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21 旅立ちに向けて
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「フリオ……フリオ」
また、あの夢を見た。
母さんの夢だ。
会ったことのない母さんが俺を抱き締めてくれる夢だ。
今みたいに大きな図体をした俺じゃない。
まだ小さくて、鼻を垂らしている頃の俺だ。
「お父さんに会いたい?」
「父さん?」
「そうよ。あなたのお父さん。お父さんはね」
母さんはどこか違う世界を見ているような不思議な顔をしていた。
その目はここではないどこかを見ている感じがする。
何だか、キラキラとしていて眩しいんだ。
「強くて、スゴイ人なのよ」
「ふうん。父さんはどこにいるの?」
「あなた……うさ……は……たに……」
そこで異変が起きるんだ。
回線の異常が発生して、動画が乱れ始めた感じに似ている。
何を言っているのか、急に音声が聞き取りにくくなってきて、目の前の風景にもノイズが走って、見づらくなる。
「テイラー……テイラー・サウルを……フリ……がしな……い」
「待ってくれ、母さん! それが父さんなのか、俺の父……」
そこで夢は終わった。
意識が急速に覚醒していく。
気が付くと掌に何かを感じる。
ごわごわとした布の感触。
それにそれほど、気持ちがよくない触り心地の何かだ。
これは一体……?
「ほぉ? へぇ? 何か、言い訳はある?」
「いや、だからさ、ちちが……」
はっきりとした殺意の波動というものを感じた。
俺の手はどこにあったかというと御丁寧なことに両手が、オルガのおっぱいの上にあった。
完全に何かをしようと揉んでいるようにしか見えない画だ。
しかも夢のせいで余計に誤解を生じさせることを言っている。
非常にまずい状況だった。
「こんのアホがぁぁぁぁ! 一回、死になさいよぉ!」
「誤解だあ! そうじゃないんだ!」
「なおさら、悪いわっ! 死んで反省しなさいよぉ!」
気のせいではなく、ヒンヤリとしていた。
オルガには多少なりとも冷気を操る力があるとは言っていたが、できるようになったな!
……などとかっこをつけている場合ではなく、マジでやばい状況である。
全くもって災難だ。
酷い目に遭ったもんだ。
怪我人だっていうのに再び、病院送りにされるところだった。
しかし、カサドールの一族の能力なのだろうか。
あれほどの大怪我を負っていたのに恐ろしく治りが早いから、多少ボコボコにされても大丈夫なんだろうが。
いや、そうは言ってもたんこぶができるほど、思い切りオルガに殴られた訳だが。
治りがいくら早いとはいえ、痛いものは痛い。
そこはどうにもできない。
「それで何ですって? その人を探すの?」
「ああ。それくらいしか、やることないかなって思ってさ」
まだ、不機嫌なままで毛を逆立てた黒猫ちゃんみたいなオルガだが、俺の話は一応、聞いてくれる。
その辺りは真面目な性格というか。
案外、優しい癖に不器用というべきなのか。
「デバイスを貰って、プレイヤーになれるのよ。もっと有効に活用しようとは思わないの?」
「はあ。どういうことだよ?」
「だからぁ。もうちょっと頭を使いなさいってこと。プレイヤーであることを利用すべきでしょ」
オルガの言い分は実に簡単なことだった。
学院を卒業する。
それだけでも肩書としては十分だし、試練を突破したプレイヤーともなれば、引く手あまたってことらしい。
それを利用しない手はないと彼女は考えている。
プレイヤーともなれば、プレイヤーギルドと呼ばれる世界資格者機構に属するのでその恩恵を受けられるのが、大きいとオルガは力説した。
ギルドはプレイヤーを管理する組織だけど、情報網もしっかりしている。
だから、プレイヤーとして活動するのが一番の道ではないかという訳だ。
「だからぁ。あたしと組むべきだと思わない?」
「そうなのか?」
「はぁ? このあたしが選んであげるのよ? そこは感謝して、嬉し涙を流してもいいくらいじゃない?」
「いやいや。それはおかしい。カサドールってのは孤高の一族で一人で戦うもんじゃないのか?」
「ぐぅ。それはそうなんだけどさぁ」
これはちょっとした意趣返しだ。
本来、カサドールの一族は何よりも栄誉を重んじるらしい。
闘争に生き、闘争に死す。
そんな戦闘部族でもあり、如何に激しく、美しく戦って、死ぬか。
そこが大事なんだとさ。
だから、仲間同士で助け合うこともないし、もしも仲間に助けられたとしたら、それは何よりも恥ずべき事らしい。
その考えからすると俺達がエビ野郎との戦いで見せた連携なんて、恥ずべき代物なんだろうよ。
だが、俺はそう思わない。
生きてこそ、咲かぬ華はない。
死んでしまえば、それまでさ。
だったら、手を取り合って一緒に咲いた方がいいじゃないか?
