転生したら、最低の悪女でしたが死にたくないので頑張ります

黒幸

文字の大きさ
17 / 50

17 十三歳になりました。世はなべて事もなし

しおりを挟む
 いつの間にやら、十三歳の誕生日を迎えた。
 二年前は大変だった。
 婚約者を名乗る優柔不断な男の子が現れて、妹を名乗るやかましい女の子が現れたのだから。
 充実しつつも実に騒々しい日々が続いた。

 シエロ・フェーゴ。
 彼の地位は婚約者どころか、婚約していたかどうかもあやふやな関係だった訳で不安定だった。
 私の死なないで長く生きる壮大な計画において、圧倒的に足りないのは戦力だ。
 それも信頼できて、裏切らないで忠実に働く戦力。
 ここが重要になる。
 ならば、シエロを貴重な戦力にすべく利用すればいいじゃない?

 優柔不断で流されやすい性格だから、強気で当たると実によく動いてくれる。
 しっかりと鍛えれば、どうにかなりそうな気がする。
 いや、なってもらわないと困るけど。

「どうにかなると思う?」

 この二年間、ぼっとしていた訳ではない。
 貴重かつ強力な戦力である『鷹(アルコン)隊』のメンバー捜索を続けていたけど、結果は出ていない。
 捜索範囲を広げるか、対象を変える必要を迫られていた。
 そんな中、ひょんなことから知り合いになって、友人と呼べる存在ができた。
 それがヴィーことヴァニーとクロミアだった。

「筋は悪くないと思うよ」

 そう返すのは小柄で小動物みたいな愛らしさに溢れたヴィーだ。
 私よりも二歳下の割に声はハスキーだけど、きらきらと陽光で煌くきれいなハニーブロンドの長い髪と夏の青空を映したような澄んだ青い瞳が印象的な可愛い女の子。
 でも、見た目の割に行動的でアクティブな性格をしていて、動きやすいようにと考えて、いつもショーパンを穿いている。

「そう? もっと鍛えないと……」

 逆に否定的な返しをするのはクロミア。
 年齢は私と同じなのに落ち着いていて、大人っぽい子なのだ。
 あまりにも抑揚がなくて、感情表現も希薄だからヴィーとは対照的だった。
 見た目も対照的で光線の加減で闇色に煌く、パープルブロンドに青いガラス玉のような瞳。
 いつも着ている服が濃いパープルのロングドレスだから、余計に落ち着いて見える。

「そうよね。シエロにはもうちょっと頑張ってもらわないといけないかなぁ」
「うん」
「そう」

 私達の視線の先には広い庭で鬼教官のしごきを受けて、へばってるシエロがいる。
 進歩はしているけど、それほど進んでないのでダイエット停滞期みたいなもの?
 一年はちょっと長い気がするけど。
 私のダイエットはあれから停滞することなく、順調でとりあえず、ルックスは完成した。
 それに比べると進捗なさすぎるとも言える。
 でも、シエロは案外、憎めない子でそれとなく期待もしているのだ。
 どうもこれはイケメンに弱かった母親の遺伝子が影響してるんじゃないかと睨んでいる……。

「世の中、うまくいかないもんよね」
「そんなもんだって。にゃははは」
「…………」

 私がそう嘆きたくなるのも理由がある。
 シエロは十五歳になって、そろそろ結果が出てきてもいいはずなのに一向に成果が上がらない。
 期待していただけに裏切られた感じがする。
 ところがそれで話が終わらない。
 全く、期待していなかった方が結果を出しちゃってるのだ。

 そう。
 異母妹のプレアディだ。

「あぁ、お姉ちゃん? これ、調査結果だよ」
「もう終わったの? 相変わらず、早いわね」
「アディちゃんにかかれば、こんなものよ」

 彼女の名前は言いにくいので愛称をそのまま、名にさせた。
 プレアか、プルか、アディか。
 さぁ、どれがいい? って選択の自由を与えた私は多分、優しいはず?
 彼女が選んだのはアディ。
 呼びやすくなったのはいいけど、相変わらず、反抗的で生意気な妹ではある。

 でも、それほど嫌いにはなれないどころか、むしろ好ましく思いつつ自分がいる。
 前世で叔父しか親族がいなかったせいか、年下の妹という存在に心の拠り所を見つけてしまったのかもしれない。

 彼女は無知で我儘な女の子だったけど、それは周囲の状況がそうさせていただけと判断した。
 要は環境がよろしくないから、歪んだ考えを持ってしまったんだろう。
 そもそもが妹ではあるけど、継げる可能性がミリもないのだと普通に考えると分かるはずなのに変な小説の影響を受けすぎじゃないだろうか。
 どうも話を聞くとアディの母親が、どっぷりと小説の妄想に浸った電波な人だったみたい。
 母親しか家族のいなかったアディが母親の影響を受けないはずがなく……。
 そりゃ、勘違いでざまぁを仕掛けようとしてくる訳よね。

 三つ子の魂百までだから、その妄想癖は簡単に抜けないらしい。
 未だに頭を撫でようとすると「やめるにゃー」と毛を逆立てる子猫みたいな反応をするけど、それも逆に可愛いと思ってる。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

