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少女は夢の中

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お母さん!やだよ!死なないでよ!

やだ、やだやだやだやだやだやだ

ねぇ!もっといい子になるから!

お母さんについていくから!だいの面倒も私が見る!

だから死なないで!

嫌だ…いやだあああああああああああああ
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「!?」

目が覚めると泣いていた。
思い出したくない頃の夢。

「ねこー?朝だよー、遅刻するよー」

「・・・はーい」

大嫌いな人が夢に出てくるなんて…
1日の出だしは最悪。
ネクタイは上手く結べない、イヤホンも充電を忘れた…

「はぁ…」

無意識にため息が出てしまう。
私の悪い癖だ。
さて、そろそろ家を出ないと遅刻しちゃうな…

「いってきまーす…」

「いってらっしゃーい!あっ、今日お父さん帰り遅いから夕飯よろしくねー」

「…」ガチャ

お母さんがいれば、こんな気持ちにならないのかな。

私はお父さんの言っていたことを無視して学校に向かった

ーーーーーーーーーーーーー
キーンコーンカーンコーン
起立、礼、着席
「はい、じゃあ今日は」

つまらない一日が始まった。
1時間目は歴史…嫌だなぁ…
と思いながらノートをとっていた。
でも、だんだん飽きてきた。

んー、どうしよう…このまま寝ちゃうとなぁ…
あぁ…今日はあのノート持ってきてたかな…?

私は先生が見ていないすきにカバンの中を探す

ガサゴソガサゴソ…
あった!

私が取りだしたのは表紙には何も書かれていないノート。
でも、開くと文字が沢山書いてあるノート。
全部自分が書いた文字。自分が書いた物語。
私の望んだことをそのまま物語にする。
創作ノート、というやつだ。

創作と言えばみんな絵を想像すると思う。
けれど、私は絵が下手だ。周りから叩かれるのが怖い
だから、文字にする。
小説は大好きだ。
だから、語彙力にはそこそこの自信がある。

私はノートを開き先日書いていた物語を読んでみる。

寝ぼけて書いたのかな、文章が変だな…
続きかこうと思ったけど思ったより変だったなぁ…

私はページをめくる。

また新しい物語(せかい)を書こう。
今度はどんな物語がいいかなぁ…

毎日同じことを繰り返しながら今日が終わっていく。


とある日の夜…
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『ねぇ…』

ん…?

ここは…どこ?

『あなたは、なんのために物語をつくってるの?』

物語を…つくる理由…
そもそも私は誰に話しかけられてるの…?

『こたえてよ、ねぇ。』

それは…

『あなたがずっと終わらせてくれない物語。そのせいで私たちがくるしい』

あなたたちが苦しい?
わけがわからない、私がつくった物語でなぜあなたが

『おわらせてよ。』
『おわらせろ』
『くるしい』『悲しい』『死にたい』『早く殺して』
『助けて』『嫌だ』『怖い』『お母さん』『お母さん』『お母さん』『お母さん』

頭の中に色んな言葉が入ってくる。
不幸な言葉…私が誰かを…キズツケタ?
でも、私だって…私が望んだ物語をつくりたいだけ…
おかしいことなんて…
だって、誰だってそうだもん…望んだものが手に入らないなら…つくるしかない、

『ねぇ、もう一度聞くよ?あなたが物語をつくるわけは?』

私が…物語をつくるわけ…は…
私の望む、お母さんが欲しかったから。
私の望む、世界が欲しかったから。

お母さん、いつもいつも小学生の私に家事とか全部任せてきた。
お母さん、クラスのお友達と遊ばせてくれなかった。

悲しかった、苦しかった。
あの頃の私はお母さんに好かれたいが一心でずっとお母さんに従ってきた。
お母さんはパチンコに行くって言っていつも早くに出ていった。
こわかった包丁だって頑張って使えるようにしたし、
真冬に手が真っ赤になっても洗濯物をほしてた。
弟の…だいの面倒も見た。
小学生の私にはとても苦痛だった。

頑張って頑張って、どんなに頑張ってもお母さんは褒めてくれなかった。
いつもいつも怒ってばっかり。
小学校の卒業式すら怒られた。

それからすぐあとにお母さんはいった、
「あのね、お母さんとお父さん離婚しようと思うんだけど、ねこはどっちについてく?」
その頃の私は離婚という言葉がよくわからなかった。
でも、離れ離れになっちゃうことはわかった

私はお父さんについて行きたかった。
家事なんてしなくていい、ジュースとお菓子を買ってくれる、公園で遊んでくれる。
お父さんは甘えさせてくれる
でも、そんなこと言えるわけなく黙ってしまった私

「ははっ…ここまで育ててきた子供にもみはなされるのか…」

そう言ったらお母さんは部屋に行ってしまった

その夜、お母さんは自殺に失敗した。

わけがわからなかった。
私をおいていこうとした。先に楽になろうとした
許せない、あんなに愛されたかった母親を憎んだ、恨んだ。苦しめばいいと思った。


私が物語をつくる理由…それは…
私が本当に望む世界が見たいから。
私をもっと甘えさせて欲しいから。
だから、何個も何個も世界を作った。
世界を作って自分の納得いく物にした。
文章が変だからなんて嘘、自分が納得のいく形になったから書くのをやめだけ。
これ以上つくり続けたら自分が望む世界ではなくなってしまう気がしたから。

『そう、そうだよね、あなたのせいで、あなたのつくった物語のせいでたくさんの人が苦しんでるの。あなたみたいになってしまう。ねぇ?』

ごめんなさい、ごめんなさいごめんなさい
ダメな子でごめんなさい、何も出来なくてごめんなさい、誰かに愛されたくて、愛される方法がわからなくて、主人公を自分と置き換えてずっと愛されてる気持ちになってた。
馬鹿でごめんなさい、アホでごめんなさい


ごめんなさい


『わかってくれたならいいよ。これからあなたが何をすればいいかわかるね?』

はい…

『ふふっ、待ってるね、でも授業中に書くのはやめてあげな。世界の住人たちも納得のいく世界になれないからね、またね。』
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気がつくと朝だった。

「ねーこー?ちこくする…あれ、起きてたんだ、昨日はありがとね、ほら着替えなー」

またつまらない一日が始まる。
でも、いつもと違う日常、
私は授業中に創作ノートを出さなくなった。
真面目に授業を受けた。…たまに寝てるけど

創作ノートは家で書くようになった。
でも、私はまだ新しい物語をつくっていない。
先に、終わらせてあげないといけない物語があるから。
私がつくってあげないといけない、
ハッピーエンドがあるから

END
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