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2 試練
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俺は今、迫られている。
絶体絶命の危機とか、究極の選択とか、そういうのだ。
それもどちらを選んでも待っているのは地獄。
間違いない!
「いいですか、フリオ。あなたには二つの選択肢があります」
衝撃的な事実に打ちのめされた俺の目の前で偉そうに腰に手を当て、ふんぞり返っている。
いけすかないおばさん。
俺にはそうとしか見えない何かだ。
思うところがあるから、そんあ風に見えているだけだって?
そういう考えも一理ある……。
だが決して、そうではない。
誰が見てもそのおばさんは意地悪そうだと言うに違いない。
洒落っ気のないひっつめ髪にした頭。
フレーム部分が太くて、これまでお洒落とは無縁の野暮ったい黒縁眼鏡をかけている。
さらに一分の隙もない眼光の鋭さたるや、猛禽類も縮み上がる恐ろしさだ。
しかし、誰あろうその人が……。
由緒正しき学院の一番、偉い人でもある。
バシリア学院長。
生徒の間で蛇の院長先生なんて、物騒なあだ名が付けられるのも無理はない。
「進むのか、戻るのか。さあ、選びなさい。時間がありませんよ」
「あ、いや。その院長先生、ちょっとだけ待ってくれな……いえ、ませんか?」
ギロリと俺を睨みつける目つきが怖い。
だが、それよりも頭の中でグルグルと答えが出ないでいる突きつけられた衝撃的な事実の方が問題だった。
この怖い院長が……。
伯母さんだって?
どういうことなんだという思いしかない。
母さんは命と引き換えに俺を産んだと聞いている。
顔すら知らない人だ。
一度だけ、ちらっと見た絵姿には儚げな黒髪の美しい女の人が描かれていた。
院長とは似ても似つかない人だった。
家族はじっちゃんしか、いなかったのだ。
それが通っている学院の院長から、伯母だと言われても困惑しか浮かんでこない。
「フリオ。時間切れです」
「あ? え? ちょっ!? やめ……ろくだせえ!?」
「つべこべ言わずにさっさといけや、ごらぁ!」
目つきこそ、悪かったものの表情一つ変えなかった院長が、目を吊り上げて世にも恐ろしい形相になった。
さっきまでの丁寧な言葉遣いもどこかに捨て去っている。
表情筋が死んでいるんじゃないかと思えるくらいに無表情だったのに……。
そんな顔できたのかなどと言ってる場合でもなければ、怖いなんて言葉で言い表せる代物じゃないなんて考えている余裕もない。
地獄の獄卒も尻尾を巻いて逃げだしかねない、おっかない顔の人が何をしたのか。
何と動きにくそうなロングスカートを穿いているとは思えない動きで俺のことを思い切り、蹴飛ばしやがったんだ。
「あーれー」とは言わないまでも空気の漏れたようなみっともない「うげぇぇぇぇ」という情けない悲鳴と共に……。
奈落に落ちていく。
言われなくても行くつもりだったのにそりゃ、ないぜ、おばさん……。
絶体絶命の危機とか、究極の選択とか、そういうのだ。
それもどちらを選んでも待っているのは地獄。
間違いない!
「いいですか、フリオ。あなたには二つの選択肢があります」
衝撃的な事実に打ちのめされた俺の目の前で偉そうに腰に手を当て、ふんぞり返っている。
いけすかないおばさん。
俺にはそうとしか見えない何かだ。
思うところがあるから、そんあ風に見えているだけだって?
そういう考えも一理ある……。
だが決して、そうではない。
誰が見てもそのおばさんは意地悪そうだと言うに違いない。
洒落っ気のないひっつめ髪にした頭。
フレーム部分が太くて、これまでお洒落とは無縁の野暮ったい黒縁眼鏡をかけている。
さらに一分の隙もない眼光の鋭さたるや、猛禽類も縮み上がる恐ろしさだ。
しかし、誰あろうその人が……。
由緒正しき学院の一番、偉い人でもある。
バシリア学院長。
生徒の間で蛇の院長先生なんて、物騒なあだ名が付けられるのも無理はない。
「進むのか、戻るのか。さあ、選びなさい。時間がありませんよ」
「あ、いや。その院長先生、ちょっとだけ待ってくれな……いえ、ませんか?」
ギロリと俺を睨みつける目つきが怖い。
だが、それよりも頭の中でグルグルと答えが出ないでいる突きつけられた衝撃的な事実の方が問題だった。
この怖い院長が……。
伯母さんだって?
どういうことなんだという思いしかない。
母さんは命と引き換えに俺を産んだと聞いている。
顔すら知らない人だ。
一度だけ、ちらっと見た絵姿には儚げな黒髪の美しい女の人が描かれていた。
院長とは似ても似つかない人だった。
家族はじっちゃんしか、いなかったのだ。
それが通っている学院の院長から、伯母だと言われても困惑しか浮かんでこない。
「フリオ。時間切れです」
「あ? え? ちょっ!? やめ……ろくだせえ!?」
「つべこべ言わずにさっさといけや、ごらぁ!」
目つきこそ、悪かったものの表情一つ変えなかった院長が、目を吊り上げて世にも恐ろしい形相になった。
さっきまでの丁寧な言葉遣いもどこかに捨て去っている。
表情筋が死んでいるんじゃないかと思えるくらいに無表情だったのに……。
そんな顔できたのかなどと言ってる場合でもなければ、怖いなんて言葉で言い表せる代物じゃないなんて考えている余裕もない。
地獄の獄卒も尻尾を巻いて逃げだしかねない、おっかない顔の人が何をしたのか。
何と動きにくそうなロングスカートを穿いているとは思えない動きで俺のことを思い切り、蹴飛ばしやがったんだ。
「あーれー」とは言わないまでも空気の漏れたようなみっともない「うげぇぇぇぇ」という情けない悲鳴と共に……。
奈落に落ちていく。
言われなくても行くつもりだったのにそりゃ、ないぜ、おばさん……。
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