異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第9章 魔王と灰の国篇

第113話 節制を持つ者

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 ブレイズに指摘された、バイトは気づいた。

 「まさか…」

 「リュート!どうやらお前の周りにはが溢れているようだな」

 「何?ということは…」

 「ミラがこいつの『暴食』の弱点、『節制』の持ち主だ」

 「節制?私がか?」

 「いや、ミラなら納得だ」

 なぜなら、彼女は自ら欲を出すことはあまりしない。食事も趣味も控えめで、常日頃から訓練、特訓に明け暮れている。生活リズムも規則正しく、ミラは節制の擬人化と言えるような逸材だろう。

 「汝には分からないのか?好きなものを食べ続ける幸福が!人間にだって欲はある」

 バイトがミラに語りかける。

 「確かにそうかもしれない。だが、欲望のまま生きるのは獣がやることだ。私は誇り高きエルフとしてそんな生き方は許容できない!」

 「素質持ちに言ったところで意味は無いか…まぁいい!汝、いや、全てを喰らい尽くせばそれまでだ!」

 バイトは再び、外装を変形させる。

 「ブレイズ!俺はどうすればいい?」

 「ミラの攻撃が奴にとっての弱点になる。リュートはバイトの攻撃から、ミラを守れ!」

 「わかった。頼むぞミラ!」

 「任せてくれ!」

 ギリギリィ!最大限の力を込めて弓を引く。

 「大地よ、空気よ全て我に喰われるが良い!世界喰いワールドイート

 外装が変形し、十本の棘が地面に突き刺さる。そして、バイトは空を見上げ大きく口を開ける。棘が地面から魔力を吸い上げ、口が空気の魔力を吸う。

 「ぐっ!立っているだけでアイツに魔力が吸い取られていく!」

 「早期に決着をつけなければ、この当たりは死の大地と化すぞ!」

 「少しでも妨害して、ミラに繋ぐ!」

 リュートはバイトの上に飛び乗り、神刀・夢幻白夜を突き刺した。

 「ぐぅ!中々良い得物だが、我は止まらん!」
  
 バイトは逆に刀の魔力とリュートの魔力を吸い上げる。

 「馬鹿野郎!今のバイトに特攻するやつが居るか!」

 「分かってないなブレイズ?これが俺の作戦だ。俺の魔力をたっぷり吸いやがったな?じゃあ今のお前はようなものだな?」

 「何!まさか!」

 「そうだ。その煩わしい骨、全て粉々に吹き飛ばさせて貰うぜ?臨界爆破クリティカル・デトネイト!」

 「ぐあぁぁぁぁぁ!」

 バイトが叫びをあげる。爆発により外装が剥がれ、本体がむき出しになる。

 「行け!ミラ!」

 「ありがとうリュート!確実に決める!竜を穿つ矢ドラゴンペネトレイトアロー!」

 ミラの一撃がバイトの心臓コアを貫いた。
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