転生したら、最低の悪女でしたが死にたくないので頑張ります

黒幸

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28 いざという時、頼りになるのは友

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「……っていう訳なの。どう思う?」

 私の話を聞いたヴィーは死んだ魚のような目になった。
 クロミアはいつも通りの態度でどこ吹く風って、気にしてないように見えるけど、多少は動揺しているようだ。
 かれこれ長い付き合いで彼女のことを見てるから、無表情で無感情のように見えるだけなのだ。
 分かりにくいけど、クロミアも匙を投げるレベルの話だってこと。

 そう。
 私は散々、惚気話を聞かされた。
 一体何を聞かされてるんだろうと現実逃避を始め、脳神経が焼き切れそうになりながらもどうにか耐えた。
 もしかしたら、ステラはこんな話を聞かされて、頭が変になったんじゃないだろうか。
 そう疑いたくなるほどに頭の痛くなる話だった。

 馬鹿兄が悪い人間ではなく、優しい心根を持つ好人物なのは理解した。
 だが、いかんせんやったことが悪手過ぎて、擁護できない。
 頼りがいのある年上の男は可哀想な身の上にある年下のお嬢様に同情した。
 お嬢様は愚痴を一方的に言う。
 男は黙って、聞く。
 そんな関係から、互いに好感を抱くようになった。
 ここまでは理解できる。
 ありえない話ではないし……。

 そこからが擁護できない。
 一線を越えて、関係を持ったのだ。
 これが一度きりであれば、心の迷いや魔が差したと言い訳ができるだろう。
 馬鹿兄は大層な立場にいないから、まだどうにかなる。
 でも、聖女はそういかない。
 立場が立場なだけに面倒なことになるのは確定なのだ。

「まーさー。聖女だからって、やっちゃいけないってことはないよ。にゃはははは」

 ヴィーはそう言って、無理に笑って見せるけど、口が引きつってる。
 無理し過ぎである。

「前例がない訳ではない」

 クロミアもそう言ってくれるけど、視線は明後日の方を見てる。
 目が泳がないのはさすがである。
 多分、そんな前例ないんだと思う。
 クロミアの反応が反応だけに確信した。

「純潔でないと聖女の力が出ないとか、あるんじゃないの?」

 前世で見たファンタジー小説にはそんな設定もあった気がする。
 神様の選んだ聖女だから、意に沿わぬ行動をすれば、加護が外れるのだろうか。
 それとも単なる設定に過ぎないのかは分からない。

「いや。多分、そんなことないと思うんだよねー。でも、『愛の聖女』だからさー。無理なんだと思うよ」

 ヴィーは東の方から、やって来たと言っているからか、件の聖女の国に詳しい。
 バルセロナの町がどれだけ、素晴らしいのかも耳が痛くなるほどに聞いた。
 そんな彼女が言うんだから、聖人はそういうもんなんだろう。

 しかし、彼女の「でも」の後に続いた言葉で分かった。
 『愛の聖女』は言わば、力を貸し与えるようなものらしい。
 その貸し与える対象が不特定多数ではなく、特定の誰かになってしまえば、どうなるのか。

「詰みじゃない?」
「ならば、排除するか? 死人に口なし」
「それは寝覚めが悪いから、却下」

 クロミアは眉一つ動かさずに物騒なことを言う。
 スパイでもないのに何でそういう考え方しちゃうんだろうと思わなくもない。
 ただ、それも一つの手かもしれないと考える自分が怖い。

 いいや、違う。
 本当に馬鹿兄と聖女様をどうにかしなくてもいいのでは?
 そう見せかけるのはありかもしれない。

「他の聖女様に聞くってのはどうよ?」
「そんなことできるの? 無理じゃない?」
「だよねー。冗談だって。にゃっはははは」

 何だか、ヴィーの反応もおかしい。
 誤魔化すように笑ってるけど、どこか不自然だった。
 そもそも、そんな発想が出てこない。
 叔父さんから話を聞いている感じでは聖女の国は、えらく閉鎖的らしい。
 レウス市はおとぎ話の蝙蝠みたいにどっちつかずな立場だ。
 あやふやだから、迂闊な行動を取ったら、それこそ命取りになりそうだし……。
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