「分かってるさ」
「何がよ? あたしと一緒にやるってこと?」
「まあ。そういうことでいいや」
「きぃぃぃ。何か、むかつくぅ」
「やめろお! 痛いから、引っかくなっ」
マジでこいつは猫なんじゃないだろうか。
腹立ちまぎれに引っかかれたが、悪くない。
澄ました顔のお嬢様よりもこの方が、オルガらしくていいと思うんだ。
また、あの夢を見た。
母さんの夢だ。
会ったことのない母さんが俺を抱き締めてくれる夢だ。
今みたいに大きな図体をした俺じゃない。
まだ小さくて、鼻を垂らしている頃の俺だ。
「お父さんに会いたい?」
「父さん?」
「そうよ。あなたのお父さん。お父さんはね」
母さんはどこか違う世界を見ているような不思議な顔をしていた。
その目はここではないどこかを見ている感じがする。
何だか、キラキラとしていて眩しいんだ。
「強くて、スゴイ人なのよ」
「ふうん。父さんはどこにいるの?」
「あなた……うさ……は……たに……」
そこで異変が起きるんだ。
回線の異常が発生して、動画が乱れ始めた感じに似ている。
何を言っているのか、急に音声が聞き取りにくくなってきて、目の前の風景にもノイズが走って、見づらくなる。
「テイラー……テイラー・サウルを……フリ……がしな……い」
「待ってくれ、母さん! それが父さんなのか、俺の父……」
そこで夢は終わった。
意識が急速に覚醒していく。
気が付くと掌に何かを感じる。
ごわごわとした布の感触。
それにそれほど、気持ちがよくない触り心地の何かだ。
これは一体……?
「ほぉ? へぇ? 何か、言い訳はある?」
「いや、だからさ、ちちが……」
はっきりとした殺意の波動というものを感じた。
俺の手はどこにあったかというと御丁寧なことに両手が、オルガのおっぱいの上にあった。
完全に何かをしようと揉んでいるようにしか見えない画だ。
しかも夢のせいで余計に誤解を生じさせることを言っている。
非常にまずい状況だった。
「こんのアホがぁぁぁぁ! 一回、死になさいよぉ!」
「誤解だあ! そうじゃないんだ!」
「なおさら、悪いわっ! 死んで反省しなさいよぉ!」
気のせいではなく、ヒンヤリとしていた。
オルガには多少なりとも冷気を操る力があるとは言っていたが、できるようになったな!
……などとかっこをつけている場合ではなく、マジでやばい状況である。
全くもって災難だ。
酷い目に遭ったもんだ。
怪我人だっていうのに再び、病院送りにされるところだった。
しかし、カサドールの一族の能力なのだろうか。
あれほどの大怪我を負っていたのに恐ろしく治りが早いから、多少ボコボコにされても大丈夫なんだろうが。
いや、そうは言ってもたんこぶができるほど、思い切りオルガに殴られた訳だが。
治りがいくら早いとはいえ、痛いものは痛い。
そこはどうにもできない。
「それで何ですって? その人を探すの?」
「ああ。それくらいしか、やることないかなって思ってさ」
まだ、不機嫌なままで毛を逆立てた黒猫ちゃんみたいなオルガだが、俺の話は一応、聞いてくれる。
その辺りは真面目な性格というか。
案外、優しい癖に不器用というべきなのか。
「デバイスを貰って、プレイヤーになれるのよ。もっと有効に活用しようとは思わないの?」
「はあ。どういうことだよ?」
「だからぁ。もうちょっと頭を使いなさいってこと。プレイヤーであることを利用すべきでしょ」
オルガの言い分は実に簡単なことだった。
学院を卒業する。
それだけでも肩書としては十分だし、試練を突破したプレイヤーともなれば、引く手あまたってことらしい。
それを利用しない手はないと彼女は考えている。
プレイヤーともなれば、プレイヤーギルドと呼ばれる世界資格者機構に属するのでその恩恵を受けられるのが、大きいとオルガは力説した。
ギルドはプレイヤーを管理する組織だけど、情報網もしっかりしている。
だから、プレイヤーとして活動するのが一番の道ではないかという訳だ。
「だからぁ。あたしと組むべきだと思わない?」
「そうなのか?」
「はぁ? このあたしが選んであげるのよ? そこは感謝して、嬉し涙を流してもいいくらいじゃない?」
「いやいや。それはおかしい。カサドールってのは孤高の一族で一人で戦うもんじゃないのか?」
「ぐぅ。それはそうなんだけどさぁ」
これはちょっとした意趣返しだ。
本来、カサドールの一族は何よりも栄誉を重んじるらしい。
闘争に生き、闘争に死す。
そんな戦闘部族でもあり、如何に激しく、美しく戦って、死ぬか。
そこが大事なんだとさ。
だから、仲間同士で助け合うこともないし、もしも仲間に助けられたとしたら、それは何よりも恥ずべき事らしい。
その考えからすると俺達がエビ野郎との戦いで見せた連携なんて、恥ずべき代物なんだろうよ。
だが、俺はそう思わない。
生きてこそ、咲かぬ華はない。
死んでしまえば、それまでさ。
だったら、手を取り合って一緒に咲いた方がいいじゃないか?
「分かってるさ」
「何がよ? あたしと一緒にやるってこと?」
「まあ。そういうことでいいや」
「きぃぃぃ。何か、むかつくぅ」
「やめろお! 痛いから、引っかくなっ」
マジでこいつは猫なんじゃないだろうか。
腹立ちまぎれに引っかかれたが、悪くない。
澄ました顔のお嬢様よりもこの方が、オルガらしくていいと思うんだ。
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