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第2章 幼女リリス
第10話 ヘルちゃんとイズン
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魔力を極力、抑えておいたので感謝して欲しいですわ。
何も消滅させようとして、撃った訳ではありませんもの。
ただ、ちょっとばかりは調整を失敗したかもしれませんけど。
「ちょっとぉ! このあほんだらぁ! 死んじゃうでしょうがぁ!!」
ふぅ~ん。
失敗でもなかったようですわ。
彼女も素を出せたのではなくて?
感謝のあまり、声も出せないのかしら?
立ち昇る凄まじい煙が晴れて、ようやく姿が見えたイズンは……あら?
結構、ボロボロに見えますわね。
「何してくれんの? 林檎がこんなに減っちゃったのよ!?」
イズンが左手に抱えている籠にはたっぷりのリンゴが詰まっていましたけど、今は大分、減りましたわね。
どうしてかしら?
リリス、分からないですわ~。
「かんちゃして欲しいでしゅわ。とても、しゅなおにお話出来ましゅでしょう?」
「それはそうなんだけど、死んじゃうって!」
「死なないでしゅわ。だって、ここは死者の国でしゅもの」
「だって、じゃないってば! 死なないのに死ぬっちゅうの!!」
「でも、死なないから、だいじょうぶでしゅわね」
「でも、じゃねぇってば!」
「だって……」
「だぁぁってじゃぁなぁいから! ぜぇはぁ」
あまり、からかうとイズンが倒れてまうかしら?
そろそろやめてあげてもいいんですけど……。
でも、だって、でもでも、だってと言っているだけで面白いですわ。
暫く、遊べそうですわね。
「でも、とても楽しかったでしょう?」
こうして、わたしとイズンは友になったのだ。
「この本に書いてあるのでしゅわ」
「違うからね。あれはあたしが一方的にヤラレタだけって言うの。そういうのは本の中だけ!」
イズンはわたしが見せた本を十六分割して、きれいに細切れにすると全否定をしてきましたの。
確かに書いてありましてよ。
男の人が殴り合いをして、『さすがだぜ、兄貴は』『お前もだ』とガッチリと握手をして、友情が深まると書いてありましてよ!
「そういうのは男がやりたがるだけでしょ。女はもっと分からないようにやるものなんだから」
そう言って、遠い目をするイズンの姿はどこか、大人びて見えますわ。
人間で言ったら、十歳くらいの見た目なのに不思議ですわね。
「だから、あたしの顔色を窺わないで本気でやってくるあんた達兄妹は好きよ」
「もっと、ヤラレタイなんて、変わった趣味でしゅわね」
「違うからねっ。その物騒な爪をしまいなさいよ」
ちょっとした冗談で舌なめずりをしながら、爪をうっとりとした表情で見ただけなのに本気にするなんて。
面白いですわ。
アグネスだったら、小一時間ほどは説教と言う名の淑女講義が始まりますもの。
「あんた達おかしいからね! あの変態銀髪は何て言ったと思うの?」
「おにいちゃまは変態ではありましぇんわ。かなりお馬鹿なだけでしゅわ!」
「それはそれで酷くない?」
でも、本当のことですもの。
お兄様にとっての判断基準とは食べられるか、食べられないかの二択しかないのでは? と思うくらいに脳が残念ですわ。
「あいつね。あたしのことを食べたいって、言ったのよ。あぁ、こいつも同じかと思ったら、違ったの。『お前は頭からマルカジリにすると美味しそうである』と満面の笑顔で言ったのよ! 鳥肌が立って、ゾワッとしたけど初めてだったから、嬉しかったわ」
「まぁ、おにいちゃまの考えそうなことでしゅわね」
「だから、あたしはここが好き。ずっと、ここにいたいなぁ……」
軽く溜息を吐きながら、再び、遠い目をしているイズンを見ているとそのまま、消えてしまいそうに見えましたの。
「ずっと、ここにいれば、いいのでしゅわ」
「うん」
イズンは少し、驚いたように目を瞬かせてましたけど、頷いてくれましたの。
彼女の目が潤んで、僅かに光る物が見えたのは気のせいかしら?
