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転移と勘違いと不本意な出世
第5話 失った3億円と自己保身の勝利
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(完っ全にタイミングを逃した……)
俺は、突然の敵機襲来による混乱のせいで、ザッツに3億円を宇宙に飛ばしてしまった事を話すタイミングを、完全に逃していた。
目の前では、ザッツとエライア姫がトランプに興じている。
地球でいうところのババ抜きだ。
(それ……二人でやってて楽しいのか? 今は戦闘中だぞ? 時と場合を考えろよ)
今の心理状況では、心なしかツッコミにも熱が入らない。
なんせ3億円だ。3億円を補填しようと思ったら、利益率5パーセント想定で、大体60億の売上が必要になる計算だぞ。
売上60億……。さすがに無理がある。
俺が深い思考(浅い利益計算)の海を漂っていると、唐突にザッツが話しかけてきた。
「そういえば、アストラさん。洗車は終わったのか?」
俺は肩をビクリと跳ね上げながら、ザッツの方を見た。「本当の事を言うきっかけ」だ。
しかし、間を空けたことにより、事の重大さを再認識してしまった俺は、本能的に自己保身を選んでしまった。
「い、いや。まだちょっと、な……」
なに言ってるんだ俺は! これでは横領犯みたいじゃないか!
「そうか。あれだけ汚れてたら仕方ないよな。素直に捨てた方が――」
ザッツがそう言いかけた時、戦場からの無線連絡が響き渡った。
『ザザッ! メーデー! メーデー! こちらはクラウザーム・ヴァイロン! 敵機多数! 苦戦を強いられている! 至急応援を頼む!』
俺とザッツ、そしてエライアが同時に無線の方を見た。
「アストラさん! 応援要請だ! すぐにパイロットが来るぞ、至急出撃の準備を――」
ザッツがそう叫び声を上げた瞬間。その声をかき消さんばかりに、敵と味方の混線した無線が聞こえて来た。
『ザッ! 敵の背後に突如友軍機が現れたぞ! 速い! 速すぎる!』
『な、なんだあれは! 【廃、棄、処、分】と書いてあるぞ! バカな! 我々相手にはゴミで十分という事か! うわぁぁぁぁぁ! ザザッ!』
『ザッ! 敵艦隊の陣形は、混乱により総崩れだ! この混乱に乗じて反撃態勢をとれ! ザザッ!』
その無線を聞いたザッツは、目が飛び出そうなくらいに見開き、トランプをパラパラと落とした。
「アストラさん! あんたまさか!」
(ヤバい、バレた。怒られる!)
俺は観念した。傷が広がらないうちに、ちゃんと全部話して謝ろう……。
「あぁ、そのまさかだ……」
俺のその言葉が、静まり返った倉庫内に虚しく響くと同時に、ザッツが感嘆の声を上げた。
「やはりそうか! 素晴らしい!」
(……へ?)
エライアも、持っていたトランプをバサァと上に投げながら称賛の声を上げた。
「洗車をすると言い出した時に、ここまで計算されていたのですね! 敵を混乱させるために、あえて【廃棄処分】の文字を残すなんて! さすが、知将として知られたクラウス・クロス将軍の子孫ですわ!」
(将軍の子孫……? このヘルメットのせいか? お前たちのなかでそういうことになっているのか?)
