異世界を統べるのは人ではなく竜だ

第15章 闇との決戦篇

第199話 素質と感情

　ヴォイドの闇がルージュを軽々飲み込む。

　「今度こそさらばだ」

　「まだですよ…」

　「ほう？あの闇を耐えるのか？」

　「あなたは絶対に許しません！皆さんを傷つけたあなたを！」

　『素質解放クオリティ･リベレーションが発生します』

　ルージュを飲み込んだ闇が全て魔力へと変化していく。その魔力と自身から溢れ出す魔力を練り上げ身に纏う。ルージュは素質解放状態に覚醒した。

　「な、何だこの力は！魔力の炎？」

　「この姿になった私は強いですよ！勤勉の魔弾インダストリー･ブレット！」

　ルージュがそう唱えると、ルージュの魔力に燃える体から弾けた炎が弾丸状に変化する。次の瞬間に弾丸はヴォイドの四肢を貫いていた。

　「み、見えん！こちらも守りを固めさせてもらおう。纒わり付く闇アラウンド･ダーク」

　ヴォイドは闇で出来た衣に覆われた。そして、傷がみるみる回復して行った。

　「どんどん行きますよ！右手に炎！左手に氷！」

　ルージュの右手には炎が宿り、左手には氷が宿る。

　「融合魔法ユナイトマジック･勤勉の氷炎インダストリー･アイスフレイム！」

　ルージュが両手を前に突き出すと、ヴォイドの懐から広がるように炎と氷の渦が巻き起こる。

　「ぐっ！なんて威力だ！」

　「まだまだ！右手に水！左手に雷！融合魔法･勤勉の雷水インダストリー･ライトニングバブル！」

　さらにヴォイドの背中付近で雷を纏った水が炸裂する。

　「小癪な！」

　二つのとてつもない威力の魔法により、ヴォイドの闇の衣は消し飛んだ。

　「想定外の強さだ！」

　「当たり前です！復讐しか脳が無いあなたでは絶対に私には勝てません！私は今までもこれからも『歓喜』を求めて戦い続けます！リュートさん私に力を！」

　『感情の規定値を突破しました。感情覚醒エモーション･アウェークニングを承認します』

　突然ルージュの魔力が膨れ上がる。それはヴォイドの認識の遥か向こう側だった。

　「ば、馬鹿な！何だこの魔力量は…、まるで…」

　「これはリュートさんの…？この力なら行けます！」

　ルージュは一瞬でヴォイドの遥か頭上に移動し、右手をヴォイドの方へ構える。

　「勤勉の喜びインダストリー･ディライト！」

　ルージュの右手が輝いたと思った次の瞬間、この世には存在しない程の熱量の魔力の波動がヴォイドの身を焼いた。その光景はまるで天からの罰だった。

　「ぐおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ！クソぉぉぉぉ！」

　ルージュの一撃はベルデ王国に巨大なクレーターを作ることとなったのだった。