異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第12章 罪竜と素質解放篇

第156話 悪性体

　ブレイズとデザイアから別れ出た竜の肉体は意志を持ち、リュート達の前に立ちはだかった。

　「どうなってんだこれは…？」

　「すまん！わしの術では、完璧に反転出来なかったようじゃ。今の二人の主人格は人間体の方に収まったが、お主たちの中にあった誰もが持つ悪意が竜の姿として分裂したようじゃ」

　「つまり、こいつらを倒さないと行けない訳か！」

　「ふっ。お前たちに俺が止められるかな？」

　「さぁ。貴方たちも私の糧にしてあげるわ！」

　悪性ブレイズと悪性デザイアがリュート達に襲い掛かる。

　「金の剣山ゴールド･ソードマウンテン！」

　「熱域ヒート･ゾーン！」

　二竜の攻撃が合わさり、大量の熱々になった金の剣が床から生えてくる。全員が後ろにさがり回避する。

　「ちっ。どうやら完全に俺の力がそっちに行ってるみたいだな…」

　「私の力を取ろうなんて生意気な分体ね」

　「すまないマスター。迷惑を掛けてしまったな…」

　「いいえ。ブーちゃんもイモージェンさんも何も悪くありません！悪いのはあの悪いブーちゃんですよ」

　「ローザと言ったかしら？あなたにも迷惑かけるわね」

　「気にしてないわ。私の為でもあるもの」

　「行けるか？オリアナ、ローザ？」

　「はい。やってみますー！」

　「やるわ！」

　「生意気な娘にはこれを上げるわ！金の鎖ゴールド･チェーン」

　悪性デザイアはローザに金の鎖をけしかけた。

　「残念」

　金の鎖が絡みついたローザは分身だった。

　「背後ががら空きよ！形なき魔器ノーデモンズ･大鎌形態サイスモード！」

　ローザの手元に巨大な鎌が出現する。
　
　「はあぁぁぁ！」

　ズバンッ！悪性デザイアは真っ二つに切り裂かれた。悪性デザイアはそのまま動かなくなった。

　「やるわね！」

　「ちっ。デザイアがやられたか…だが、俺にはこの力がある！炎域フレアゾーン！」

　ブレイズの周囲が自然発火し始める。

　「久しぶりに行きますよムーちゃん！こんな炎に私たちは負けません！」

　「まかせて！ごしゅじん！」

　オリアナが繰り出したスライムのムーが、ブレイズの元へ突撃する。

　「ぼくだってあれからつよくなったんだ！」

　悪性ブレイズの頭上に水で出来た剣が出現する。

　「何っ！」

　水は一瞬で蒸発し、蒸気がブレイズの視界を塞ぐ。

　「あれから魔石マナジュエルをたべつづけたら、みずまほうがつかえるようになったんだ！くらえ！水貫きアクア･レーザー！」

　高圧の水がブレイズの脳天を貫いた。

　「がはぁ！まさかスライム如きに…敗れるとは…」

　悪性ブレイズはそのまま機能停止した。

　「やりましたー！さすがムーちゃんですー！」

　「先輩…流石だ…」

　悪性ブレイズと悪性デザイアはローザとオリアナ(ムー)によって撃破されたのだった。