光を求め、影は遠く~私が変身ヒロイン?そんな話、聞いてない!~

黒幸

文字の大きさ
9 / 27
第一章 白銀の閃光

9 私服登校という名の難題

しおりを挟む
 朝、自然と目が覚める。
 いつものことだ。
 自然光が入ってこない蔵で長く、寝起きしてたせいだろう。
 夜明け前に勝手に覚醒するのだ。

「温かい……」

 顔を洗おうと蛇口を捻った第一声がこれだった。
 井戸水しか頼る物がなかった。
 冬は地獄だった。
 お湯が出るなんて、ここは天国のようだ。
 とても信じられない。
 普通に顔を洗えるなんて、幸せ。

「これはダメかも」
 
 思った通り、来たきり雀の制服はしわしわになっていた。
 今日から、登校することになってるのにこれでいいんだろうか。
 でも、選べるほどの服は手持ちにない。

「どうしようかなぁ。あれ?」

 ふと気が付いた。
 あんな紙袋あったかな?
 記憶の海を辿ってみる。
 松尾さんが置いて行った物だ。
 「若い子のファッションはよく分からなくてね」とか、言ってた。

 そうだった。
 学園の指定制服はない。
 私服が許可されてるけど、その私服すら持ち合わせてない。
 それを分かってる松尾さんが良かったら、着て欲しいと言ってたのを思い出した。
 その手があった。


 そもそも正解を知らなかった。
 同年代の子は制服を着て、登校してたから参考にならない。
 制服でないのなら、どんな服でもありと言われるとかえって分からないのだ。
 松尾さんも流行はよく分からないと言ってたし……。

「動きやすいから、いっか」

 だからって、クリーム色のワンピースドレスと淡いピンク色のボレロの組み合わせはどうなんだろう。
 裾は丁度、膝くらいで長くもなければ、短くもない。
 動きやすいから、ありだと思う。
 学校に着ていくのに向いてるかどうかはともかくとして。

 一緒にリボンも入ってた。
 無造作にゴムでサイドポニーにしてたから、気にしてくれたみたい。
 紺色に金の刺繍が入ってる高級感漂うリボンだけど、いいんだろうか。
 でも、使わないと失礼にあたるのかもしれない。
 髪が白いから、コントラストで映えてる。
 ……ような気がする。

 それとデバイスも入ってる。
 形が変わってるんだけど?
 アップデートするとは聞いてたけど、形が変わるって言ってたかなぁ。
 ブレスレット型になってるし、ふたつになってるじゃん……。
 でも、これに私の全財産やら何やらが詰まってる。身に付けない訳にはいかないし。

「悪くない……かな」

 両手にブレスレットを付けるのって、どうかなと思ったけど前から付けてたみたいにしっくりくる。
 付け心地がいいというより、付けてる感覚がないので全然、気にならない。

「いけない。初日から遅刻はまずいって」

 なんだかんだとごたごたしてる間に結構、時間が経ってたようだ。
 変な意味で目立ちたくないから、遅刻は避けたい。
 誰もいない部屋に「行ってきます」と声をかけ、出ることにした……。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

元婚約者からの嫌がらせでわたくしと結婚させられた彼が、ざまぁしたら優しくなりました。ですが新婚時代に受けた扱いを忘れてはおりませんよ?

3333(トリささみ)
恋愛
貴族令嬢だが自他ともに認める醜女のマルフィナは、あるとき王命により結婚することになった。 相手は王女エンジェに婚約破棄をされたことで有名な、若き公爵テオバルト。 あまりにも不釣り合いなその結婚は、エンジェによるテオバルトへの嫌がらせだった。 それを知ったマルフィナはテオバルトに同情し、少しでも彼が報われるよう努力する。 だがテオバルトはそんなマルフィナを、徹底的に冷たくあしらった。 その後あるキッカケで美しくなったマルフィナによりエンジェは自滅。 その日からテオバルトは手のひらを返したように優しくなる。 だがマルフィナが新婚時代に受けた仕打ちを、忘れることはなかった。

◆平民出身令嬢、断罪で自由になります◆~ミッカン畑で待つ幼馴染のもとへ~

ささい
恋愛
「え、帰ってくんの?」 「え、帰れないの?」 前世の記憶が蘇ったニーナは気づいた。 ここは乙女ゲームの世界で、自分はピンク髪のヒロインなのだと。 男爵家に拾われ学園に通うことになったけれど、貴族社会は息苦しくて、 幼馴染のクローにも会えない。 乙女ゲームの世界を舞台に悪役令嬢が活躍して ヒロインをざまあする世界じゃない!? なら、いっそ追放されて自由になろう——。 追放上等!私が帰りたいのはミッカン畑です。

