我欲するゆえに我あり

黒幸

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1 名無しの村

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 かつて隔たれし二つの世界が一つになった。
 半世紀が過ぎ、大いなる混乱と災厄に見舞われようとも人々はそこで生き、そして、死んでいく。
 百億に届かん勢いがあった蒼き星の霊長類は減少の一途を辿っている。
 それでも人々は生きていた。

 もっとも地球種と呼ばれるようになった、かつてのホモサピエンスに限れば、もはや全人口の一割に満たない。
 世界が融け合い、一つになった時、多くの者が選んだのは己が新たな運命を受け入れることだった。
 ゆえに世界は多様性に満ちていた。

 欧州大陸の南西にかつて太陽の沈まない国と呼ばれた地域がある。
 それはもはや遠き過去の栄光に過ぎない。
 現在は広大な大地のほとんどが捨て置かれた地とされていた。
 狂暴な性質をした人に仇名す怪異が跋扈する荒涼とした地だ。

 その北部に周囲から、隔絶されたとある小さな村がある。
 派手な衣装を纏い、手に鞭と打楽器を持った悪魔に扮した進行役が新生児の上を跳躍する奇妙な祭りで知られる小さな村だ。
 新生児の無事を祈る呪術的な伝統儀式だったが、醸し出される独特の雰囲気から奇祭として世界的にも知られていた。
 だが、それも過去の話だった。
 数百年に渡り、続けられてきた伝統行事も継ぐべき人々が消えてしまえば、存続できない。

 しかし、それでも小さな村は決して消えることなく、存在している。
 隔絶された特異な地であることが何かを呼び寄せてしまったのだと人々は嘯く。
 真実は分からない。
 
 分かることは南欧の北にある廃村と等しき名もなき村に欧州でも名の知れた寄宿学校『サンクト・フベルトゥス学院』があるという事実だけだ。
 ただ、それだけである。
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