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6 ザ・スリーパー
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「へえ? そうなんだ?」
「何よ、それ。他人事みたいな言い方してるけどさ。あんたも試練をクリアできたら、なれるってことなんだよ?」
「うん?」
「まさか、それすら理解していなかったってこと?」
否定できない。
否定しないとオルガがマジギレしそうだ。
だが、否定できない。
俺は嘘を付けるほど、器用じゃないんだ。
「否定しないところを見ると本当に分かってなかったんだね。呆れた……こんなのが嫡流ですって? ありえなーい」
意外なことに完全に沸騰する一歩手前にしか見えなかったオルガはキレなかった。
キレる代わりにこれ以上ないくらいに見下してくる視線を送られただけだ。
最後の方はあまりに小声でボソボソ言ってるから、何だかよく分からなかったのが気にはなるが……。
分かったことを頭で整理しなければ、理解が追い付きそうにない。
まず、サント・フベルトゥスは十歳で入学して、十五歳で卒業する。
これは理解している。
卒業する際に優秀な成績を収めた者はデバイスを与えられ、資格者(プレイヤー)になれる。
プレイヤーになれば、世界資格者機構に所属して稼げるようになる。
学院の優秀な卒業生は何でも口利きをしてもらえるという噂だった。
よくそんなことを口にしている学生がいたのを覚えている。
ここで大事なのは貴重なデバイスを貰えるってことだ。
お隣の国と違って、うちの国は政情不安なんて単語では生易しいほどに荒れている。
各地で力を持った勢力が好き勝手なことをやっているせいか、他国では普通に支給されるらしいデバイスを持っている者がほとんどいない。
それが貰えるのは大きい。
何も自国に留まる必要がないから、お隣さんにでも行けばいいだけ。
ところがこの優秀な成績を収めるとふわふわした表現の言い方をしているのに理由があった訳か。
特別な試練を乗り越える。
これが真実だったのだ。
「それでさ。試練って、何をやるんだ?」
「はぁ? あんたさ。頭の中、何が詰まってるのよ。ちゃんと聞いてた?」
オルガの目が釣りあがって怖いのなんのって。
話は聞いていたし、理解もしたつもりだ。
俺とオルガと「んが」しか喋らない図体のでかいのと三人で何かをやるってこと。
問題はその何かがさっぱり、分からないってことだな。
「でっかい人。あんたは知っているのか?」
「んが?」
「でかい人って。あんたさ。その子、ちゃんと名前あるんだからさ。呼んであげなよ。ねぇ、スリーパー」
「んがー」
十五歳にしては俺は背が高い方だ。
ほとんどの学生からは見上げられるくらいの背丈がある。
オルガも細いけど、大きい。
だが、でかい人……スリーパーだったか。
彼は段違いに大きい。
縦だけでなく、横幅も大きいから、まるで壁が動いているような錯覚を受けるほどだ。
それでいて、スリーパーと呼ばれているだけあって、両目が開いているのか、分かりにくい。
寝ているようにもみえるが「んが」と返事をする。
それだけじゃない。
「んが」の言い方に感情が入って、普通に意思疎通ができている。
何とも不思議だ。
そして、気付いた。
あいつはちゃんと目を開けていて、底知れない目をしている。
ほとんどの人間が目を開けてないように見えるあいつを見て、柔和な表情をしていると勘違いするだろう。
何とも恐ろしいヤツなのかもしれない。
「それでだ。何をするんだ? 早く、言ってくれないか」
「う~ん。それ、わざわざ言う必要ないわね。向こうから、挨拶に来たみたいよ」
「なんだと?」
オルガはそう言うとノールックで自身の背後に右の親指を向けるジェスチャーをした。
あれを見ろと言わんばかりの態度だ。
その表情も先程まで見せていた人間らしさがなくなっている。
まるで仮面を付けているみたいだった。
「何だよ、あれ……」
オルガが向けた指先へと視線を送り、見るのではなかったと後悔した。
