異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

文字の大きさ
475 / 529
第12章 罪竜と素質解放篇

第147話 色欲、霧散

しおりを挟む
 ニナの攻撃で紫色竜はズタズタに切り裂かれた。

 「わ、私は死ぬのか…」

 紫色竜ヴォラプの体は次第に崩壊し始める。

 「何とかなりましたね、リュートさん」

 ニナの姿が元に戻って行く。

 「認めるものか!私がここで消えるなど!」

 ヴォラプは最後の抵抗とばかりに崩壊しかけている巨大な尻尾でニナの体を薙ぎ払う。

 「ニナ!」

 突然の事でリュートも反応が遅れた。ニナの体は呆気なく消し飛んだ。

 「ハッハッハ!そうだ!私のモノにならない女などこうなるのが正しい!」

 「本当に最低な竜ですね…。救いようがないです」

 「何だと!」

 ニナの体は液体のように崩れたと思ったら、すぐに元の形に戻り、何事も無かったかのようにその場に立っていた。

 「その力は正しく私の『液状化リコーション』!」

 「サレナさんがやっていたように素質解放した状態で七色の罪竜を撃破すると、その力がこちらに渡るようですね」

 「はぁ…どうやら私は本当にここで終わりのようだ…」

 突然ヴォラプは大人しくなった。自身の死が確定したことに気づいたのだろう。

 「急に大人しくなったな紫色竜」

 「もう、抵抗は無駄だと気づいたからな。私達、七色の罪竜は力を失ったら存在価値が無くなり消滅する運命にある。こうなったのも私の運が無かったからだな」

 ヴォラプの崩壊は止まること無く続く。

 「私は進む道を間違えたようだ。私もデザイアやブレイズのように人間たちと共に…。いや、無いな!私と人間が和解などありえない。何故なら私の罪は色欲。交尾することしか興味無いような竜が人間社会で生きれるはずが無い」

 「そうとも限らないぞ」

 「何?」

 「人間だって、誰にでも性欲はある。それを理性で抑えるのが人間だ。ヴォラプにも理性はある筈さ。理性を使いこなすことが出来たらヴォラプだって立派な人間さ」

 「ふっ。人間に諭される時が来るとは。まぁ良いさ。私を倒した女、ニナ」

 「はい」

 「精々頑張るといい。これからもきっと大変な道のりだろう。だが、お前を生まれた頃から見てきた私の力を上手く使いこなせば、自ずと道も開けるさ」

 「さようなら。もう一人のわたし

 ヴォラプの体は跡形もなく霧散した。

 そして、リュートたちの意識が遠のいていく。

 「…ト?」

 「リュート?」

 誰かの声で目を覚ます。

 「ん…?」

 目の前にはクリアが居た。

 「あぁ、クリア。目が覚めたのか」

 「それはこっちのセリフだよ!リュートが紫色竜と戦いに行ってから二日は経過したよ。ニナは先に目覚めたけどリュートは中々起きなくて…」

 「えっ?そんなに寝てたの俺?」

 「うん。だから心配で…」

 「ごめんな、心配かけて。だが、安心してくれ。ニナはしっかり力を継承したさ」

 「よかった…」

 こうして、ニナは無事に素質解放をし、紫色竜の力を継承したのだった。
しおりを挟む
感想 12

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

セクスカリバーをヌキました!

ファンタジー
とある世界の森の奥地に真の勇者だけに抜けると言い伝えられている聖剣「セクスカリバー」が岩に刺さって存在していた。 国一番の剣士の少女ステラはセクスカリバーを抜くことに成功するが、セクスカリバーはステラの膣を鞘代わりにして収まってしまう。 ステラはセクスカリバーを抜けないまま武闘会に出場して……

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

『急所』を突いてドロップ率100%。魔物から奪ったSSRスキルと最強装備で、俺だけが規格外の冒険者になる

仙道
ファンタジー
 気がつくと、俺は森の中に立っていた。目の前には実体化した女神がいて、ここがステータスやスキルの存在する異世界だと告げてくる。女神は俺に特典として【鑑定】と、魔物の『ドロップ急所』が見える眼を与えて消えた。  この世界では、魔物は倒した際に稀にアイテムやスキルを落とす。俺の眼には、魔物の体に赤い光の点が見えた。そこを攻撃して倒せば、【鑑定】で表示されたレアアイテムが確実に手に入るのだ。  俺は実験のために、森でオークに襲われているエルフの少女を見つける。オークのドロップリストには『剛力の腕輪(攻撃力+500)』があった。俺はエルフを助けるというよりも、その腕輪が欲しくてオークの急所を剣で貫く。  オークは光となって消え、俺の手には強力な腕輪が残った。  腰を抜かしていたエルフの少女、リーナは俺の圧倒的な一撃と、伝説級の装備を平然と手に入れる姿を見て、俺に同行を申し出る。  俺は効率よく強くなるために、彼女を前衛の盾役として採用した。  こうして、欲しいドロップ品を狙って魔物を狩り続ける、俺の異世界冒険が始まる。

処理中です...