異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第9章 魔王と灰の国篇

第114話 暴食の敗北

　ミラの放った一撃は灰喰竜バイトの心臓を貫いた。

　「ぐあぁぁ！馬鹿…な…」

　灰喰竜は核を貫かれ、崩壊し始めた。

　「我が…負けるのか…」

　「あぁ。お前の負けだバイト」

　「なるほど…これが人間の力か…。我としたことが、汝らの力を見誤っていたようだ」

　「暴食ここで散る、か…」

　「我はここまでか…それも仕方の無いことだ」

　「随分と潔が良いな？」

　「暴食するしか脳の無い我はこの程度が限界だ…。礼を言うぞブレイズ、最後に暴食以外の事を知ることが出来た」

　バイトの体はどんどん崩壊していく。

　「リュート、そしてミラよ」

　「何だ？」

　「私か？」

　「我を超えた人間。汝らに忠告をしておこう」

　「忠告…」

　「汝らは今まで数体の七色の罪竜を撃退してきたのだろう？」

　「そうだな」

　「汝らは我ら七色の罪竜がどういう存在なのかをまだ理解してはいない」

　「何？」

　「我の口から与えるはあくまでヒントだ。我らを作り出した神々には何か目的があった。その目的を理解した時、汝らはさらなる高みに登ることが出来るだろう」

　「神々の目的に高みか…」

　「…」

　ブレイズは黙っていた。何か思い当たる節があるようだ。

　「どうやらこれまでだ。しばしの別れだ。さらば」

　バイトはそう言い残し、サラサラと粉になった。

　「しばしの別れ？」

　しばしとはどういうこと何だろうか。またバイトと会うことがあるという事か。

　「ブレイズ？お前何か知ってるのか」

　「まぁ知ってると言えば知ってる。だが、教える気は無い。それはお前が自らの力で知った方が良いことだろう」

　「なるほどな…それは一理ある」

　ブレイズもブレイズなりに考えている事があるのだろう。こちらから口を出すものでもないのかもしれない。

　「まぁそういうことならこれ以上聞くつもりは無い」

　「リュート。敵陣は壊滅したようだが、どうする？」

　そう言えば、今はセールイとの戦いの途中だった。

　「もう奴らも攻めてくる気概はないか」

　「いや、そうとも限らないみたいだぜ？」

　ブレイズがそう言うと、ブレイズの見つめた先に大量の兵士たちが期を伺っていたように現れた。

　「灰喰竜は倒れた！我々を抑える邪魔者も居なくなった！今が好機！今こそ全戦力を出撃させる！」

　そこには今までとは比べものにならないほどの敵兵達が並んでいた。

　「なるほど…これで向こうは戦力を温存する必要は無くなったわけか…」

　「さぁリュート、ここが腕の見せどころだ」

　「わかってるよミラ。ここは任せていいか？」

　「もちろんだ。ルージュ達が再びこちらに来てくれる。私たちだけでも何とかなるさ」

　「じゃあ頼む、ブレイズ」

　「任せろ」

　リュートはブレイズの上に乗って、セールイ城に向かった。