ルーシーの平凡なれど幸福な日常

くろいゆき

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ルーシーとアメリーナ2

 ルーシーはもはや彼女のトレードマークとなった大きな籠を手にぽつんと佇んでいた。
 門番のように立ちはだかるのはフィデリテー邸の門だ。
 いくつもの鋭角的な装飾が施され、光が反射する金属製の重厚な作りの門だった。
 まるで訪れる者全てを拒絶する家主の心を代弁しているかのように……。

 遠くで雷鳴が轟く。
 雲行きも急に怪しくなった。
 どんよりとした空模様にルーシーの気分も落ち込んだ。
 ルーシーは常に前向きな考え方ができ、太陽のように明るく周囲を照らすのが取り柄だった。
 しかし、不意打ちには弱い。
 天気の急変と重苦しく立ち込めた黒雲はルーシーの心をいつになく弱らせた。

「お、お化けなんていないんだから」

 恐怖心に対抗しようとルーシーは独り言を零した。
 どういう挨拶をするべきかと思案して、ルーシーははたと気付いた。
 その前に閉まった門をどうにかしなければならないが、彼女の背丈と非力な腕ではとても開けられそうにない。
 どうしたものかとルーシーが困り果てたその時、さび付いた金属が奏でるギギギという耳障りな音と共にフィデリテー邸の門が勝手に開き始めた。

「お入りなさい」

 門が勝手に開き、どこからか聞こえてくるのは落ち着いた女性の声だった。
 これだけでたいがいの人間は恐ろしいと逃げ出すのだが、ルーシーは違った。
 魔女と呼ばれるアメリーナを怖がるどころか、とても凄い人なのだと感動すら覚えていた。

「はーい、お邪魔します」

 アメリーナはその様子を自室で見ていた。
 彼女が所有する魔法の水晶玉は離れた場所の様子を映像として映し出せる。
 言わば監視カメラの映像を映し出すモニターに近いのだ。

 ぺこりと丁寧にお辞儀をしてから、楽しそうに軽くスキップをして邸内へと入って来るルーシーを見て、アメリーナは呆れた。
 しかし、呆れよりも好奇心が彼女の中に芽生えた。
 一切の警戒心を抱かず招かれるまま、のこのこと屋敷に入ってくる見知らぬ子供の純真な心が気になったのだ。

 フィデリテーの門前を訪れた人間は少なくない。
 フィデリテー家の名声とアメリーナの評判は高く、彼女を利用しようと考える輩もいたからだ。
 しかし、アメリーナの心と同じく固く閉じられた門に強く拒絶され、彼女のに逃げ帰る者しかいなかった。
 よしんば勇気を振り絞り悪戯に耐えたとしても開かれた門を何の疑念もなく潜るには勇気だけでは太刀打ちできない。

 ルーシーはそれを難なくやり遂げてしまったのである。
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