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ひえひえなお話
薬草園の主人
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どこかの世界に大きな薬草園がありました。そこはひねくれた老人が一人で管理していました。
ある日のこと、一人の冒険者が薬草園を訪れました。彼は魔物討伐のために回復の薬草が必要だから寄越せと言いました。
けれども老人は回復の薬草だと偽って、わざと別の効果をもたらす薬草を渡しました。受け取った冒険者は何も言わずに行ってしまいました。
別の日、また一人の冒険者が薬草園を訪れました。彼は回復の薬草に加え、魔物の毒に侵された時のために毒消しの薬草が欲しいと言いました。
けれども老人は回復の薬草と毒消しの薬草の効果をわざと逆にして教えました。それを聞いた冒険者は軽く礼を言って去っていきました。
別の日、またまた一人の冒険者が薬草園にやってきました。彼は老人に対し怯えつつも一通りの薬草をいただけませんかと深く頭を下げました。
老人はそれぞれの薬草を渡しながら、わざと嘘の説明をしました。
するとその冒険者は遠慮がちにこう尋ねてきたのです。
「あの、失礼ですが、僕が図鑑で読んだ内容と違います。どちらを信じれば良いのですか?」
老人は驚きました。これまで薬草を受け取った冒険者達は老人の言葉に一切疑問を抱かなかったのです。
「図鑑を前もって読んでいるとは珍しい。何故だ」
その冒険者は頭を掻きながら答えました。
「僕は幼い頃から植物を観察したり育てたりするのが好きなのです。今は亡き祖父に買ってもらった植物図鑑は今でも宝物です」
理由を知った老人は自身が嘘の説明をしたことを詫びました。そして一つの頼みごとをしたのです。
「おまえさん、冒険者を辞めてこの薬草園を継いでくれぬか」
「良いのですか?いやでも、僕なんかでよろしいのでしょうか」
老人は笑って頷きました。
「良いに決まっておる。私はおまえさんのような人間を待っていたのだ」
そして次の瞬間、老人は姿を消してしまいました。
場に残された冒険者は改めて薬草園の方を見て、老人の正体に気がつきました。
薬草園の入口に、先程までは無かった古いカカシが立っていたのです。
冒険者はカカシの正面に立つと、これまでとは違う堂々とした顔つきで言いました。
「これまでお疲れ様でした。これからは僕が精一杯お世話しますから、どうか見守っていてください」
するとカカシはひとりでに前へと傾きました。冒険者は慌ててそれを支え、元の位置に戻しました。けれども彼にとってカカシの様子はまるで「よろしく頼んだぞ」と一礼しているように思えました。
それからというもの、主人が変わったことをきっかけに薬草園の評判は良くなりました。彼の優しい性格に加え、培ってきた知識と技術の力で薬草の品質も格段に上がったのです。
こうして薬草園は、冒険者達にとってますます必要不可欠な存在となりました。
ある日のこと、一人の冒険者が薬草園を訪れました。彼は魔物討伐のために回復の薬草が必要だから寄越せと言いました。
けれども老人は回復の薬草だと偽って、わざと別の効果をもたらす薬草を渡しました。受け取った冒険者は何も言わずに行ってしまいました。
別の日、また一人の冒険者が薬草園を訪れました。彼は回復の薬草に加え、魔物の毒に侵された時のために毒消しの薬草が欲しいと言いました。
けれども老人は回復の薬草と毒消しの薬草の効果をわざと逆にして教えました。それを聞いた冒険者は軽く礼を言って去っていきました。
別の日、またまた一人の冒険者が薬草園にやってきました。彼は老人に対し怯えつつも一通りの薬草をいただけませんかと深く頭を下げました。
老人はそれぞれの薬草を渡しながら、わざと嘘の説明をしました。
するとその冒険者は遠慮がちにこう尋ねてきたのです。
「あの、失礼ですが、僕が図鑑で読んだ内容と違います。どちらを信じれば良いのですか?」
老人は驚きました。これまで薬草を受け取った冒険者達は老人の言葉に一切疑問を抱かなかったのです。
「図鑑を前もって読んでいるとは珍しい。何故だ」
その冒険者は頭を掻きながら答えました。
「僕は幼い頃から植物を観察したり育てたりするのが好きなのです。今は亡き祖父に買ってもらった植物図鑑は今でも宝物です」
理由を知った老人は自身が嘘の説明をしたことを詫びました。そして一つの頼みごとをしたのです。
「おまえさん、冒険者を辞めてこの薬草園を継いでくれぬか」
「良いのですか?いやでも、僕なんかでよろしいのでしょうか」
老人は笑って頷きました。
「良いに決まっておる。私はおまえさんのような人間を待っていたのだ」
そして次の瞬間、老人は姿を消してしまいました。
場に残された冒険者は改めて薬草園の方を見て、老人の正体に気がつきました。
薬草園の入口に、先程までは無かった古いカカシが立っていたのです。
冒険者はカカシの正面に立つと、これまでとは違う堂々とした顔つきで言いました。
「これまでお疲れ様でした。これからは僕が精一杯お世話しますから、どうか見守っていてください」
するとカカシはひとりでに前へと傾きました。冒険者は慌ててそれを支え、元の位置に戻しました。けれども彼にとってカカシの様子はまるで「よろしく頼んだぞ」と一礼しているように思えました。
それからというもの、主人が変わったことをきっかけに薬草園の評判は良くなりました。彼の優しい性格に加え、培ってきた知識と技術の力で薬草の品質も格段に上がったのです。
こうして薬草園は、冒険者達にとってますます必要不可欠な存在となりました。
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