そこには信じられないものが蠢いていたのだ……。
「何よ、それ。他人事みたいな言い方してるけどさ。あんたも試練をクリアできたら、なれるってことなんだよ?」
「うん?」
「まさか、それすら理解していなかったってこと?」
否定できない。
否定しないとオルガがマジギレしそうだ。
だが、否定できない。
俺は嘘を付けるほど、器用じゃないんだ。
「否定しないところを見ると本当に分かってなかったんだね。呆れた……こんなのが嫡流ですって? ありえなーい」
意外なことに完全に沸騰する一歩手前にしか見えなかったオルガはキレなかった。
キレる代わりにこれ以上ないくらいに見下してくる視線を送られただけだ。
最後の方はあまりに小声でボソボソ言ってるから、何だかよく分からなかったのが気にはなるが……。
分かったことを頭で整理しなければ、理解が追い付きそうにない。
まず、サント・フベルトゥスは十歳で入学して、十五歳で卒業する。
これは理解している。
卒業する際に優秀な成績を収めた者はデバイスを与えられ、資格者(プレイヤー)になれる。
プレイヤーになれば、世界資格者機構に所属して稼げるようになる。
学院の優秀な卒業生は何でも口利きをしてもらえるという噂だった。
よくそんなことを口にしている学生がいたのを覚えている。
ここで大事なのは貴重なデバイスを貰えるってことだ。
お隣の国と違って、うちの国は政情不安なんて単語では生易しいほどに荒れている。
各地で力を持った勢力が好き勝手なことをやっているせいか、他国では普通に支給されるらしいデバイスを持っている者がほとんどいない。
それが貰えるのは大きい。
何も自国に留まる必要がないから、お隣さんにでも行けばいいだけ。
ところがこの優秀な成績を収めるとふわふわした表現の言い方をしているのに理由があった訳か。
特別な試練を乗り越える。
これが真実だったのだ。
「それでさ。試練って、何をやるんだ?」
「はぁ? あんたさ。頭の中、何が詰まってるのよ。ちゃんと聞いてた?」
オルガの目が釣りあがって怖いのなんのって。
話は聞いていたし、理解もしたつもりだ。
俺とオルガと「んが」しか喋らない図体のでかいのと三人で何かをやるってこと。
問題はその何かがさっぱり、分からないってことだな。
「でっかい人。あんたは知っているのか?」
「んが?」
「でかい人って。あんたさ。その子、ちゃんと名前あるんだからさ。呼んであげなよ。ねぇ、スリーパー」
「んがー」
十五歳にしては俺は背が高い方だ。
ほとんどの学生からは見上げられるくらいの背丈がある。
オルガも細いけど、大きい。
だが、でかい人……スリーパーだったか。
彼は段違いに大きい。
縦だけでなく、横幅も大きいから、まるで壁が動いているような錯覚を受けるほどだ。
それでいて、スリーパーと呼ばれているだけあって、両目が開いているのか、分かりにくい。
寝ているようにもみえるが「んが」と返事をする。
それだけじゃない。
「んが」の言い方に感情が入って、普通に意思疎通ができている。
何とも不思議だ。
そして、気付いた。
あいつはちゃんと目を開けていて、底知れない目をしている。
ほとんどの人間が目を開けてないように見えるあいつを見て、柔和な表情をしていると勘違いするだろう。
何とも恐ろしいヤツなのかもしれない。
「それでだ。何をするんだ? 早く、言ってくれないか」
「う~ん。それ、わざわざ言う必要ないわね。向こうから、挨拶に来たみたいよ」
「なんだと?」
オルガはそう言うとノールックで自身の背後に右の親指を向けるジェスチャーをした。
あれを見ろと言わんばかりの態度だ。
その表情も先程まで見せていた人間らしさがなくなっている。
まるで仮面を付けているみたいだった。
「何だよ、あれ……」
オルガが向けた指先へと視線を送り、見るのではなかったと後悔した。
そこには信じられないものが蠢いていたのだ……。
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