自業自得じゃないですか?~前世の記憶持ち少女、キレる~

浅海 景
恋愛
前世の記憶があるジーナ。特に目立つこともなく平民として普通の生活を送るものの、本がない生活に不満を抱く。本を買うため前世知識を利用したことから、とある貴族の目に留まり貴族学園に通うことに。 本に釣られて入学したものの王子や侯爵令息に興味を持たれ、婚約者の座を狙う令嬢たちを敵に回す。本以外に興味のないジーナは、平穏な読書タイムを確保するために距離を取るが、とある事件をきっかけに最も大切なものを奪われることになり、キレたジーナは報復することを決めた。 ※2024.8.5 番外編を2話追加しました!

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

婚約破棄寸前だった令嬢が殺されかけて眠り姫となり意識を取り戻したら世界が変わっていた話

ひよこ麺
恋愛
シルビア・ベアトリス侯爵令嬢は何もかも完璧なご令嬢だった。婚約者であるリベリオンとの関係を除いては。 リベリオンは公爵家の嫡男で完璧だけれどとても冷たい人だった。それでも彼の幼馴染みで病弱な男爵令嬢のリリアにはとても優しくしていた。 婚約者のシルビアには笑顔ひとつ向けてくれないのに。 どんなに尽くしても努力しても完璧な立ち振る舞いをしても振り返らないリベリオンに疲れてしまったシルビア。その日も舞踏会でエスコートだけしてリリアと居なくなってしまったリベリオンを見ているのが悲しくなりテラスでひとり夜風に当たっていたところ、いきなり何者かに後ろから押されて転落してしまう。 死は免れたが、テラスから転落した際に頭を強く打ったシルビアはそのまま意識を失い、昏睡状態となってしまう。それから3年の月日が流れ、目覚めたシルビアを取り巻く世界は変っていて…… ※正常な人があまりいない話です。

とっていただく責任などありません

まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、 団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。 この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!? ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。 責任を取らなければとセルフイスから、 追いかけられる羽目に。

悪妻と噂の彼女は、前世を思い出したら吹っ切れた

下菊みこと
恋愛
自分のために生きると決めたら早かった。 小説家になろう様でも投稿しています。

断罪現場に遭遇したので悪役令嬢を擁護してみました

ララ
恋愛
3話完結です。 大好きなゲーム世界のモブですらない人に転生した主人公。 それでも直接この目でゲームの世界を見たくてゲームの舞台に留学する。 そこで見たのはまさにゲームの世界。 主人公も攻略対象も悪役令嬢も揃っている。 そしてゲームは終盤へ。 最後のイベントといえば断罪。 悪役令嬢が断罪されてハッピーエンド。 でもおかしいじゃない? このゲームは悪役令嬢が大したこともしていないのに断罪されてしまう。 ゲームとしてなら多少無理のある設定でも楽しめたけど現実でもこうなるとねぇ。 納得いかない。 それなら私が悪役令嬢を擁護してもいいかしら?

「婚約破棄された転生令嬢ですが、王城のメイド五百人に慕われるメイド長になりました。なお元婚約者は私のメイドに土下座中です」

まさき
恋愛
社畜OLとして過労死した私は、異世界の令嬢・アリア・ヴェルナーに転生した。 目が覚めたら、婚約破棄されていた。 理由は「地味で面白みがない」から。 泣く暇もなかった。翌朝、王城のメイド採用面接に向かった。 最初は鼻で笑われた。雑用係からのスタートだった。 でも——前世で叩き込まれた仕事術と、一人ひとりの話を聞く姿勢で、少しずつメイドたちが集まってきた。 厨房が変わった。リネンが変わった。王城全体が変わっていった。 そして就任スピーチで宣言した。 「500人全員の名前を、覚えます」 冷酷と噂される王太子は、静かに見ていた。 悪役令嬢は妨害を仕掛けてきた。 元婚約者は——後悔し始めていた。 婚約破棄された令嬢が、500人に慕われるメイド長になるまでの物語。 なお元婚約者は、私のメイドたちの前で土下座中です。

妹に傷物と言いふらされ、父に勘当された伯爵令嬢は男子寮の寮母となる~そしたら上位貴族のイケメンに囲まれた!?~

サイコちゃん
恋愛
伯爵令嬢ヴィオレットは魔女の剣によって下腹部に傷を受けた。すると妹ルージュが“姉は子供を産めない体になった”と嘘を言いふらす。その所為でヴィオレットは婚約者から婚約破棄され、父からは娼館行きを言い渡される。あまりの仕打ちに父と妹の秘密を暴露すると、彼女は勘当されてしまう。そしてヴィオレットは母から託された古い屋敷へ行くのだが、そこで出会った美貌の双子からここを男子寮とするように頼まれる。寮母となったヴィオレットが上位貴族の令息達と暮らしていると、ルージュが現れてこう言った。「私のために家柄の良い美青年を集めて下さいましたのね、お姉様?」しかし令息達が性悪妹を歓迎するはずがなかった――

処理中です...