ、だがやるしかない！死ね！」

　ボコン！襲撃者の構えていたナイフが腕ごと消し飛ぶ。

　「ぐあぁぁぁぁぁぁぁぁ！」

　「なんの罪もない兵を殺そうなんて俺の前で考えるな」

　「この力…正しく魔王…」

　その後、襲撃者は跡形もなく消し飛んだ。

　「大丈夫か？ハーパー」

　「はぁ…はぁ…何とかな…」

　「良かった」

　ハーパーの傷は致命傷には至らなかったのだった。