くろいやつのくろいつらつらですわ~

黒幸

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くろいゆきの読書・色々

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 皆様、ごきげんようですわ~。

 本は好きな私ですけど、中々、どうして読書の時間は取れませんの。
 そこで考えたのが病院での待ち時間にKindleでの読書ですわ~。
 これなら、本を持ち歩かなくてもいいですし、栞を挟まなくてもいいというのは便利ですわね。

 さて、そういう訳で今回はまず、シェリダン・レ・ファニュの『カーミラ』ですわ~。
 吸血鬼=ヴァンパイアをテーマにした作品のパイオニアであり、ブラム・ストーカーの『ドラキュラ』と並ぶヴァンパイアの二大巨頭と言っても過言ではない有名なヴァンパイア。
 女吸血鬼と言えば、カーミラという名で出て来たり、アナグラムにした名前で出てくることも多い人気キャラですわ。

 そのカーミラの元ネタ=原作が『カーミラ』でしてよ。
 この小説の素晴らしい点はカーミラが人非ざる者として、ヴァンパイアらしい姿を見せているところがほとんど、ないということですわね。
 彼女の狡猾なところはまず、標的と定めると巧妙にその懐に入り込む手口ですわ。
 可憐な少女を装って、近づく。
 その美貌と愛くるしさで標的の心を鷲掴みにしてから、徐々に弱らせて、その血を啜るという複雑で面倒な行動をしてますの。
 ここに吸血鬼の妙な性癖といいますか、制約があるようですわ。
 どうも、面倒なことをした方がより美味しい食事になるのだとか。

 でも、この『カーミラ』という小説の怖い点は最後の最後まで語り主であり、被害者である主人公ローラが救われていない可能性が高いということですわ。
 カーミラが同性の少女(ただし、ローラは十九歳ですわ!)しか狙わないことから、百合小説とも言われるのですけど、その理由はカーミラがローラに愛を囁くからだと思いましてよ。
 それはもう情熱的に愛を囁きますもの。
 ローラもまんざらではない様子なのは同年代の友人がいない土地で生きてきたこともあるようですけど。
 カーミラのことを好ましく、愛おしく見ていながらも時に恐ろしく感じるというローラの複雑な心理状態はカーミラが正式な作法に則り、吸血鬼として退治されても治ることがありませんの。

 未だに恋をする乙女のようにカーミラがひょっこりと顔を覗かせるのではないか? と考えているローラの独白で終わるところが最高ですわ。

 続いては高階良子先生の『地獄でメスがひかる』と『赤い沼』ですわ~。
 こちらの単行本には『鬼あざみ』も含まれているのでまとめて、お話しますわね。
 ヒロインは望まれなく生まれ、醜い容姿の為に家族から、虐げられる薄幸の人でしてよ。
 そんな逆境にありながらもヒロインは家族を恨むよりも我が身の醜さを悲しむだけという心優しい性格が強調されているので、『ノートルダムのせむし男』にわざと寄せているのかもしれませんわ。
 このヒロインがついに耐えきれなくなり、自殺を図ったところ助けたヒーロー……いえ、ダークヒーローが助けましたの。
 ただ、ダークヒーローは善意から、ヒロインを助けたのではなく、自らの野望である実験に使うモルモットとしてだったのですけど……。
 この作品のヒロインはダークヒーローの手によって、美しい容姿を手に入れるのですけども、それが単なる整形手術ではなかったことがヒロインの心を砕き、物語を悲劇へと誘うことになりますの。
 この設定はさすが、大御所の先生ならではという見事な表現ですわ。
 ただ、ダークヒーローとヒロインを待ち受けているのはどこまでも深い闇だけというのが救われないですわね。
 読み応えが十分どころではなく、余韻が凄い作品でしてよ。

 『鬼あざみ』は親に愛されず、愛を知らない少女あざみが純粋でとても性格のいいまさに昔の少女漫画のヒロイン! と言うべき女の子と出会って、愛を知り、愛を求めた結果……悲しいですわね。
 昭和時代の昔のドラマは割合、こういう結末が多かった気がしますけど、あざみが最期、満ち足りた笑顔で逝けたから、よかったのかしら?
 多分、メリバですけど(´・ω・`)

 『赤い沼』は鬼子母神伝説をモチーフに童謡の『かごめかごめ』のエッセンスが加えられた伝奇ロマンスですわね。
 籠女かごめという奇妙な名を持つ少女がヒロインなのですけど、高階先生のヒロインは不幸になることが多いのでしてよ。
 ましてやモチーフが鬼子母神ですもの。
 ただ、この『赤い沼』の単行本に含まれている『闇におどるきつね』と『さらわれたアイドル』はちょっと雰囲気が違いますわ。
 どちらのヒロインも不幸ではありませんもの。
 『闇におどるきつね』はコックリさんを絡めたオカルト物と思わせておいて、実はヒロインに秘密があったというどんでん返しの真実が待ってますけど、ハッピーエンドですし、『さらわれたアイドル』のヒロインはお嬢様で大人気の男性アイドルを巡って、巻き起こるロマンスコメディですわね。

 次は曽祢まさこ先生の『緋色のマドモアゼル』と『わたしが死んだ夜』ですわ~。
 『緋色のマドモアゼル』は誰もが羨む美貌を持つ資産家の娘アデリーヌがジャン=ルイと婚約したことから、始まるミステリーロマンスですわね。
 アデリーヌと関わった人間は不幸に見舞われるので疫病神と呼ばれてますの。
 それがどういうことなのかは徐々に明らかにされていくのですけど、それで分かるのは彼女が無自覚な悪意を振りまく人間だったということ。
 彼女自身も何者かに誘導されるように次第にその悪意に気が付いていくのですけど、婚約者にそれを知られまいと足掻くことから、救いの無いラストへと繋がりましてよ。
 これは確かに子供の頃に読んでも分からないですわね。

 『わたしが死んだ夜』は双子の姉妹クレアとエバの物語なのですけど、双子は本人達にしか分からないですけど、難しい存在のようですわね。
 互いに欠けてはいけないパズルのピースのように慈しむ関係もあれば、この物語のクレアとエバのように鏡に映った自分のように同じ姿を見ることすら、嫌がり憎むようにもなる……。
 クレアがレインという青年と出会い、恋に落ちたことでこの双子の運命は悲劇へと一直線に進むのですけど、この結末は是非、御自分の目で確かめていただきたいですわ。
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