異世界を統べるのは人ではなく竜だ

1ta

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第12章 罪竜と素質解放篇

第146話 純潔、解放

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 リュートとニナは何も無い真っ暗の空間に居た。

 「ここは…」

 以前来たニナの心象世界と同じ場所だ。

 「ここに紫色竜が潜んでいるのでしょうか」

 ニナが辺りを散策するが特に何も見つからない。

 「居ない?そんなはずは…」

 考え込むリュートの背後にニナが回り込み、短剣を突き刺そうとした。

 キィン!リュートは神刀・夢幻白夜でニナの攻撃を塞いだ。

 「そんなことだろうと思ってたぜ、紫色竜!」

 「私の攻撃をいとも容易く防ぐとは…お前も中々に強くなったようだな」

 紫色竜ヴォラプはニナの体を再び乗っ取っていた。

 「せっかくこの女の中でひっそり魔力を蓄えていたというのに、ブレイズが邪魔をしてくれたようだな?」

 ニナの顔、声でベラベラと話すヴォラプは無性に腹が立つ。

 「…」

 リュートは無言で神刀・夢幻白夜を構える。

 「お前は馬鹿か?今の私を切れば彼女も傷つくぞ?」

 「わかっているさ」

 すると、ニナの様子が一変する。

 「私の…」

 「何!」

 「私の体から出て行ってください!」

 ニナは自身の力で取り付いていたヴォラプを引き剥がした。紫色の竜がニナの体から這いずり出る。

 「馬鹿な…!この女のどこにそんな力が?この女は心も感情もない女の筈だろう!」

 「ニナは俺たちと過ごして変わったんだ!いつまでもお前の思い通りになると思うなよ!」

 「クソ!だが、ここでお前らを倒してしまえば、私の糧になる!遠慮なく死ぬがいい!」

 「ニナ!今の君はもうこんな竜なんかに負けるような人間ではないはずだ!」

 「はい!私は…私はリュートさんや皆さんの為に、まだまだ強くなりたい。いや、なります!」

 ドクンッ!ニナの身体の内側から力が溢れ出す。

 『心理障壁決壊コアバリア・デストラクションを確認しました。素質解放クオリティ・リベレーションが発生します』

 「うあぁぁぁぁぁぁぁ!」

 ニナの体から紫色の煙が溢れ出し、体を包み込む。

 「これが素質解放…」

 ニナの姿は変化していた。サレナと同様に目の色が普段と変わり、髪の毛は先端が霧のように揺らめき、裸の状態の体を紫色の靄が大事な所を隠すように覆う。

 「行け!ニナ!」

 「はい!」

 「素質解放など、私には無駄だ!色欲の鎖ラストバインド

 ヴォラプの体から複数の鎖が放たれ、ニナの体を縛り付ける。

 「消滅の霧デリート・ミスト

 ニナの体を覆っていた霧がヴォラプの鎖を捉え、跡形もなく消滅させた。

 「ぐっ…圧倒的に不利なこの実力差。これは間違いなく『純潔』の…」

 「貴方のような最低な竜とはおさらばです。純潔の刃チャステティ・ダガー

 霧が無数の刃に変形し、ヴォラプは跡形もなくズタズタに切り裂かれたのだった。
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