くろいゆきの割とどーでもいいエッセイ・その2

くろいゆき

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単独で特殊任務を遂行するドイツ戦車の活躍を描く軍記かと思わせて……ドイツの戦争映画『タンク』

 今回、御紹介するのはドイツで製作された『タンク』です。
 なぜ『タンク』というあまりにも映えない邦題にしたのか、不明ですが原題は『Der Tiger』。
 その名の通り、第二次大戦期のドイツ戦車ティーガー(ティーガーIIではなく、ティーガーI)を駆るフェリペ少尉が率いる小隊のお話です。

 あらすじは比較的、簡略なものです。
 『東部戦線、1943年。ドイツ軍ティーガー戦車の1両が、激戦の続く前線に深く進攻する危険な任務に派遣される。死の緩衝地帯を進みながら、隊員たちは敵軍だけでなく自身の内なる悪魔にも立ち向かわねばならない。』
 なぜ、こんなにも抽象的で簡略なのか。
 少しでも本筋に関わることを書けば、ネタバレに通じかねないので略すだけ略すしかなかったのでしょう。

 主人公はティーガーIの車長フェリペ少尉。
 気心の知れた小隊員は操縦手のヘルムート、砲手ヴェラー、無線手カイリヒ、装填手ミヒェルの四名。
 この五人が搭乗するティーガーはソビエト連邦と戦っている東部戦線のどこかでの撤退戦において、殿を務めていました。
 撤退する部隊を見送り、ティーガーは敵を防ぐ為、橋上で戦っていました。
 橋は爆破して落とすのでそれまで、出来るだけ時間稼ぎをしなければいけないのです。
 ティーガーは主人公機だからか動かずに固定砲台と化し、敵のソ連戦車に効果的な射撃を行います。
 いわゆる映画的な描写というのです。
 偶に敵の射撃が直撃しても「何ともないぜ! さすがティーガーだ」でそれほど効きません。
 敵戦車は『T-34』系なのでさすがに直撃するとまずい気はするのですが、気にしてはいけません(´・ω・`)

 しかし、さすがにタイムリミット!
 撤退を始めるティーガーを襲う炎の嵐!!
 果たして、彼らは無事逃げおおせたのでしょうか?

 何とも気になるオープニングシーンでスタートしますが、フェリペはどうやって橋から、無事に帰還したのか、覚えていません。
 むしろその記憶自体がすっぽりと抜け落ちたように分からないのです。
 視聴者にも情報が与えられていないし、登場人物にも情報が与えられていない。
 極めて特殊な状況ですが、これが本作の重要な伏線になっています。

 そんなフェリペに上層部から、特命が下されました。
 行方不明になったハルデンブルク大佐を発見し、本国まで送り届けよというものでした。
 作戦名は『迷宮作戦』。
 何とも意味深なネーミングです。

 橋での戦いで損傷していたティーガーの修復作業も無事に終わり、フェリペ隊は単独で困難な特殊任務へと出発します。
 これまた、おかしな状況です。
 極めて重要な任務であるにも関わらず、戦車一両で単独で全くの援軍もなしに敵地の中にいる大佐を救出しろというのです。
 普通に考えて、妙としか言いようがありません。
 自分達が精鋭だから、下ったのだとの発言が劇中でされますが、特殊部隊でもない小隊の五人に下される任務としては不適切な気がします。

 やはりというか、当然のようにティーガーの前に困難が立ちはだかります。
 なぜか、無線からはミサの祝詞が聞こえてきます。
 それもなぜか、ラテン語です。
 そして、命の危険にも晒されます。
 地雷原でした。
 幸いにもフェリペが気付き、事なきを得ます。
 フェリペと共に地雷処理をしていたミヒェルは信管を触っており、新兵に近い若い兵士である彼をてっきり見捨てるのかと思わせておいて……。
 決してミヒェルを見捨てず、いい隊長ぶりを見せる意外なシーンです。
 橋での撤退シーンで時折、思考の海に嵌り、的確な状況判断が下せなかった人と同一人物とは思えないほど。