結婚後、訳もわからないまま閉じ込められていました。

しゃーりん
恋愛
結婚して二年、別邸に閉じ込められていたハリエット。 友人の助けにより外に出ることができ、久しぶりに見た夫アルバートは騎士に連行されるところだった。 『お前のせいだ!』と言われても訳がわからなかった。 取り調べにより判明したのは、ハリエットには恋人がいるのだとアルバートが信じていたこと。 彼にその嘘を吹き込んだのは、二人いたというお話です。

ワンチャンあるかな、って転生先で推しにアタックしてるのがこちらの令嬢です

山口三
恋愛
恋愛ゲームの世界に転生した主人公。中世異世界のアカデミーを中心に繰り広げられるゲームだが、大好きな推しを目の前にして、ついつい欲が出てしまう。「私が転生したキャラは主人公じゃなくて、たたのモブ悪役。どうせ攻略対象の相手にはフラれて婚約破棄されるんだから・・・」 ひょんな事からクラスメイトのアロイスと協力して、主人公は推し様と、アロイスはゲームの主人公である聖女様との相思相愛を目指すが・・・。

捨てられた悪役はきっと幸せになる

ariya
恋愛
ヴィヴィア・ゴーヴァン公爵夫人は少女小説に登場する悪役だった。 強欲で傲慢で嫌われ者、夫に捨てられて惨めな最期を迎えた悪役。 その悪役に転生していたことに気づいたヴィヴィアは、夫がヒロインと結ばれたら潔く退場することを考えていた。 それまでお世話になった為、貴族夫人としての仕事の一部だけでもがんばろう。 「ヴィヴィア、あなたを愛してます」 ヒロインに惹かれつつあるはずの夫・クリスは愛をヴィヴィアに捧げると言ってきて。 そもそもクリスがヴィヴィアを娶ったのは、王位継承を狙っている疑惑から逃れる為の契約結婚だったはずでは? 愛などなかったと思っていた夫婦生活に変化が訪れる。 ※この作品は、人によっては元鞘話にみえて地雷の方がいるかもしれません。また、ヒーローがヤンデレ寄りですので苦手な方はご注意ください。 ※表紙はAIです。

婚約破棄された際もらった慰謝料で田舎の土地を買い農家になった元貴族令嬢、野菜を買いにきたベジタリアン第三王子に求婚される

さら
恋愛
婚約破棄された元伯爵令嬢クラリス。 慰謝料代わりに受け取った金で田舎の小さな土地を買い、農業を始めることに。泥にまみれて種を撒き、水をやり、必死に生きる日々。貴族の煌びやかな日々は失ったけれど、土と共に過ごす穏やかな時間が、彼女に新しい幸せをくれる――はずだった。 だがある日、畑に現れたのは野菜好きで有名な第三王子レオニール。 「この野菜は……他とは違う。僕は、あなたが欲しい」 そう言って真剣な瞳で求婚してきて!? 王妃も兄王子たちも立ちはだかる。 「身分違いの恋」なんて笑われても、二人の気持ちは揺るがない。荒れ地を畑に変えるように、愛もまた努力で実を結ぶのか――。

悪役令嬢? いえ、私、先回り令嬢です!

水無月あん
恋愛
お父様の再婚相手が連れてきた美少女を見たとたん、頭の中に鐘がなって前世を思いだした。ここは親友がかいたマンガの中で、私もそのストーリーづくりにおおいにかかわっていたことを。家族になった美少女が悪役令嬢に成長し、私も巻き添えになって断罪されることまでも。そんな悲惨な未来を回避するべく、美少女がいい子に成長するよう前世の記憶をもとに先回りします! 鐘がなったら、先回り! いつもながらゆるいお話ですが、気楽に読んでくださったら幸いです。よろしくお願いいたします。

「お前みたいな卑しい闇属性の魔女など側室でもごめんだ」と言われましたが、私も殿下に嫁ぐ気はありません!

野生のイエネコ
恋愛
闇の精霊の加護を受けている私は、闇属性を差別する国で迫害されていた。いつか私を受け入れてくれる人を探そうと夢に見ていたデビュタントの舞踏会で、闇属性を差別する王太子に罵倒されて心が折れてしまう。  私が国を出奔すると、闇精霊の森という場所に住まう、不思議な男性と出会った。なぜかその男性が私の事情を聞くと、国に与えられた闇精霊の加護が消滅して、国は大混乱に。  そんな中、闇精霊の森での生活は穏やかに進んでいく。

処理中です...