「ただの経費削減ですが?」 銀河最弱の補給艦隊が、俺の「在庫管理」で最強になったようです

空木 架

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転移と勘違いと不本意な出世

第7話 皇帝の玉座と会計簿

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 俺は、エライアと共に巨大な広間へ連れられてきていた。

「エグゼウス皇帝陛下! 小型機のことを知るものを連れてまいりました!」

 俺の前方で、ヘルディナンドが玉座に座っている皇帝に向かって報告を始めた。
 俺の両脇には、胸に銃を抱えた2名の兵士が立っている。
 俺は、処刑されるのではないかと、内心ビクビクしながらその光景を眺めていた。

 姫であるエライアは、当然兵士がつくこともなく、俺から少し離れた位置に、一人で立っていた。全身廃オイルまみれで、床に黒いシミを作りながら……。

 眼の前の玉座には、いかにも偉そうな男が座っている。しかし、偉そうな身なりをしているだけで、その威厳は皆無だった。
 皇帝はヘルディナンドの声が全く聞こえていないようだ。

「エライアちゅあ~ん、今日はどこへお出かけしてたんでちゅかぁ? パパ寂しかったでちゅよ~!」

(おい。お前、仮にも皇帝じゃねぇのかよ。娘を可愛がるのは構わないが、その娘、産業廃棄物のような匂いを撒き散らしてるぞ! もう少し威厳ってものを――)

 俺が心のなかで、そうツッコもうとしたその時、広間に凛とした声が響き渡った。

「あなた。皆の前でエライアを可愛がるのは、もう少しお控えください。皆が困惑しております」

 俺が声がした方を見ると、そこにはエライアによく似た顔立ちの女性が立っていた。
 おそらく皇后だろう。
 広間にずらりと並んで立っている衛兵達は皆、その言葉を聞いた瞬間に〝助かった〟という顔で深く頷いていた。
 皇帝は、慌てて取り繕うかのように、ヘルディナンドの方を向いた。

「おっと。失礼。で? ヘルディナンド。なんだったかの?」

「は! この男、アストラ・アエットが、あの小型機を戦場に差し向けた者です」

(いや、差し向けたわけじゃ……)

 皇帝の顔が急に険しくなる。

「ほう? お前はどのような意図であの小型機を戦場に送り込んだのだ?」

「え? あ、私はただ洗車していただけで……」

「……洗車? どういうことだ?」

(まぁそう思いますよね。俺だってそう思う……)

 その時、エライアが口を挟んだ。

「お父様! このヘルメット……いや、この方は謙遜して、『洗車していただけ』とおっしゃっておりますが、実際は戦闘が始まることを予測し、計画的に小型機を送り込んだのですわ!」

(違う! やめろ! 話を大きくするんじゃない! 後戻りできなくなるだろ!)

「なんと!? それは本当か!? エライアちゅあん!」

「本当ですわ! この方はあの伝説の知将、クラウス・クロス将軍の子孫ですもの! それくらいのことは朝飯前ですわ! あのヘルメットが証拠ですのよ!」

「なんと!? クラウス・クロス将軍の子孫とな!? それは誠か!?」

(あ、ダメだ。これはもう止められないやつだわ……。早く帰りたい)

 俺は流れに身を任せることにした。自分の勝手な意見で、会議の流れを遮らないのが、会議時間を短くする秘訣なのだ。

「えぇ。そうですね。家系図上はそのようになっているみたいです。……たぶん」

 俺のその言葉に、まわりの兵士たちが一斉にざわついた。

「おぉ! 伝説の将軍の子孫だと!」
「そう言われてみれば、全身からオーラを感じるぞ!」
「あれが、伝説のヘルメットか!」

(もうやめようよ……。そんなに持ち上げても何も出ないぞ)

 その時、俺が予想もしていなかったことを皇帝が言った。

「アストラよ。そなたを倉庫で眠らせておくのはもったいない。軍の〝戦術顧問〟として働いて貰おう」

「は? せ、戦術顧問ですか?」

「なにか不満でもあるか?」

「……いえ。身に余る光栄でございます」

「それでは、早速明日から頼むぞ。あ、そうそう。人材不足なので、倉庫も兼任で頼むぞ」

(兼任かよ! 人件費を削りたいだけだろ! 中小企業がよくやるやつじゃねぇか! 帝国は本当に大丈夫なのか?)

 俺は、せめてもの抵抗として、一つ提案することにした。

「皇帝陛下。一つだけお願いがあります」

「なんだ? 申してみよ」

「軍の資金状況により、取るべき戦術が変わります。帝国の会計帳簿をすべて見られるようにしていただきたいのです」

(予実管理は大事だからな。まずは余分な経費を洗い出してやる)

「ほう? ……なるほど。兵站や補給の数値から、戦術を分析しようというのか。なかなか斬新な切り口の戦術だな。よかろう。手配させよう」

「ありがとうございます!」

 そして、俺は、新たな役職(兼任)と帳簿を手に入れ、倉庫に戻されることとなった。

「よし! これで、帝国全体の経費削減に取り組めそうだ」

 俺は倉庫に戻るなり、帳簿を詳細にチェックし始めるのであった。
 
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