後に少女と呼ばれる見た目に成長したわたしとイズンが『真実の愛』について、ある賭けをすることになるのですけど、それはまた、別の機会ですわ~。
何も消滅させようとして、撃った訳ではありませんもの。
ただ、ちょっとばかりは調整を失敗したかもしれませんけど。
「ちょっとぉ! このあほんだらぁ! 死んじゃうでしょうがぁ!!」
ふぅ~ん。
失敗でもなかったようですわ。
彼女も素を出せたのではなくて?
感謝のあまり、声も出せないのかしら?
立ち昇る凄まじい煙が晴れて、ようやく姿が見えたイズンは……あら?
結構、ボロボロに見えますわね。
「何してくれんの? 林檎がこんなに減っちゃったのよ!?」
イズンが左手に抱えている籠にはたっぷりのリンゴが詰まっていましたけど、今は大分、減りましたわね。
どうしてかしら?
リリス、分からないですわ~。
「かんちゃして欲しいでしゅわ。とても、しゅなおにお話出来ましゅでしょう?」
「それはそうなんだけど、死んじゃうって!」
「死なないでしゅわ。だって、ここは死者の国でしゅもの」
「だって、じゃないってば! 死なないのに死ぬっちゅうの!!」
「でも、死なないから、だいじょうぶでしゅわね」
「でも、じゃねぇってば!」
「だって……」
「だぁぁってじゃぁなぁいから! ぜぇはぁ」
あまり、からかうとイズンが倒れてまうかしら?
そろそろやめてあげてもいいんですけど……。
でも、だって、でもでも、だってと言っているだけで面白いですわ。
暫く、遊べそうですわね。
「でも、とても楽しかったでしょう?」
こうして、わたしとイズンは友になったのだ。
「この本に書いてあるのでしゅわ」
「違うからね。あれはあたしが一方的にヤラレタだけって言うの。そういうのは本の中だけ!」
イズンはわたしが見せた本を十六分割して、きれいに細切れにすると全否定をしてきましたの。
確かに書いてありましてよ。
男の人が殴り合いをして、『さすがだぜ、兄貴は』『お前もだ』とガッチリと握手をして、友情が深まると書いてありましてよ!
「そういうのは男がやりたがるだけでしょ。女はもっと分からないようにやるものなんだから」
そう言って、遠い目をするイズンの姿はどこか、大人びて見えますわ。
人間で言ったら、十歳くらいの見た目なのに不思議ですわね。
「だから、あたしの顔色を窺わないで本気でやってくるあんた達兄妹は好きよ」
「もっと、ヤラレタイなんて、変わった趣味でしゅわね」
「違うからねっ。その物騒な爪をしまいなさいよ」
ちょっとした冗談で舌なめずりをしながら、爪をうっとりとした表情で見ただけなのに本気にするなんて。
面白いですわ。
アグネスだったら、小一時間ほどは説教と言う名の淑女講義が始まりますもの。
「あんた達おかしいからね! あの変態銀髪は何て言ったと思うの?」
「おにいちゃまは変態ではありましぇんわ。かなりお馬鹿なだけでしゅわ!」
「それはそれで酷くない?」
でも、本当のことですもの。
お兄様にとっての判断基準とは食べられるか、食べられないかの二択しかないのでは? と思うくらいに脳が残念ですわ。
「あいつね。あたしのことを食べたいって、言ったのよ。あぁ、こいつも同じかと思ったら、違ったの。『お前は頭からマルカジリにすると美味しそうである』と満面の笑顔で言ったのよ! 鳥肌が立って、ゾワッとしたけど初めてだったから、嬉しかったわ」
「まぁ、おにいちゃまの考えそうなことでしゅわね」
「だから、あたしはここが好き。ずっと、ここにいたいなぁ……」
軽く溜息を吐きながら、再び、遠い目をしているイズンを見ているとそのまま、消えてしまいそうに見えましたの。
「ずっと、ここにいれば、いいのでしゅわ」
「うん」
イズンは少し、驚いたように目を瞬かせてましたけど、頷いてくれましたの。
彼女の目が潤んで、僅かに光る物が見えたのは気のせいかしら?
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