 しかし、一難去ってまた一難。
 強敵の出現です。
 圧倒的な火力を誇るソ連の駆逐戦車『Su-100』が立ちはだかります。
 『Su-100』の火砲はティーガーを軽く打ち破れるので正面から、戦うのは危険と判断した少尉は奇想天外な作戦を決行します。
 何とティーガー専用潜水装備で川に潜水して、敵の目を欺こうというのです。
 見た目はまんま、忍者の水遁の術のようですが……。
 この一見、奇想天外でありえなそうな展開、実際のドイツ戦車ができたというのが驚きポイント🌿
 渡河作戦を考えていたし、それを可能にする潜水装備も開発されていたのです。
 ともあれ、川に沈んでいたお陰でどうにか、敵の目をかいくぐれたティーガーでしたが、飲用している覚醒剤の影響なのか、フェリペを始めとした隊員の様子がどことなく、おかしくなってきます。

 ところがぎっちょん、回避したはずの『Su-100』がなぜか、正面から出現して道中を阻みます。
 事ここに至って、フェリペは難敵を倒すしか道がないと覚悟を決めました。
 駆逐戦車の弱点は砲塔を回転できず、視界不良なのでそこを突くことにしたのです。
 作戦は的中し、陥没した穴に気付かず、足止めされた『Su-100』を倒すことに成功したティーガーでしたが無線手のカイリヒが重傷を負い、死んでしまいます。
 ヴェラーはフェリペの指揮に問題があったと問責決議を起こしますが、ヘルムートとミヒェルは少尉に一票を入れ、無効に……。
 何とも言えない嫌な空気が漂う中、ティーガーはついにハルデンブルク大佐の下へと辿り着きます。

 そうそう。
 気になるシーンが道中の戦闘以外にもあります。
 燃料が不足してきた一行は偶然、出会った味方の部隊から、燃料を供与してもらいます。
 その際、部隊はパルチザンを匿った住民を獣舎に閉じ込め、火炎放射で焼き殺す作戦を行っているのですが……。
 指揮官が「君達はこの炎を知っているはずだ」と意味深なことを言うのです。
 非武装の市民を焼き殺す炎を見ているし、知っているとはどういうことなのか?

 全ての伏線はオチで繋がります。
 ハルデンブルクとついに邂逅したフェリペは彼から、真相を聞きます。
 ハルデンブルクとフェリペは士官学校時代の同期で友人でした。
 フェリペが妻と知り合ったのもハルデンブルクに紹介されたからだし、フェリペの一人息子の名付け親もハルデンブルク。
 非常に深い縁で結ばれていたのです。
 そして、明かされる真相……。
 それは実に意外なものでした。
 フェリペは思い出したのです。
 既に自分が死んでいることに……。
 橋での撤退戦で彼のティーガーは小隊員ともども、炎に包まれて川の藻屑となっていたのです。
 つまり、不可解過ぎる特命もそれに伴う困難な道中も全ては死者が見た夢。
 それどころか、上層部からの命令で一般市民を教会に閉じ込め、火炎放射で焼き殺すという残虐な行為をしていました。
 炎を見ているし、知っているというのはこのことだったのです。
 そして、フェリペの妻子は教会に避難していたところを爆撃……それも焼夷弾で死んでいました。
 その知らせを受け取ったことでフェリペは呆然自失していたから、橋での撤退戦で妙な思考停止に陥っていたという訳です。
 ハルデンブルクの幻はこう言います。
 「因果応報」と……。
 東洋の仏教に通じる思想でありながら、これほど因果応報を嫌というほど味わう主人公もいないでしょう(´・ω・`)

 ちなみにミリタリーに詳しい人が見るとそもそも、『Su-100』が出てくる時点で現実ではないと気付くらしいです。
 本作は1943年の出来事とされていますが、ソ連の『Su-100』が戦場に出てくるのは1944年なのでありえないのだとか。
 そういえば、おかしいのは見たこともないはずの『Su-100』を見て、「Su-100だ!」と言っているんですよね。
 単純に製作陣が知らなかっただけなのか、それとも死者が見た走馬灯のようなものだから、ありえないことが起きていたのか。
感想 8

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