さっきまでの〝すべて話す〟という、俺の決意は完全になくなった。
よし、ごまかそう。『空気を読んで流れに任せる』それが、会社員の鉄則だ。
「ま、まぁな。廃棄処分予定の船を利用した方が、コスパがいいだろ? 経費削減ってヤツだ……」
ザッツが、ぷるぷると震え始めた。
「廃棄処分予定の民間機を、高機動型に一瞬でチューンナップして、軍事転用するなんて! あんた整備士としての腕も一流なんだな!」
(いや、洗車しただけだし……)
軍本部が総力を挙げて、あの謎の友軍機の出どころを探し始めたことを、俺は知る由もなかった。
俺は、突然の敵機襲来による混乱のせいで、ザッツに3億円を宇宙に飛ばしてしまった事を話すタイミングを、完全に逃していた。
目の前では、ザッツとエライア姫がトランプに興じている。
地球でいうところのババ抜きだ。
(それ……二人でやってて楽しいのか? 今は戦闘中だぞ? 時と場合を考えろよ)
今の心理状況では、心なしかツッコミにも熱が入らない。
なんせ3億円だ。3億円を補填しようと思ったら、利益率5パーセント想定で、大体60億の売上が必要になる計算だぞ。
売上60億……。さすがに無理がある。
俺が深い思考(浅い利益計算)の海を漂っていると、唐突にザッツが話しかけてきた。
「そういえば、アストラさん。洗車は終わったのか?」
俺は肩をビクリと跳ね上げながら、ザッツの方を見た。「本当の事を言うきっかけ」だ。
しかし、間を空けたことにより、事の重大さを再認識してしまった俺は、本能的に自己保身を選んでしまった。
「い、いや。まだちょっと、な……」
なに言ってるんだ俺は! これでは横領犯みたいじゃないか!
「そうか。あれだけ汚れてたら仕方ないよな。素直に捨てた方が――」
ザッツがそう言いかけた時、戦場からの無線連絡が響き渡った。
『ザザッ! メーデー! メーデー! こちらはクラウザーム・ヴァイロン! 敵機多数! 苦戦を強いられている! 至急応援を頼む!』
俺とザッツ、そしてエライアが同時に無線の方を見た。
「アストラさん! 応援要請だ! すぐにパイロットが来るぞ、至急出撃の準備を――」
ザッツがそう叫び声を上げた瞬間。その声をかき消さんばかりに、敵と味方の混線した無線が聞こえて来た。
『ザッ! 敵の背後に突如友軍機が現れたぞ! 速い! 速すぎる!』
『な、なんだあれは! 【廃、棄、処、分】と書いてあるぞ! バカな! 我々相手にはゴミで十分という事か! うわぁぁぁぁぁ! ザザッ!』
『ザッ! 敵艦隊の陣形は、混乱により総崩れだ! この混乱に乗じて反撃態勢をとれ! ザザッ!』
その無線を聞いたザッツは、目が飛び出そうなくらいに見開き、トランプをパラパラと落とした。
「アストラさん! あんたまさか!」
(ヤバい、バレた。怒られる!)
俺は観念した。傷が広がらないうちに、ちゃんと全部話して謝ろう……。
「あぁ、そのまさかだ……」
俺のその言葉が、静まり返った倉庫内に虚しく響くと同時に、ザッツが感嘆の声を上げた。
「やはりそうか! 素晴らしい!」
(……へ?)
エライアも、持っていたトランプをバサァと上に投げながら称賛の声を上げた。
「洗車をすると言い出した時に、ここまで計算されていたのですね! 敵を混乱させるために、あえて【廃棄処分】の文字を残すなんて! さすが、知将として知られたクラウス・クロス将軍の子孫ですわ!」
(将軍の子孫……? このヘルメットのせいか? お前たちのなかでそういうことになっているのか?)
さっきまでの〝すべて話す〟という、俺の決意は完全になくなった。
よし、ごまかそう。『空気を読んで流れに任せる』それが、会社員の鉄則だ。
「ま、まぁな。廃棄処分予定の船を利用した方が、コスパがいいだろ? 経費削減ってヤツだ……」
ザッツが、ぷるぷると震え始めた。
「廃棄処分予定の民間機を、高機動型に一瞬でチューンナップして、軍事転用するなんて! あんた整備士としての腕も一流なんだな!」
(いや、洗車しただけだし……)
軍本部が総力を挙げて、あの謎の友軍機の出どころを探し始めたことを、俺は知る由もなかった。
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